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眼球、耳、男性器も…“失った身体の一部”を製作する技術者が、「安い」と言われても料金を変えない理由

日刊SPA! / 2024年4月20日 15時53分

 心を解き放ち、抱えているコンプレックスに一緒に向き合うこと。そして持てる技術でそれを修正していくことが牧野氏の使命であり、これまで多くの人たちの精神を救ってきた。

◆医師・看護師に知られていない理由は…

 翻ってエピテーゼがどれほど浸透しているかについては、疑問もある。牧野氏自身、こう打ち明けるほど、その知名度は高いとは言い難い。

「ここ10数年、医療機関での講演などでお話をさせていただく機会があります。医師・看護師でさえ、エピテーゼをご存知の方は少ない印象です。会場の誰も知らない、ということもさほど珍しくありません。たとえば乳がんで切除手術をしたあと、弊社へ来る人は多いのですが、『術前にエピテーゼを知っていたら悩みも少なかったのに』という声をよく聞きます」

 隣接領域にあるはずの医療とエピテーゼは、なぜ混ざり合うことがないのか。「おそらくですが」と前置きしたうえで、牧野氏はこう推察する。

「医療の本分は人命を救うことであり、それ以外のこと、たとえば『患者がどんな姿で今後の人生を生きるか』は最重要事項ではないのかもしれません。しかし人が生きるうえで、“見た目”はかなり重要なファクターです。容姿が他人と異なることは本人にとって苦痛になり、場合によっては片時も忘れられない悩みになってしまうでしょう。したがって、医療機関などで積極的にエピテーゼの案内をおこなってもらえると、患者さんにとっての選択肢を提示できるのではないかと思っています」

◆専門家から「もったいない」という意見もあったが…

 医療分野との連携は課題のひとつだが、それ以外にも、エピテーゼが広まらない理由はあると牧野氏は言う。

「大きな理由としてあるのは、技術者が少ないことでしょうね。そして、その技術をあまり広めたがらない。弊社ではスクールに通った生徒さんがどこで独立しても関知しません。むしろ自らの技術に確信が持てたなら、早く巣立って多くの人の役に立ってほしいと思っています。しかし、そういう理念の会社ばかりではないと思います」

 牧野氏がエピテーゼ界隈に参画した当時、技術はさらにごく少数の人たちのためのものだった。製作物は現在よりもさらに高額で売られ、患者はそれを必要としている以上、購入するしかなかった。牧野氏の参入以降、提供したエピテーゼは破格でかつ精巧だと評判になった。それはたとえば、こんな言葉にあらわれている。

「参加した学会などで、専門家の方から『こんないいものをそんなに安く提供したらもったいないよ』という言葉をいただくことがたびたびありました。光栄ではありましたが、やはり多くの患者さんに届けたいという思いがあったので、現在の価格設定にしました」

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