小型着陸機「MASCOT」が撮影した小惑星「リュウグウ」表面の写真が公開される
sorae.jp / 2019年8月23日 18時39分
ドイツ航空宇宙センター(DLR)は8月22日、小惑星探査機「はやぶさ2」によって小惑星「リュウグウ」に運ばれ、昨年2018年10月3日にリュウグウへ着陸した小型着陸機「MASCOT」が撮影したリュウグウ表面の画像を公開しました。MASCOTによる観測結果はRalf Jaumann氏らの研究チームによって論文にまとめられ、Scienceのオンライン版に掲載されています。
■リュウグウは2種類の岩からできていたリュウグウに着陸したMASCOTは、約7時間38分かけて自転するリュウグウで「2泊3日」にあたる期間中、内蔵されたアームを使ってホッピングしながらリュウグウの表面を移動し、観測を行いました。ソーラーパネルを持っていなかったMASCOTは17時間ほどでバッテリーを使い尽くし、その活動を終えています。
移動はリュウグウの昼間に行われましたが、LEDライトも搭載していたMASCOTは、夜間でも周囲の撮影を行うことができました。撮影された岩を調べたところ、リュウグウの表面には「滑らかでエッジが鋭く明るい岩」と、「表面がカリフラワーのように不規則で一部がもろく暗い岩」の2種類が、ほぼ均等に分布していることがわかりました。
冒頭に掲載したMASCOTの撮影画像を見ると、暗い岩のなかに小さな明るい物質が幾つも含まれているのが見えます。研究チームは、この暗い岩の特徴が、2000年1月にカナダのタギシュ湖に落下した隕石の特徴によく似ているとしています。
Jaumann氏は、2種類の岩の存在から、リュウグウの形成過程に2通りの仮説を立てています。1つは、「それぞれ異なる材料でできた2つの天体が衝突し、バラバラになった破片が集まった」というもの。もう1つは、「内部に温度や圧力が異なる部分を持った1つの天体が、他の天体との衝突などでバラバラになり、かつて別々の部分にあった岩石が混ざりながら集まった」というもの。実際にどちらの過程で誕生したのかについての結論は、まだ出ていません。
また、リュウグウの表面にはいろいろなサイズの岩が散らばっているものの、細かな塵は見当たらないこともわかりました。研究チームによると、微小な天体の衝突によって塵が生じたとしても、地球の60分の1しかない重力を振り切って宇宙空間に脱出してしまうか、あるいはリュウグウ内部の空隙(すき間)に入り込んでしまったのだろうとされています。
■人類を天体衝突から守るためにも活かされる知見DLRは今回の発表のなかで、地球への天体衝突について触れています。リュウグウは「地球接近天体(NEO)」の1つであり、NEOのなかには2019年7月に地球の表面から6万5000kmまで接近した小惑星「2019 OK」のような天体も含まれます。
リュウグウが人類にとって危険なほど地球に接近することはないとみられていますが、リュウグウのような天体を調査することは、本当に危険な天体を発見したときにどのような対策ができるかを検討する上で重要な知見を得ることにつながります。
たとえば、リュウグウの密度は1立方cmあたり平均1.2gしかありませんが、これはリュウグウが内部に多くの空隙を持つ「ラブルパイル天体」であることを示唆しています。
将来、リュウグウのような小惑星が地球に衝突しかけたときに、その軌道を逸らせようとして強い衝撃を与えると、小惑星を意図せず分解させてしまうかもしれません。その結果、バラバラになった破片が無数の隕石となって地球に降り注いでしまう、そんな可能性についてもJaumann氏は言及しています。
小惑星探査は、太陽系の形成史や地球に生命が誕生した理由に迫る研究であると同時に、宇宙よりもたらされる災害から人類の暮らしを守るための戦い、その一翼でもあるのです。
Image Credit: MASCOT/DLR/JAXA.
https://www.dlr.de/dlr/presse/en/desktopdefault.aspx/tabid-10172/213_read-37306/year-all/#/gallery/36381
文/松村武宏
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