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スイッチOTC薬の所得控除と医療費控除の関係を税理士が解説(松嶋洋)

相談LINE / 2016年3月25日 19時30分

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平成28年度税制改正では、セルフメディケーション(自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること)の充実を図るという政策目的から、医療費控除の特例として、スイッチOTC医薬品の購入金額について、所定の要件を満たす場合、所得控除を受けられるという制度が創設されました。
OTCとは(Over The Counter)の略であり、薬局のカウンター越しに売られる市販薬がこれに該当します。医師の判断でしか使用できなかった医薬品を、薬局で買えるようにしたのがスイッチOTC医薬品であり、この購入金額について所得控除を認めるというのが本制度です。

■医療費控除が使えない場合に使える特例

この制度ですが、従来から設けられている医療費控除との選択制とされています。従来の医療費控除は、原則として10万円という足切りがあり、それに満たない医療費を支払っても、控除を受けることができません。これを補完するために、本制度ができたといわれます。

本制度は、最低1万2千円以上の購入が必要であり、8万8千円が所得控除の限度額とされています。両方を足すと10万円となりますので、スイッチOTC薬の購入金額が10万円未満の場合にはこの制度を使い、そうでない場合には従来の医療費控除を使う、といった流れになります。

■金額が少なすぎる

ところで、最大8万8千円しか控除ができないとなると、所得税の税率は最大でも55%(住民税を含む)ですから、所得税等の減税効果としては、48400円程度しかありません。この程度の減税で、手間と時間がかかるセルフメディケーションが増えるのか、個人的には大いに疑問です。

■平成33年12月31日までが期限

この制度は、平成29年1月1日から平成33年12月31日までに、スイッチOTC薬を購入した場合に適用があるとされています。適用される期限が決まっていますので、特別減税と国は考えているようです。

しかしながら、本制度の目的であるセルフメディケーションは、一朝一夕にできるものではなく、10年などの大きなスパンで取り組まなければ意味がないと考えられます。このため、適用期限を短く決めるのではなく、長期的な制度でなければならないはずです。

こういう意味で、あまり意味がない制度であり、こんな制度作ることよりもほかにやるべきことはたくさんあるのでは、と疑問があります。

●執筆:元国税調査官・税理士 松嶋洋 WEBサイト
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後、経団連関連の税制研究所において、法人税制を中心とするあるべき税制の立案と解釈研究に従事。現在は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事するとともに、税理士向けに税務調査・法令解釈のノウハウにつき講演執筆活動を行う。

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