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「このままでは邦楽は“浮世絵”になってしまう」音楽史をひも解いて見えたJ-POPのユニークさ<みのミュージック>

日刊SPA! / 2024年4月2日 15時51分

◆“桑田佳祐モデル”というコンセプト

―――宇多田ヒカルが示したソングライター的な視点に加えて、みのさんは“桑田佳祐モデル”というコンセプトも提言されています。具体的なソングライティングの方法論というよりも、洋楽に対する姿勢ですね。<ヒット性を保ちつつ、その枠内で最大限の音楽的冒険を行うことを矜持とした。>(p.321)と書かれていますが、具体的な方法論ではなく精神性が作品にあらわれる現象も、また日本的だなと思いました。

みの:サザンオールスターズの後に続くバンドで色々明示されていますけれども、音楽性のジャンルが違っても、アティチュードの面で共通しているのはすごく日本的ですよね。でも、いわゆるビートルズ的な音楽的な実験をしつつヒット曲も出すという形を日本でやろうとしたときに、ビートルズがやった形そのものは日本風に翻訳できないわけです。

 それをCharやゴダイゴなどが探っている中で、サザンオールスターズ、桑田佳祐が“ここまではやっていいよ”という限界を明確に見せてくれたんですね。それ以上行ってしまうとアングラ扱いされてお茶の間に出てこられなくなるよ、と。でも、やっぱりロックってギリギリのところまでアクセスしようとするエネルギーにみんな魅力を感じるんですよね。だけど、そこで桑田は“一旦ここまでだよ”という決まり事を楽曲の中で教えてくれたんです。

◆「自ら西洋化にかじを切った国は日本だけ」

―――日本なりのポップスが独自の進化を遂げた例として、宇多田ヒカルと桑田佳祐を挙げていただきましたが、そうしたユニークな音楽が生まれてきた背景には何があったと考えますか?

みの:結局、西洋化するという決断を自ら進んでした国って世界史的に日本だけじゃないかと思うんですよね。他のケースは押し付けられたか植民地化の過程でやむを得ずそうなったという感じでしょう。思いっきり西洋化にかじを切ってみようとしたのは日本ぐらいですね。自らの意志による選択だからこそ、西洋とは何かをちゃんと考えられるのはあるかもしれません。

<取材・文/石黒隆之 撮影/山田耕司>

【みの】
1990年シアトル生まれ、千葉育ち。2015年に3人ユニット「カリスマブラザーズ」を結成。2019年より独立し、YouTubeチャンネル「みのミュージック」を開設。現在、チャンネル登録者数は43万人を超える。また、ロックバンド「ミノタウロス」としても活躍。2021年より、Apple Musicのラジオ番組「Tokyo Highway Radio」のDJを担当している。著書に『戦いの音楽史 逆境を越え 世界を制した 20世紀ポップスの物語』、『にほんのうた 音曲と楽器と芸能にまつわる邦楽通史』(ともにKADOKAWA)がある

【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4

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