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「バラエティ番組はくだらない」は至極真っ当な主張。小泉今日子が“国民の相棒”であり続ける理由

日刊SPA! / 2024年5月14日 15時53分

バコールは19歳で出演したデビュー作『脱出』(1944年)で初共演した名優ハンフリー・ボガートと1945年に結婚した。ハリウッドきってのおしどり夫婦として未だに語り草のふたりを「相棒」と言い切るトリュフォーの着眼には恐れ入る。そしてこれまた小泉今日子にも適用されるのだ。

小泉の相手とは、中井貴一である。2012年に放送された『最後から二番目の恋』(フジテレビ系)での愛すべき相棒関係は、テレビドラマ史に深く記憶されているベストオブベストコンビ。すでに放送終了から10年以上経っているのに、年々物語世界の鮮やかな深みを増している気がする。

◆印象深い「小競り合い」シーン

小泉が演じるのは、テレビドラマのプロデューサー吉野千明。オフィス内の喫煙所にこもって何本も煙草を吹かして脚本の初稿を読むのが基本スタイル。実際、小泉にとっての煙草とは一種、図像学的なアトリビュート(持ち物)なのだが、この千明に「カッコいいです!」なんて素直にいったものなら、灰皿がとんできそうな勢いだ。部下たちも気を遣うのなんの。

『脱出』のバコールもまた煙草を持った痛烈な人。初登場場面からすごい。無愛想に部屋に入ってくるなり、ボガートにマッチを要求する。ボガートがヒョイと投げたマッチ箱をキャッチする一瞬のやり取りだけでふたりの深い関係が描かれる。ハワード・ホークス監督の慧眼的演出だ。

『最後から二番目の恋』の小泉の場合は、独り身の45歳プロデューサーが、そろそろ孤独が身にしみて鎌倉の古民家に引っ越すのが発端。お隣さんが、姉弟と娘と賑やかに暮らす長倉家の長男で、市役所職員の長倉和平(中井貴一)、50歳。5歳差のふたりが顔を合わせばすぐさま小競り合い。帰宅時間がだいたい一緒で、和平が改札でもたつく千明をヒョイと先に追い越すのが通例。負けじと追いついた千明が和平を追い抜く。

並んでるんだか、並んでないんだか、でも遠目には仲良しな背中のふたりがまた帰路で小競り合いを演じる。小泉の「ヘヘッ」と中井の「ヘッ」という笑い声が呼応するのも見事な相棒関係の通奏低音。

◆“国民の相棒”の平衡感覚を頼りに

第5話、長倉家の朝の食卓で千明が言う。「お兄さんの言ってることってすっごく真っ当だし、必要な言葉だと私は思いますけどね」。現実の小泉の発言がこうして過去の作品で演じたキャラクターの台詞によって裏書きされる。名言めかすことなく、自然に真っ当に。

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