人工衛星が宇宙ゴミになるのを防ぐために展開する「帆」を開発中
sorae.jp / 2020年6月24日 10時31分
宇宙機が展開する「帆(セイル)」というと、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2010年5月に打ち上げた小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS(イカロス)」のような、太陽光の圧力を推進力として利用するソーラーセイルが思い浮かびます。いっぽう、欧州宇宙機関(ESA)では現在、ソーラーセイルとは異なる「帆」の開発が進められています。
■不要になったり壊れたりした人工衛星の高度を下げるために帆を利用ESAはGSTP(General Support Technology Programme、一般支援技術プログラム)の下でドイツのHPS社とともに、アルミニウムがコーティングされたポリアミド製の帆を内蔵した人工衛星用のサブシステム「ADEO」の開発を進めています。ソーラーセイルは宇宙機の運用中に活躍しますが、この帆は人工衛星が役目を終えたり故障したりした時になって初めて活躍することになります。
地球を周回する人工衛星は希薄な大気の抵抗を受けて少しずつ減速し、高度が下がっていきます。不要になった人工衛星はそのまま放置しておけばいずれは大気圏へ突入しますが、それまでは長いもので何十年もスペースデブリの一つとして地球を周回し続けることになります。これに対し、ADEOを搭載した人工衛星は帆を展開することで大気の抵抗が増えるため、何もしない場合と比べて速やかに高度を下げて大気圏に突入させることが可能とされています。
スペースデブリの除去については、先日デブリ除去事業への参入を表明したスカパーJSATやスイスのクリアスペースのように、デブリをキャッチした人工衛星ごと大気圏に再突入させたり、レーザーを当てた部分が蒸発する際に生じる推進力を利用したりする手法が考案されています。
関連:スカパーJSAT、デブリ除去サービス事業に着手。レーザー搭載衛星を開発へ
こうした方法ではデブリ除去用の人工衛星を打ち上げなければなりませんが、ADEOは人工衛星に最初から組み込まれるシステムなので、除去用の衛星が不要になるメリットがあります。また、人工衛星本体が故障によって機能しなかったり、打ち上げから四半世紀以上が経っていたりするような状況でも自ら帆を展開することが可能で、その後は抗力に任せて受動的に高度を下げることができるシステムとされています。
なお、ADEOのように受動的なデブリ除去の手法は、JAXAとパートナーシップを締結している国内のベンチャー企業ALEでも「導電性テザー(EDT)」を利用したシステムの開発が表明されています。将来の人工衛星では、自らのデブリ化を防ぐシステムの搭載が当たり前のことになるのかもしれません。
関連:ALEとJAXA、人工衛星の運用終了後に作動する「宇宙デブリ拡散防止装置」を共同実証へ
Image Credit: ESA
Source: ESA / HPS
文/松村武宏
この記事に関連するニュース
-
宇宙輸送カプセル、実用化へ着々 東北大発ベンチャーが着水試験
毎日新聞 / 2024年5月3日 14時30分
-
ロケットラボが「エレクトロン」ロケット通算47回目の打ち上げに成功 韓国の衛星とNASAの衛星を搭載
sorae.jp / 2024年5月3日 11時43分
-
15年前から地球を周回し続けるロケットの一部 アストロスケールの実証衛星が撮影成功
sorae.jp / 2024年4月30日 18時0分
-
2021年にISSから投棄された人工物の一部が大気圏再突入後に米国の民家へ落下
sorae.jp / 2024年4月18日 21時21分
-
アストロスケールの商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」、デブリから数百kmの距離にまで接近
PR TIMES / 2024年4月15日 23時40分
ランキング
-
1やよい軒で「わかってる」人が頼んでるメニュー。「神」「最強」の声も...。《編集部レビュー》
東京バーゲンマニア / 2024年5月6日 17時0分
-
2「スナップえんどう」の筋取りが、お家にあるアレを使うだけで簡単キレイに!驚きのアイデアに「目からウロコ」「見ていて気持ち良いー!」
まいどなニュース / 2024年5月6日 15時45分
-
3【疑問】「白内障」「緑内障」は何が違うの? 原因&治療法を眼科医に聞いてみた
オトナンサー / 2024年5月6日 20時10分
-
4死者をデジタルで復活させる「故人AI」が海外で急速に普及 「悲しみに暮れる人の社会復帰を妨げる」という懸念も
NEWSポストセブン / 2024年5月7日 7時15分
-
5親を扶養に入れるメリット・デメリットを確認してみよう
マイナビニュース / 2024年5月7日 11時2分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください