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ボーイングの新型宇宙船「スターライナー」有人飛行試験延期 新たな問題が発覚

sorae.jp / 2023年6月2日 17時0分

アメリカ航空宇宙局(NASA)とアメリカの航空大手ボーイングは6月1日付で、ボーイングが開発中の新型宇宙船「CST-100 スターライナー(Starliner)」による有人飛行試験ミッション「CFT(Crew Flight Test)」について、新たに発見された問題に対処する時間が必要であることから、2023年7月に予定されていた実施を延期すると発表しました。【2023年6月2日12時】

【▲ ボーイングの新型宇宙船「スターライナー」、有人飛行試験「CFT」で使用される機体の組み立て作業の様子。2023年1月19日撮影(Credit: Boeing/John Grant)】

【▲ ボーイングの新型宇宙船「スターライナー」、有人飛行試験「CFT」で使用される機体の組み立て作業の様子。2023年1月19日撮影(Credit: Boeing/John Grant)】

スターライナーはスペースXの「クルードラゴン」とともに、NASAのコマーシャルクループログラム(商業乗員輸送計画)のもとで開発がスタートした有人宇宙船です。初飛行として2019年12月に実施された無人飛行試験ミッション「OFT」ではソフトウェアの問題が生じたために計画されていた軌道へ入ることができず、スターライナーはISSへの到達を断念して地球に帰還。2022年5月には2回目の無人飛行ミッション「OFT-2」が実施され、ISSへのドッキングを含む打ち上げから帰還までの実証試験に成功しています。

関連:新型宇宙船「スターライナー」着陸成功! 実用化に向けて一連の試験目標を達成(2022年5月26日)

2度の無人飛行試験に成功したスターライナーは、本格的な有人飛行の開始に先立ち、実際にクルーが搭乗するCFTの実施を控えています。CFTではNASAのバリー・ウィルモア(Barry Wilmore)宇宙飛行士とスニータ・ウィリアムズ(Sunita Williams)宇宙飛行士がプライムクルーに、マイケル・フィンク(Edward Michael Fincke)宇宙飛行士がバックアップクルーに任命されています。

2023年4月の時点ではCFTの実施は同年7月21日以降に予定されていましたが、前述の通り7月の打ち上げを取り止める決断が下されました。SpaceNewsなど海外メディアの報道によると、ボーイングでスターライナーのプロジェクトを担当するMark Nappi副社長は、2023年後半の実施も可能ではあるものの今はまだ打ち上げ予定日を検討するには時期尚早だとコメントしており、CFTの新たな実施予定時期は明らかにされていません。

【▲ OFT-2ミッションでホワイトサンズ宇宙港に着陸する新型宇宙船「スターライナー」(Credit: NASA/Bill Ingalls)】

【▲ OFT-2ミッションでホワイトサンズ宇宙港に着陸する新型宇宙船「スターライナー」(Credit: NASA/Bill Ingalls)】

対処すべき新たなスターライナーの問題は2点あります。1つはパラシュートの問題で、サスペンションライン(吊索)と機体を繋ぐソフトリンクの分析に誤りがあり、実際の強度が予測値よりも低いことが判明したといいます。スターライナーには3つのパラシュートが備わっていますが、何らかの理由で1つが失われた状況を想定した時、残る2つのパラシュートのソフトリンクに求められる安全マージンが確保できていなかった模様です。

もう1つはワイヤーハーネスを結束・保護するために使われているテープの問題で、試験の結果、粘着剤が可燃性だったことが判明したといいます。ショートなどが発生した時に引火しないよう対策を取らなければなりませんが、テープはスターライナーの機体全体で広範囲に使用されており、作業が完了するまでに時間がかかる可能性があります。

これらの問題がなぜ今になって見つかったのか、Nappi氏はその理由を設計の初期段階における「ある種の楽観的な意識」だったと説明しています。なお、問題が判明したパラシュートのソフトリンクとワイヤーハーネスのテープは2022年5月のOFT-2でも使用されていましたが、この時は特に異常が生じるようなことはなかったということです。

【▲ Ax-2ミッションでスペースXの回収船「メーガン」に引き上げられたクルードラゴン宇宙船「フリーダム」(Credit: SpaceX)】

【▲ Ax-2ミッションでスペースXの回収船「メーガン」に引き上げられたクルードラゴン宇宙船「フリーダム」(Credit: SpaceX)】

スターライナーのCFT実施が遅延するいっぽうで、同じプログラムのもとで開発されたクルードラゴンは順調な運用が続いています。初の有人ミッションとなった有人飛行試験「Demo-2」の打ち上げから3年を迎えた2023年5月には、クルードラゴンによる10回目の有人飛行となるアクシオム・スペースの「Ax-2」ミッションが実施されており、4名の民間人クルーはISSに8日間滞在した後に無事帰還しました。

関連:民間主導のISS滞在ミッション「Ax-2」に参加した4名が地球に無事帰還(2023年6月1日)

コマーシャルクループログラムのマネージャーを務めるNASAのSteve Stich氏は、輸送手段の冗長性を確保するためにもNASAはスターライナーの実用化に期待しており、できるだけ早く安全な飛行を実施できるように、ボーイングを可能な限りサポートしているとコメントしています。

 

Source

Image Credit: Boeing/John Grant, NASA/Bill Ingalls, SpaceX NASA - NASA, Boeing Adjust Starliner Crew Flight Test Date Boeing - Boeing Statement on Starliner CFT Status SpaceNews - Parachute and wiring issues to delay Starliner crewed test flight CBS News - Boeing orders another delay for first piloted flight of its troubled Starliner spacecraft

文/sorae編集部

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