石橋静河の“濡れ場を運動に変換する”資質に驚き。出演作品を見た記者は「現代のロマンポルノ」だと思った
日刊SPA! / 2024年7月2日 15時50分
つまり、ロマンポルノ的資質とは、濡れ場を運動に変換する才能のこと。石橋静河もその系譜にある人で、変に淫らに身体を火照らせることなく、まずは物体として生々しくそこにある。官能的物体にトランスフォームする瞬間を今か今かとほとんど平常心で待ち構えているように見える。さすがの実力派である。それは例えば、伊藤健太郎との共演でリメイクされた『東京ラブストーリー』(2021年)でもきちんと折り目正しく、でもつややかに写っている。
同作では、『燕は戻ってこない』と打って変わり、東京の女性を演じている。第1話冒頭から吐息ダダ漏れのベッドシーンに挑み、その濡れ場のあと、東京の夜景が広がるホテルの窓の前に佇む赤名リカ(石橋静河)にカメラが寄り、「石橋静河」のクレジットとともにフワッと窓ガラスに顔が写る瞬間には、思わずゾクッとする(さすが三木康一郎監督の演出である)。
そう、石橋静河とは、やっぱりゾクッとする俳優なのだ。「キスしよっか」と涼しい顔してさらりと言ってのけ、『いちごの唄』(2019年)の笹沢コウタ(古舘佑太郎)同様に電子レンジの前で温めを待つ系男子である永尾完治(伊藤健太郎)を引き寄せる類似性。いざキスをすると、ちょっと微笑んだあとに、伊藤健太郎の下唇に自らの上唇を引っ付かせた高低差を爽やかなねっとり感で持続させてみせるという、したたかな細やかさは、石橋静河的な運動の豊かな変奏だろうか。ほんとゾクッとする。いや、ゾッとするくらい魅力的な才能の持ち主ではないだろうか?
<TEXT/加賀谷健>
【加賀谷健】
コラムニスト・音楽企画プロデューサー。クラシック音楽を専門とするプロダクションでR&B部門を立ち上げ、企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆。最近では解説番組出演の他、ドラマの脚本を書いている。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu
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