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JRが“リニア開業”より“夜行列車の復活”を優先すべき理由「廃止が相次いだ当時と状況が大きく異なる」

日刊SPA! / 2024年6月28日 8時51分

 つまり、夜行列車の復活は、現状のインバウンドが抱えている課題に応えるだけでなく、正の外部性をもたらすことがおわかりいただけるだろう。

 とはいえ、ヨーロッパで夜行列車が復活しているという事実をもって日本でも同様の改革を行うことはそう簡単ではない。フランスのように日本では飛行機利用の法規制がなく、また日本人には脱炭素への興味や意識がヨーロッパほど醸成されていないのが現状だ。こうした課題を克服することが求められるだろう。

◆JRが動かなければ、他業種が参入するのもアリ

 最後に、こんな疑問が浮かばないだろうか。

 なぜJRは夜行列車をやらないのか?

 それはJR各社の事業戦略による都合と筆者は考える。夜行列車を復活させるよりも、エキナカや不動産開発、金融事業など利益率の高い非鉄道部門の事業に注力したほうが儲かると考えているのだろう。

 ただ、JRにとっては実行する合理性がないとしても、売上が10数億円見込めるとするならば、他業種の民間企業にとっては実行する合理性がある。

 それに、他業種が夜行列車事業に参入する場合、コスト面で見ると「上下分離システム」を導入すれば十分に可能であると筆者は考えている。

 上下分離システムとは線路の「上」を走る鉄道の運行と、運行のために必要な施設等々の管理、つまり「下」のふたつで経営会社をわけるという方式だ。

 富山地方鉄道や青い森鉄道はこの方式によって日常的に運行されており、決して非現実的な方法ではない。つまり、かつてJRがすべてを担うわけではなく、上下分離にすることで経営効率化を図れる「夜行列車2.0」として復活させるのだ。

 事実、ヨーロッパではこの上下分離システムを導入して走るヨーロピアンスリーパーという夜行列車がベルギー・チェコ間で運行している。これを参考に国内でも夜行列車ベンチャー企業が立ち上がってもおかしくない。

 先日の静岡県知事選挙ではリニア推進派の鈴木康友氏が当選したが、リニアの開通は恐らく10年以上も先のこととなるだろう。

 観光立国ニッポンを標榜するならば、今こそ夜行列車の復活が求められると筆者は考える。

<TEXT/田中謙伍>

【田中謙伍】
EC・D2Cコンサルタント、Amazon研究家、株式会社GROOVE CEO。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、新卒採用第1期生としてアマゾンジャパン合同会社に入社、出品サービス事業部にて2年間のトップセールス、同社大阪支社の立ち上げを経験。マーケティングマネージャーとしてAmazonスポンサープロダクト広告の立ち上げを経験。株式会社GROOVEおよび Amazon D2Cメーカーの株式会社AINEXTを創業。立ち上げ6年で2社合計年商50億円を達成。Youtubeチャンネル「たなけんのEC大学」を運営。紀州漆器(山家漆器店)など地方の伝統工芸の再生や、老舗刃物メーカー(貝印)のEC進出支援にも積極的に取り組む。幼少期からの鉄道好きの延長で月10日以上は日本全国を旅している

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