銀河どうしの衝突で超大質量ブラックホールの活動が停止する?
sorae.jp / 2021年1月27日 21時0分
東京大学情報基盤センターの三木洋平氏ら国内の研究グループは、大小の銀河が衝突することで大きな銀河の中心にある超大質量ブラックホールの活動が停止する可能性があるとする研究成果を発表しました。
この宇宙に数多く存在する銀河の中心には、質量が太陽の10万倍を超えるような超大質量ブラックホールが存在すると考えられています。その一部には周囲から大量のガスが落下しており、強い電磁波を放射する銀河の中心部分「活動銀河核」の原動力になっていますが、天の川銀河の中心に存在が確実視されているものを含め、大半の超大質量ブラックホールは目立った活動を示さずひっそりとしています。
研究グループによると、超大質量ブラックホールの活動を「点火」するのは銀河どうしの衝突とみられているものの、活動を「停止」させる仕組みについてはいまだ定説がないといいます。そこで研究グループは、点火の原因とも考えられている銀河どうしの衝突が「ブラックホール周辺からガスを取り去り活動を停止させる」という仮設を立て、スーパーコンピューターを用いたシミュレーションによって衝突の様子を解析しました。
その結果、小さな衛星銀河が大きな銀河の中心から離れた領域に衝突する場合は大きな銀河の中心に存在する超大質量ブラックホールの活動を活性化させる反面、大きな銀河の中心領域を突き抜ける場合は超大質量ブラックホールへと落ち込んでいくガスを取り払ってしまい、ブラックホールの活動を停止させることが明らかになったといいます。つまり、小さな衛星銀河が大きな銀河のどこに衝突するかによって、超大質量ブラックホールの活動を活性化するのか停止させるのかが左右される可能性が示されたことになります。
また、研究グループが欧州宇宙機関(ESA)のアストロメトリ(位置天文学)に特化した宇宙望遠鏡「ガイア」による高精度な観測データをもとに衛星銀河の軌道を精密に計算した結果、銀河の中心領域に強く影響する衝突の頻度がおよそ1億年に1回であることが推定されています。この頻度は、銀河中心の超大質量ブラックホールが活発に活動する期間は1億年程度であるとする従来の知見ともよく符号するとされています。
研究グループによると、従来はこのような衛星銀河の軌道の重要性は考慮されていなかったといいます。今回の成果について研究グループは、銀河とブラックホールの共進化を理解する上で重要な視点を提供するものであり、近年新たに見つかっている中心のブラックホールが急に活動を停止した痕跡がみられる多数の銀河についての理解にもつながるものと期待しています。
関連:【宇宙天文を学ぼう】宇宙に漂う星の集合体「銀河」とは?
Image Credit: Miki et al.
Source: 国立天文台 / 東京大学
文/松村武宏
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