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「選手からすれば最も説得力がある」辻発彦が明かす広岡達朗独自の指導法

日刊SPA! / 2024年3月26日 15時51分

「俺はまだできる」

辻は西武を自由契約となり、他球団との交渉にあたった。けじめとして前監督だった森祇晶に挨拶の電話をした。

「監督、晴れて自由契約になりました」
「そうなのか。お前、次はどこか決まっているのか?」
「いえ、まだ決まっておりません」
「ちょっと待ってろ」

森は、当時ヤクルトの監督だった野村克也に電話した。すると、ヤクルトがすぐに辻獲得の意思を表明した。その後、ロッテのGMに就任したばかりの広岡も辻の獲得に動き、電話を入れる。

「うちに来ないか、1億円用意する」
「ありがとうございます。ですが監督、すいません。すでにヤクルトさんから話をいただいてお世話になることを決めました」
「野村のとこか……、しょうがない。しっかりセ・リーグの野球を見てこい。頑張ってこい」

ありがたいと思った。プロ入り後の二年間しか世話になっていない広岡からも誘いが来たことに感激した。ただ辻は何の迷いもなくヤクルト入団を決意した。辻のなかでは、いくつもの分岐点があったら最初に声をかけてくれたほうに行くと決めている。ヤクルトの条件提示は年俸5千万、ロッテは1億。条件だけ見ればロッテのほうが圧倒的に上だ。だからといって辻は翻意しなかった。それが自分の流儀であり、けじめであると信じていたからだ。

「広岡さんは、自身のプレーを見せながら指導する。選手からしたら最も説得力のある指導です。広岡野球から学んだことは、局面局面で選手自ら考え実行する自主性を大事にすることです。現役時代、グリーンライトという自分の判断で盗塁していいというサインが出されていました。わざと走ると見せかけて走らなかったりと、状況を見ながら相手にプレッシャーをかけていましたね。別に誰から教わったわけではなく、周りの選手を見てこういうプレッシャーのかけ方があるんだと学び、自発的にやっていただけです。当時の西武には、常に相手にプレッシャ-をかけて試合を有利に展開するプレーを心掛けている選手が多かったように思います。だから常勝軍団が形成されていったのだと。

広岡さんの指揮官としての言葉の強さも印象に残っています。『俺の言う通りにやれば勝てる』と監督に証明されたら選手は何も言えません。広岡さんは確率重視というより、絶えず多角的な戦術を場面場面でシュミレーションし、試合の流れをよく読んだうえでサインを出す。勝負における哲学や心理を突く独自の理論をきちんと構築なさっていたと思います」

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