NASA探査車が火星で採取したサンプル、地球へ届けられるのは早くても2033年か
sorae.jp / 2022年4月2日 11時15分
アメリカ航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関(ESA)は現在、火星表面で採取したサンプルを地球に持ち帰るための一連のミッションを共同で計画・実施しています。今まで人類が手にしてきた火星の岩石サンプルは隕石として火星から地球へ飛来したもの(火星隕石)に限られていましたが、この火星サンプルリターンミッションが成功すれば、人類は火星で直接採取されたサンプルを初めて手にすることになります。
NASAとESAによる火星サンプルリターンミッションは「火星でのサンプル採取」「サンプルの回収と打ち上げ」「サンプルを地球へ輸送」という三段構えのミッションで構成されています。
このうち第1段階となる「火星でのサンプル採取」は、2021年2月に火星のジェゼロ・クレーターに着陸したNASAの火星探査車(ローバー)「Perseverance(パーセベランス、パーシビアランス)」によって、すでに進められています。次は第2段階の「サンプルの回収と打ち上げ」を担うミッションが実施されることになるのですが、このミッションはさらに2段階に分割されることになるようです。海外メディアのSpaceNewsやSpace.comなどが報じています。
関連:NASA「火星から打ち上げる小型ロケット」の製造契約をロッキード・マーティンと締結
米国のバイデン政権は現地時間2022年3月28日に、同年10月1日から始まる2023会計年度の予算教書を議会に提出しました。NASAに関しては深宇宙探査ミッション(アルテミス計画を含む)に約76億ドル、月探査ミッション向けの共通探査システム開発(オリオン宇宙船やSLSを含む)に約47億ドル、地球観測衛星やそれに関連した研究に約24億ドルなど、全体では約260億ドルが要求されています。NASAはその概要を文書で公開しているのですが、文書では火星サンプルリターンミッションの変更点についても触れられています。
「サンプルの回収と打ち上げ」を行う第2段階のミッションでは、ESAが開発中のローバー「Sample Fetch Rover(SFR)」と、NASAが開発する小型ロケット「Mars Ascent Vehicle(MAV)」が重要な役割を果たします。ローバーSFRはジェゼロ・クレーターの表面からPerseveranceのサンプル保管容器を拾い集め、小型ロケットMAVは火星周回軌道で待機しているESAの地球帰還用探査機「Earth Return Orbiter(ERO)」にサンプルを送り届けます。
従来の計画では、ESAのローバーSFRとNASAの小型ロケットMAVは、どちらもNASAが開発する着陸機「Sample Retrieval Lander(SRL)」1機に搭載されて2026年に打ち上げられる予定でした。
しかし着陸時の質量に関する分析の結果、MAVとSFRを別々の着陸機「SRL1」と「SRL2」に搭載して打ち上げる方針に改められた模様です。SpaceNewsは、単一着陸機を前提とした分析結果について「本当にリスクが高い」と語ったThomas Zurbuchenさん(NASA科学ミッション本部副本部長)の言葉を伝えています。
打ち上げ回数が1回増えることになるため、ミッション全体のスケジュールも変更されています。従来の計画では、サンプルが地球へ届けられるのは2031年の予定でした。いっぽう、新たな計画ではESAのローバーSFRの打ち上げが2028年に、サンプルの地球到着は2033年に予定されています。
なお、現時点では小型ロケットMAVを搭載する着陸機SRL1はNASAのジェット推進研究所(JPL)によって製造される予定になっているものの、ESAのローバーSFRを搭載する着陸機SRL2が誰によって製造されるのかは決まっていない模様です。SpaceNewsによると、NASAのZurbuchenさんは2022年6月までに決定が下されると語ったとのことです。
関連:NASA火星探査車「Perseverance」古代の三角州へ向かう1か月間の旅をスタート
Source
Image Credit: NASA, JPL-Caltech, ESA, K. Oldenburg SpaceNews - NASA to delay Mars Sample Return, switch to dual-lander approach Space.com - Perseverance rover's Mars samples now won't make it to Earth until 2033 at best NASA - Budget Documents, Strategic Plans and Performance Reports ESA - Europe prepares for Mars courier文/松村武宏
この記事に関連するニュース
-
中国、月探査機「嫦娥6号」打ち上げ 月の裏側から世界初のサンプルリターン目指す
sorae.jp / 2024年5月3日 20時27分
-
中国、月裏側の試料採取へ無人探査機打ち上げ 成功すれば世界初
産経ニュース / 2024年5月3日 19時3分
-
火星での「サバイバル」は可能? 仏研究グループが「宇宙農業」の可能性を探る火星ローバーを提案
sorae.jp / 2024年5月2日 20時45分
-
ULAがデルタIVヘビーの最終打ち上げに成功 デルタシリーズ運用に幕
sorae.jp / 2024年4月23日 6時24分
-
火星での生命探査にパラダイムシフトを起こすか 米大学院生が提案する斬新なミッション
sorae.jp / 2024年4月12日 9時22分
ランキング
-
1映画「もののけ姫」の映えスポットで撮影した女性の投稿に大反響! 「言われなくても生きそう」「無敵感がすごい」
よろず~ニュース / 2024年5月2日 15時0分
-
2枯れたミントを畑に捨てたら…3年後に「地獄絵図」、 繁殖力に地主も後悔「土の総入れ替えしかない」
まいどなニュース / 2024年5月3日 7時10分
-
3【業務スーパー】手土産にもおすすめ♪ 「ダブルチーズケーキ」が可愛くて上品
イエモネ / 2024年5月3日 15時0分
-
4iPhoneに「侵害されたパスワード」という通知が来ました。パスワードが漏洩してしまったのでしょうか?
オールアバウト / 2024年5月2日 21時25分
-
5コンビニは「前向き駐車」すべき? なぜ「バック駐車」は推奨されない? “納得の理由”と守らなかった際の「悪影響」とは
くるまのニュース / 2024年5月2日 17時10分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください