火星で吹き荒れる塵旋風。NASA火星探査車「Perseverance」が撮影
sorae.jp / 2022年6月8日 11時2分
こちらのアニメーション画像は、アメリカ航空宇宙局(NASA)の火星探査車「Perseverance(パーセベランス、パーシビアランス)」に搭載されているナビゲーションカメラを使って、2021年7月20日に撮影された火星のジェゼロ・クレーターの様子です(細部を見分けやすくするために実際よりも色が強調されています)。忙しなく動き回る白い煙の柱のようなものは、クレーターの底から立ち上った塵旋風(dust devil、ダストデビル)です。
日本時間2021年2月19日朝にジェゼロ・クレーターへ着陸してから1年以上が経ったPerseveranceは、冒頭の画像のような塵旋風や、塵の雲を発生させる突風を何度か撮影してきました。NASAのジェット推進研究所(JPL)によると、Perseveranceのカメラが捉えた塵の雲は最大で4平方kmを覆うほどの巨大なものだったといいます。
惑星科学者のClaire Newmanさんを筆頭とするグループが発表した研究成果によれば、Perseveranceは典型的な火星の1日に少なくとも4つの旋風と遭遇しているといいます。ピークは正午直後で、1時間に1つ以上の旋風が通過しているようです。
塵旋風といえば、2022年中にミッションを終える見込みの火星探査機「InSight(インサイト)」が遭遇するのを待ち望んできた気象現象でもあります。インサイトは太陽電池を採用していますが、その上に降り積もり続けた塵によって発電能力が低下しており、インサイトの運用チームは塵旋風によって塵が吹き払われることを期待してきました。
しかし、毎日のように塵旋風に遭遇しているPerseveranceとは対照的に、インサイトの太陽電池アレイには塵が積もったままです。Newmanさんは、RTG(※)を搭載しているPerseveranceが仮に太陽電池を採用していたとしても、積もる塵に悩まされることはなかったでしょうと語ります。
※…RTG:Radioisotope Thermoelectric Generator(放射性同位体熱電気転換器)の略。原子力電池の一種で、放射性物質が崩壊するときの熱から電気を得るための装置
といっても、Perseveranceが着陸したジェゼロ・クレーターでは特別に強い風が吹いているというわけではないようです。Newmanさんによると、ジェゼロ・クレーターにおけるピーク時の風速や旋風の活動はインサイトが着陸したエリシウム平原と同じくらいで、平均風速はジェゼロ・クレーターのほうが低いといいます。それにもかかわらず、塵旋風や巨大な塵の雲がジェゼロ・クレーターで発生しやすいのは、同クレーターの地表の特性が他の場所とは異なっていて、塵が巻き上げられやすいからではないかとNewmanさんは予想しています。
塵の巻き上がり方は予想を上回る強さだったようです。気象データを取得するために搭載されているPerseveranceの観測装置「火星環境動力学分析器(MEDA)」の風向風速センサーは、旋風が運んだ砂粒によって損傷を受けたとみられています。MEDAの副主任研究員を務めるJPLのManuel de la Torre Juarezさんは、損傷したセンサーでも風向風速を測定し続けられるように、運用チームは変更されたソフトウェアのテストを行っていると語っています。Perseveranceが取得したデータは火星の大気中に塵が巻き上がるプロセスを理解することにつながり、将来の火星探査ミッションに役立てられることが期待されています。
#foogallery-gallery-90074 .fg-image { width: 800px; } Perseveranceが2021年6月18日に撮影した、突風が塵を巻き上げる様子。この突風によって巻き上げられた塵の雲は4平方kmを覆うほどだったという火星探査車「Perseverance」がジェゼロ・クレーターで撮影した塵旋風 Prev 1of2 Next
関連:NASA火星探査機「インサイト」2022年12月頃にミッション終了の見込み
Source
Image Credit: NASA/JPL-Caltech/SSI NASA/JPL - NASA’s Perseverance Studies the Wild Winds of Jezero Crater Newman et al. - The dynamic atmospheric and aeolian environment of Jezero crater, Mars文/松村武宏
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