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食べっぷりも話題に…川口春奈出演『9ボーダー』が“最近流行りのドラマ”と一味も二味も違う理由

日刊SPA! / 2024年5月3日 15時52分

アサヒ生ビールのCM「出張とおつかれ生です。」篇を見ると、カウンター席の松下がビールを一口飲んで「はぁぁぁ~」ともらす一言というか、一音の持続だけでもうなんかドラマを感じてしまう。ならば川口が出演するビールCMはどうかというと、これが短編小説の切れ味みたいな痛快さで、エールビールの喉越しを伝えてくれる。川口が歩いてきてすでに物語は静かにたちあがり、それを松下がキャッチして歌い継ぐ。それぞれの特性を活かして物語る俳優同士が共振する瞬間が素晴らしいのだ。

◆“食べる人”として類似するロマコメ作品は…

ちょうど10歳ずつ年がはなれた3姉妹が夜毎集うおおば湯の休憩室で、真ん中を陣取ってビールを飲む七苗から再びモノローグがもれる。さわやかな孤独として響くのは、物語る人の白眉といえるワンシーンだからだろう。

というわけで、仕事の人であり、物語る人であり、ビールを飲む人でもある川口だが、もうひとつ彼女は、食べる人でもある。休憩室で2本目のビールを飲みながら、七苗が食べているのが、牛丼。その食べっぷり(!)。

『着飾る恋』でも川口の食べっぷりが話題だった。同作第2話、横浜扮する藤野駿が作った料理を一口。広いシェアハウスの天井まで「んっま」が響く。この一言に集約されるその食べっぷりが、食べる人としての川口春奈を揺るぎないものにしている。川口が食べ物を口に運ぶときの大胆さを見て思い出すのは、『食べて、祈って、恋をして』(2010年)のジュリア・ロバーツだ。

かたことのイタリア語を頼りに現地のポモドーロを一息に頬張るジュリア・ロバーツの解放感が川口春奈にも息づき、まさか日本の銭湯を舞台にしても似たような生命力ある食の場面が見られるとは思わなかった。七苗の姉・成澤六月(木南晴夏)が、イタリアで食べたパスタについてたわいもなく話す場面は、偶然の目配せと理解しつつ、ロマコメ作品の主人公同士が食べる人として類似する、こんな贅沢で国際的なドラマの楽しみ方をどう享受したらいいんだろ……。

◆“炭鉱のカナリア”になることができる俳優、川口春奈

国際的だなんてちょっと飛躍が過ぎるかと思いながら、本作が提示する身近で切実なテーマにグッとくる。耳に優しい川口のモノローグがあり、松下洸平の心地いい歌声があって、次にどうも耳慣れないワードが入ってくる。

ハラスメントはハラスメントでも、上司が部下の負担を減らし、ハラスメントに過剰に対応し過ぎるとホワイトハラスメントになるらしいのだ。良かれと思ったことが、こんな裏返しになる時代の新しいハラスメント概念。七苗は、後輩の西尾双葉(箭内夢菜)にコンプライアンス室に駆け込まれ、新浜から注意を受ける。プロデュース店の一周年記念パーティー会場に入るとき、七苗がぶつぶつ「ホワハラって何。何でも、ハラハラハラ……」というのだが、否が応でも社会の変化を感じてしまう。上下ふたつの世代のちょうど間にはさまれる七苗のようなアラサー世代はどうふるまうべきなのか。

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