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「このままでは邦楽は“浮世絵”になってしまう」音楽史をひも解いて見えたJ-POPのユニークさ<みのミュージック>

日刊SPA! / 2024年4月2日 15時51分

―――1個の大きなうねりのメロディが感動を呼ぶ。これはJ-POPのアドバンテージであると同時に、歌詞がひとつの文章としてメロディと一緒に伝わりにくいという難しさも抱えていると思います。西洋のメロディとハーモニーに日本語をはめ込むこと、そしてその困難を経験することはJ-POPの進化の過程でメリットだった、それともデメリットの部分もあったと考えますか?

みの:そうですねぇ……。西洋の音楽が入ってきたことでそもそも日本人のアイデンティティみたいなものがかなり希薄になっているのではないかとか、あるいは西洋こそが等身大の表現をできているんだとかいう感覚に陥りがちなんですけど、そういうことは全くない。日本人の等身大の感覚として、和洋折衷、そして同化している生活を送っているわけです。和洋、どちらに振り切っても違和感があるわけですよね。

 温泉に行ってよかったと思ったりすることはあっても、ずっと着物を着て生活している人もいない、そういうリアルな日本人の感覚が反映されているのが今日の邦楽のあり方だと思うので、そこに明治期の歪みが色濃く残っているかというと僕はそうではないと思います。そういう歪みが大きかった時期はもちろんあるんですけど、だんだんと消化されていって、今は等身大のところに落ち着いているのではないでしょうか。

◆最先端の流行を翻訳するK-POPと、独自進化のJ-POP

―――今の話でいうと、最近のアメリカのヒット曲の中には、ハリー・スタイルズやアリアナ・グランデのようにちょっとJ-POPっぽいメロディやコードが出てきますよね。リズムの反復の気持ちよさよりも、一節のうねりの感動を伝える曲が増えてきました。西洋の側から見ると、逆輸入といった感じなのかもしれません。

みの:うん、なんかそういう展開は、たとえばK-POPみたいに最先端の流行を翻訳して国内でうまくそれに寄せて作って出していく方法だと、成果として表れないものじゃないですか。だから日本国内で独自進化を遂げられたのは非常にいいことですね。

―――西洋化の歪みが消化されていき、等身大の創作としてのJ-POPが欧米のアーティストに影響を与えている。みのさんのお話をうかがって、大衆音楽における近代化の到達点が宇多田ヒカルなのではないかと思いました。かなりアクロバティックに日本語の歌詞をはめ込むソングライティングをどうご覧になっていますか?

みの:徐々に洋楽的な手法が浸透していく中で、子音とかを細かく切って反復で気持ちよくさせるやり方をきっちり最初に提示したうちの一人が宇多田でしょう。ポップスにおける言語感覚のリズムの部分の回答は、彼女の出現で決着したと思いますね。

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