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原因は何か? 謎に満ちた突発天体を早期発見 「すばる望遠鏡」の観測成果

sorae.jp / 2022年7月21日 10時55分

【▲ 今回発見された突発天体の起源として提唱されている3つの現象を示した図(Credit: Kavli IPMU)】

【▲ 今回発見された突発天体の起源として提唱されている3つの現象を示した図(Credit: Kavli IPMU)】

東京大学国際高等研究所・カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU ※)の姜継安(ジャン・ジアン)さんを筆頭とする研究チームは、国立天文台ハワイ観測所の「すばる望遠鏡」による観測の結果、通常の超新星よりもはるかに明るく、より急速に明るさを増す天体を発見したとする研究成果を発表しました。

※…研究当時、現在は国立天文台

■謎に満ちた新たなタイプの突発天体、研究チームは「FBUT」と命名

研究チームが発見したのは、「くじら座」の方向に出現した「MUSSES2020J」と呼ばれる突発天体(電磁波の強さが突発的に増す天体や現象)です。この天体は、姜さんが率いる突発天体の国際的な探査プロジェクト「MUSSES(MUltiband Subaru Survey for Early-phase Supernovae)」によって、2020年12月11日に発見されました。

超新星爆発をはじめとした突発天体は、いつ・どこに現れるのかがわからないため、早期に発見するのが難しい天体です。すばる望遠鏡の観測装置「超広視野主焦点カメラ(HSC)」を使うMUSSESプロジェクトは、様々な突発天体を発生直後に検出することを目的に実施されています。

発表によると、まだ増光が始まる前の段階で発見されたMUSSES2020Jは、観測中に急速に明るくなったといいます。追跡観測の結果、MUSSES2020Jは約82億光年先(赤方偏移z=1.063)で発生した現象であり、通常の超新星と比べて約50倍も明るくなったことが判明しました。こうしたMUSSES2020Jの特徴は、2018年6月に発見された突発天体「AT2018cow」によく似ていたといいます。

「このような天体はまだごくわずかしか発見できていません。それは、急速に増光する特徴のため、その発生直後の状態の観測はとても困難であったためです」(姜さん)

関連:正体不明の突発天体、これまで認識されていなかった爆発現象の可能性

【▲ 今回発見された突発天体「MUSSES2020J」と、その他の突発天体である超高輝度超新星・Ia型超新星・キロノバの光度曲線(時間の経過にあわせて変化する天体の明るさを示した曲線)。右下の画像は「MUSSES2020J」が発見された銀河と発生位置(+印)を示している(Credit: Kavli IPMU)】

【▲ 今回発見された突発天体「MUSSES2020J」と、その他の突発天体である超高輝度超新星・Ia型超新星・キロノバの光度曲線(時間の経過にあわせて変化する天体の明るさを示した曲線)。右下の画像は「MUSSES2020J」が発見された銀河と発生位置(+印)を示している(Credit: Kavli IPMU)】

研究チームはこのような突発天体を「FBUT(Fast Blue Ultraluminous Transient)」と呼ぶことを提案しています。FBUTには、ピーク時の光度が超高輝度超新星(通常の超新星と比べて10倍以上も明るくなるタイプの超新星)に匹敵しつつ、短時間で急速に明るさを増すという特徴があるといいます。

FBUTの起源はまだ明らかになっていませんが、今回その発生直後のデータが得られたことで、非常に活動的なコンパクト天体(高密度天体)が関わっている可能性が有力視されています。研究チームによると、以下のような現象が考えられるといいます。

・ブラックホールに接近した恒星が潮汐力によって破壊される「潮汐破壊現象」
・大質量星の崩壊によるブラックホールやマグネター(強い磁場を持つ中性子星)の形成
・超新星の一種「脈動型電子対生成超新星」で放出された物質と星周物質(星を取り囲む物質)の相互作用

研究チームは謎に満ちたFBUTの起源を解明するために、今後もすばる望遠鏡のHSCを使って突発天体の探査を続けるとのことです。

 

関連:主星の超新星爆発を生き延びた伴星か? ハッブル宇宙望遠鏡による観測成果

Source

Image Credit: Kavli IPMU Kavli IPMU - 急激に超高輝度となる天体の発生の瞬間を初めてとらえた 国立天文台すばる望遠鏡 - 急激に超高輝度となる天体が発生する瞬間を初めて捉えた Jiang et al. - MUSSES2020J: The Earliest Discovery of a Fast Blue Ultraluminous Transient at Redshift 1.063

文/松村武宏

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