二年目にして先発&ストッパーに大抜擢。広岡達朗が若き渡辺久信を見出した“偶然”
日刊SPA! / 2024年3月14日 15時51分
入団当初から身体の強さには目を見張るものがあった。高校時代に駆り出された陸上大会のハイジャンプ(走り高跳び)で1m85cmを飛んだバネと背筋力215キロという身体的素質、筋肉の柔らかさ、アスリートとして最高の素材であるのは専門家が見れば一目瞭然だった。あとは決め球となる変化球さえ覚えればすぐにでも一軍で使える、渡辺は広岡の目にそう映った。
そして二軍でスライダー、フォークを覚え、ルーキーイヤーの6月下旬に早々と一軍昇格。元来の性格が負けず嫌いで、球の力、身体の強さはチーム屈指。それ以降は一軍に置きながら育てる方針を敷いた。1年目は15試合に登板し、1勝1敗。52回2/3を投げたため新人王(ピッチャーは30イニング以下)の資格はなくなったが、それよりも経験を積ませることを最優先した。
◆たまたま訪れた広岡の前で挙げた二軍初勝利
当の渡辺GMが当時のことを語ってくれた。
「私がプロに入って1軍に上がるきっかけを作ってくれたのが広岡さんなんです。開幕してからずっとファームで投げていたものの、出れば打たれるの繰り返し。コントロールも良くなくて、フォアボールを出した次の打者にストライクを取りにいって打たれる、ということがしょっちゅうだったんですよね。まったく勝てないピッチャーだったんです。それで、西武球場で初めて親子ゲーム(同一球場で一軍と二軍両方の試合が同日に行われること)があった日に、私は二軍の先発だったんです。
その試合を、たまたま広岡さんが見てたんですよ。そこで二軍初勝利を挙げたんです。良かった良かったと思っていたら、広岡さんが『もうこいつは上で育てよう』と一軍に上げてくれました。他の試合はほとんどダメダメだったのに、二軍でたった1勝挙げただけで一軍に上がれました。運が良かったというか、御前試合でいいピッチングしたおかげですぐ一軍に上がって、そこからずっと一軍でした。何かにつけてきっかけを作ってくれたのが広岡さんでしたね」
2年目の1985年、渡辺は先発ローテーションに入り、開幕第4試合目の4月10日に先発してから4連勝を飾る。ちょうどプロ2年目の日本ハム津野浩志、南海の加藤伸一も台頭し、19歳トリオとしてプロ野球に新風を巻き込んでいる時期でもあった。
ストッパー森繁和が肘痛による体調不良のため、渡辺は5月中旬からストッパーに回り、同月17日から6連続セーブのパ・リーグ記録も作った。
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