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刑務所ライブ500回超。“受刑者のアイドル”仕掛け人の信念「車と家を売って資金を捻出」

日刊SPA! / 2024年4月28日 8時53分

 文通をしていくなかで、社会のどこにも優しく扱ってもらえる場所がなくて困っていること、刑務所であれば丁寧に接してもらえると感じていることを知りました。私は『だけど、刑務所にいることが幸せだと考えるのは間違っているよ』と伝えました。ちなみに現在出所して、就職もすることができ、職場の人間関係にも恵まれているということです。その人のためになるのであれば、さまざまな形のエールを送ることで応えたいと思っています」

◆金持ちにはなれないけれど…

 片山氏なりのエールは、こんな信念のもとに送られる。

「あるとき、大金持ちの友人に『どうしたら金持ちになれるのか』を聞いたことがあるんですよ。すると、『片山さんには無理』と即答されました(笑)。その人いわく、稼いでいる父親の背中を見ていないから無理だということで。あわせて、ビジネスの世界では、金額交渉をするときに相手の懐を気にしてしまう人は儲けられないんだそうです。確かに、私は幼い頃から母の懐具合をいつも心配していました。それを聞いて、私はお金儲けをする人にはなれないけど、別の何かにはなれるのではないかと思ったんです。

 先ほどもお話したとおり、私はかつていろいろなことに困っていました。周りにも困っている人がいました。どんな困りごとであれ、力になりたいという思いが強いんです。くわえて、最終的にはお金がどれほどあっても対症療法にしかならないことも知っています。本人が自覚して行動を変えなければ、その場しのぎのお金をいくら与えても、本当に生き方を変えることはできません。お金ではない、別のアプローチでさまざまな人の状況を解決する手伝いができたらいいと思っています」

◆母親から「少しくらいは褒めてもらえるかも」

 インタビューの最後、片山氏は確かに言った。

「もしあの世があったら、これまでさんざん迷惑を掛けてしまった母親からも少しくらいは褒めてもらえるかもしれませんね。しばらくは自分に与えられた仕事を全うして、天国に行くとき、逢えたらいいな」

 どんなに注意深く生きても、人はしばしば間違える。だからこそ回復を手伝う誰かの手が必要になる。社会の日陰を這いずり回ってなお片山氏が絶望しきらなかったのは、周囲への感謝を手放さなかったからだろう。

“受刑者のアイドル”――センセーショナルでありながら地道で実直なその仕掛けは、氏なりの社会への壮大な恩返しなのかもしれない。

<取材・文/黒島暁生>

【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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