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眼球、耳、男性器も…“失った身体の一部”を製作する技術者が、「安い」と言われても料金を変えない理由

日刊SPA! / 2024年4月20日 15時53分

◆外国製では大きすぎた「男性器のエピテーゼ」

 事業である以上、対価は受け取るが、法外な設定にはしたくない――当時から現在に通底する牧野氏の理念だ。だが当然、業界内で知名度をあげれば誹謗中傷にも晒される。

「だいぶ昔の話ですが、mixiを通じて、FTM(female to male、生物学的性別が女性で自己認識が男性)の方からご連絡をいただきました。男性器のエピテーゼが欲しいという依頼でした。そのときは初めての案件でしたので、正しいものが提供できる保証がなく、希望通りのものになったら代金をいただくお約束をしました。

 その方はこれまで外国製のエピテーゼを使用していましたが、それはあまりにサイズが大きすぎるもので、適合しないということでした。確かに作りは粗雑で、外国製にしてもサイズは大きすぎますし、何より色味も本人とまったく違うものでした。一度、銭湯などにエピテーゼを落とした経験があり、ジャストサイズのものをオーダーメイドしたいという思いが強くなったようでした」

◆「特許侵害」との言いがかりをつけられる

 果たして牧野氏は依頼者が納得のいくものを作成した。依頼者は喜び、それがきっかけとなって口コミで広まった。

「数年ほど、自らの性別について悩みを抱える方々を中心にご依頼いただくことが増えました。ある日、人づてに『Xという会社のホームページに、牧野さんが教えてくれた技術に関することが細かく書かれている』と聞いたんです。弊社に出入りしている依頼者の方のなかに、X社の関係者がいるのかなとは思いましたが、特段気に留めずに過ごしていました。すると、X社から、弁理士を通じて警告書が届いたのです。簡潔に言えば、弊社が行っていることは性器エピテーゼの特許侵害だという内容でした」

 この警告は言いがかりに等しかった。X社よりも前に性器エピテーゼの製作を行っている会社はあったからだ。牧野氏はX社の特許無効を証明するため、同業他社の協力を仰いだ。

「もちろん、弊社を含め、X社以前よりも性器エピテーゼを製作販売していたところは複数ありました。しかし製作の事実を証明するためには顧客情報を提出せねばならず、難航しました。そんな折、アメリカの法人で日本でもエピテーゼ販売をしているところを見つけ、協力を要請すると、快諾されました」

 こうしてX社からの訴えは一蹴されることとなったが、彗星のごとく現れ知名度を高めた牧野氏の周囲では、不思議なことが起こるようになった。

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