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地球から月まで6分。高速で飛び去るパルサーが描き出した長さ13光年の尾

sorae.jp / 2019年3月20日 22時18分

暗闇に浮かぶシャボン玉にも見える幻想的なこちらの画像は、カシオペア座の方向にある超新星残骸「CTB 1」を捉えたもの。カナダのドミニオン電波天文台がマイクロ波(黄色と緑)および赤外線(青)で観測したデータに、アメリカの超大型干渉電波望遠鏡群VLAが新たに観測したマイクロ波(中央付近のオレンジ色)のデータを合成したものです。

CTB 1のもとになった恒星が超新星爆発を起こしたのは、今からおよそ1万年前。肉眼でその残骸を直接見ることはできませんが、見かけの大きさは満月の直径とほぼ同じくらいにまで広がっています。注目は、超新星残骸の縁から伸びた、長さ13光年に及ぶ尾のような構造です。

2017年、「Einstein@Home」という市民参加型のプロジェクトによって、地球からおよそ6,500光年離れたところにあるガンマ線パルサー「PSR J0002+6216」(以下「J0002」)が発見されました。このプロジェクトは、参加する一般市民のPCから少しずつ処理能力を借りることで膨大な量のデータを解析する、分散コンピューティング型のボランティアプロジェクトのひとつです。

1秒間に8.7回という速さで自転するJ0002は、2008年6月に打ち上げられたガンマ線宇宙望遠鏡「フェルミ」の観測したデータから発見されました。その場所は、CTB 1の中心から約53光年しか離れていません。

アメリカ国立電波天文台のFrank Schinzel氏らによるチームが10年に渡って蓄積された「フェルミ」のデータを用いてJ0002の移動速度を求めたところ、時速およそ400万kmという結果が出ました。これは地球から月までの距離(約38万km)を、わずか6分で通り抜ける速さです。

その速さゆえにJ0002は星間ガスを通過する際に衝撃波をもたらし、電波で観測される尾を作り出します。VLAがくっきりと捉えた尾はCTB 1の中心をピタリと示しており、J0002がCTB 1を生み出した爆発によって高速で弾き出されたことがわかりました。

爆発から5,000年かけて超新星残骸を抜け出たJ0002は、やがて天の川銀河をも脱出し、銀河間空間への孤独な旅路に至ると考えられています。

 

Image credit: Composite by Jayanne English, University of Manitoba, using data from NRAO/F. Schinzel et al., DRAO/Canadian Galactic Plane Survey and NASA/IRAS
https://www.nasa.gov/feature/goddard/2019/nasa-s-fermi-satellite-clocks-cannonball-pulsar-speeding-through-space
文/松村武宏

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