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目標は「ケンタウルス座アルファ星」 恒星間宇宙航行に挑戦するプロジェクト

sorae.jp / 2021年7月8日 17時35分

レーザー推進で飛行する宇宙船を描いたイメージ図(Credit: Breakthrough Initiatives)

【▲ レーザー推進で飛行する宇宙船を描いたイメージ図(Credit: Breakthrough Initiatives)】

太陽系から一番近い約4.3光年先にある恒星「ケンタウルス座アルファ星」に向けて超小型の宇宙船を飛ばす。そんな野心的なプロジェクト「ブレイクスルー・スターショット(Breakthrough Starshot)」が、ロシア生まれの資産家ユーリ・ミルナー氏の出資によってスタートした「ブレイクスルー・イニシアチブ」のもとで進められています。

オーストラリア国立大学(ANU)の研究チームは、ブレイクスルー・スターショットで計画されている恒星間宇宙航行のために、新しいタイプの推進システムを設計しました。

ブレイクスルー・スターショットでは、宇宙船をアルファ・ケンタウリへ送り込むためにレーザー光の圧力を利用する「レーザー推進」が用いられます。切手サイズの宇宙船に取り付けられた1メートル四方のごく薄い帆に向けてレーザー光を照射すると、ほんの数分で宇宙船の速度を光速の20パーセントまで加速できるといいます。現在用いられている化学反応を利用した推進システムでは3万年ほどかかるアルファ・ケンタウリも、レーザー推進なら約20年で到達できるとされています。

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研究チームによると、ブレイクスルー・スターショットを実現する上で最も重要なのは、星間空間を航行する宇宙船の帆を照らし続けるレーザーアレイの開発です。ANUのRobert Ward氏によると、宇宙船の加速に必要なレーザー光の総出力はおよそ100ギガワットと見積もられています。

この出力を実現するためには1億ものレーザー発振器が必要になるとWard氏は語っており、設置されたすべてのレーザー発振器が協調して機能するようにシステムを設計しなければならないといいます。そこで研究チームは、大量のレーザー発振器で構成されるレーザーアレイと、司令塔の役割を果たすガイド衛星からなるシステムを考案しました。ガイド衛星は地球の周回軌道上に配置され、地上に建設されたレーザーアレイ全体をまとめ上げる役割を果たします。

地上にレーザーアレイを配置した場合に問題となるのが、大気の影響です。地上から星間空間を飛行する宇宙船に向けてレーザー光を照射しようとすると、地球の大気による屈折や揺らぎによってレーザー光が逸れてしまい、宇宙船の帆を照らせないかもしれません。研究チームが考案したシステムでは、軌道上のガイド衛星から地上に向けてレーザー光を照射して大気の影響を測定し、レーザーアレイから照射されるレーザー光を補正するアルゴリズムが用いられます。これは天体の像を鮮明に捉えるために大型望遠鏡で利用されている「補償光学(Adaptive Optics)」に似た仕組みです。

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研究チームでは次のステップとして、実験室で基本的な構成要素のテストを行うことを予定しています。これにはレーザーを統合するシステムや大気の影響を補正するアルゴリズムが含まれているといいます。恒星間宇宙航行に挑戦する壮大なプロジェクト、とてもわくわくする話題ですね。

 

Image Credit: Breakthrough Initiatives
Source: Australian National University
文/sorae編集部 編集/松村武宏

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