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NASA探査機「ルーシー」10月16日打ち上げ予定、木星トロヤ群小惑星に初接近

sorae.jp / 2021年10月15日 20時40分

木星トロヤ群の小惑星に接近する「ルーシー」を描いた想像図(Credit: Southwest Research Institute)

【▲ 木星トロヤ群の小惑星に接近する「ルーシー」を描いた想像図(Credit: Southwest Research Institute)】

アメリカ航空宇宙局(NASA)は現地時間10月13日、小惑星探査機「Lucy(ルーシー)」の打ち上げ準備完了審査(LRR:Launch Rediness Review)が完了したことを発表しました。ルーシーはフロリダ州のケープカナベラル空軍基地から日本時間2021年10月16日に打ち上げられる予定です。

■木星トロヤ群の小惑星複数を初めて間近で探査する長期間のミッション ルーシーのミッション期間における水星~木星までの惑星(白)と木星のトロヤ群小惑星(緑)の位置を示したアニメーション。トロヤ群小惑星は木星(Jupiter)に先行するグループと後続するグループに分かれている(Credit: Astronomical Institute of CAS/Petr Scheirich (used with permission))

【▲ ルーシーのミッション期間における水星~木星までの惑星(白)と木星のトロヤ群小惑星(緑)の位置を示したアニメーション。トロヤ群小惑星は木星(Jupiter)に先行するグループと後続するグループに分かれている(Credit: Astronomical Institute of CAS/Petr Scheirich (used with permission))】

ルーシーは木星のトロヤ群小惑星を初めて探査するミッションです。木星のトロヤ群とは太陽を周回する小惑星のグループのひとつで、太陽と木星の重力や天体にかかる遠心力が均衡するラグランジュ点のうち、木星の公転軌道上にある「L4点」(公転する木星の前方)付近と「L5点」(同・後方)付近に分かれて小惑星が分布しています。

木星のトロヤ群小惑星は、初期の太陽系における惑星の形成と進化に関する情報が残された「化石」のような天体とみなされています。これらの天体を間近で探査することから、ミッションと探査機の名前は有名な化石人骨の「ルーシー」(約320万年前に生息していたアウストラロピテクス・アファレンシスの一体)から名付けられました。ちなみに化石のルーシーは、ビートルズの楽曲「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」にちなんで命名されています。

ルーシーがフライバイ探査を行う小惑星の一覧(想像図)。上段左から:二重小惑星のパトロクロスとメノイティオス、ユーリバテス。下段左から:オラス、リュークス、ポリメレ、ドナルドヨハンソン(Credit: NASA's Goddard Space Flight Center Conceptual Image Lab)

【▲ ルーシーがフライバイ探査を行う小惑星の一覧(想像図)。上段左から:二重小惑星のパトロクロスとメノイティオス、ユーリバテス。下段左から:オラス、リュークス、ポリメレ、ドナルドヨハンソン(Credit: NASA's Goddard Space Flight Center Conceptual Image Lab)】

ルーシーのミッションでは木星トロヤ群に属する「ユーリバテス」「ポリメレ」「リュークス」「オラス」「パトロクロス」と、小惑星帯にある「ドナルドヨハンソン」をフライバイ探査します。このうちパトロクロスは「メノイティオス」との二重小惑星であることが知られていて、またユーリバテスは1つの衛星を伴うことから、ルーシーは打ち上げから12年かけて合計8つの小惑星および衛星のフライバイ探査を1つのミッションで行うことになります。

ルーシーはユナイテッドローンチアライアンス(ULA)の「アトラスV-401」ロケットに搭載され、現地時間10月14日にケープカナベラル空軍基地第41発射施設の発射台へと運ばれました。打ち上げ日時は日本時間2021年10月16日(土)18時34分の予定で、打ち上げの様子は日本時間同日18時からNASAの公式ウェブサイト、YouTubeチャンネル、SNSアカウントなどでライブ配信されます。

・NASA Live:https://www.nasa.gov/nasalive
・YouTube:https://www.youtube.com/nasa
・Twitter:https://twitter.com/NASA

発射台へと運ばれる「ルーシー」を搭載した「アトラスV-401」ロケット(Credit: NASA/Bill Ingalls)

【▲ 発射台へと運ばれる「ルーシー」を搭載した「アトラスV-401」ロケット(Credit: NASA/Bill Ingalls)】

打ち上げ後のルーシーは、木星トロヤ群へ向かう前に地球で2回のスイングバイを行います。スイングバイとは天体の重力を利用して探査機の軌道を変更する手法のことで、スイングバイを利用しない場合と比べて探査機に搭載する推進剤を減らせるメリットがあります。

地球スイングバイで軌道を調整したルーシーは、まず2025年に小惑星帯のドナルドヨハンソンに接近して観測を行います。その後は木星に先行するL4点のトロヤ群に向かい、2027年にユーリバテスとポリメレ、2028年にリュークスとオラスのフライバイ探査を実施します。

L4点の木星トロヤ群で探査を終えたルーシーは再び地球へと戻って3回目の地球スイングバイを実施し、今度は木星に後続するL5点のトロヤ群にあるパトロクロスのフライバイ探査を2033年に行います。NASAによると、ルーシーは小惑星帯よりも遠い領域から戻ってくる初の宇宙機になるといいます。

▲ルーシーの軌道を再現したシミュレーション動画▲
色は水色が探査機、白が探査対象の小惑星、緑が地球、オレンジが木星を示す
(Credit: NASA's Scientific Visualization Studio)

なお、探査を終えたルーシーは、地球近傍と木星トロヤ群のあいだを往復するような軌道を数十万年に渡り飛び続けるといいます。そんなルーシーには未来の人類へ向けたメッセージとして、ノーベル文学賞受賞者、米国桂冠詩人、天文学者、ビートルズのメンバーらの言葉を刻んだメッセージプレート「Lucy Plaque」が搭載されています。

 

関連:探査機ルーシー、ボイジャーの様に未来の人類へ向けたメッセージを搭載 2021年打ち上げ予定

Image Credit: NASA, Southwest Research Institute
Source: NASA
文/松村武宏

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