1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

「24時間、真っ暗な部屋から出られない」“眼球使用困難症”を患った50歳男性の告白。公的支援も受けられない

日刊SPA! / 2024年8月20日 8時51分

 発症当初は、電灯をはじめ、スマホやPC、テレビなどの人工光だけだった。しかし病状はしだいに悪化。徐々に太陽や月の光、自然光からも深刻なダメージを負うようになり、2021年1月には、人工光・自然光ともに目にすることができなくなった。そして2023年12月からは一歩も外に出ていないという。

 現在は、遮光カーテンを閉め切った完全に真っ暗な部屋で、アイマスクの上から、さらに顔全体を覆う遮光ドームを被せた状態で24時間過ごしている。

 眼球使用困難症の原因や治療法などは解明されておらず、患者数が少なく認知度も低いこともあってか、研究が進んでいないようだ。その結果、現時点では厚生労働省が定める「指定難病」に入っていないという。つまり、患者は行政からの公的支援が受けられないということ。妻の久美子さんが在宅ワークをしながら、矢野さんを付きっきりで支えている現状だ。

「病気そのものが、一般の方はもちろん、行政にも認知すらされていないのが実情だと思います。だから議論する対象にすらなっていないんです。そうなると、まずは知ってもらう努力をするしかないと思っています」

◆マイノリティな病気であることの辛さ

「自分の病気はマイノリティ・オブ・マイノリティ。共感してくれる人、苦しみを共有して励まし合える人が本当にいないんです」と、矢野さんは続ける。

「つい先日、YouTubeにコメントをくれた方が、どうやら似たような目の病を抱えていることがわかったんです。こういうとき不便だよね、つらいよね、という実感を共有できたとき、ふるえるほど嬉しかったですね」

 光が完全に遮断された、真っ暗な部屋で24時間。外には一歩も出られない。入浴も、光刺激がもっとも少ない真夜中の時間帯に、体調を見ながら妻の介助を得て入っているという状態だという。

「新型コロナが流行していたとき、ホテルで一週間隔離されてつらかった、というエピソードをよく耳にしました。ご本人は、たしかにつらかったのでしょう。でも僕は、『ネトフリ観られるんでしょ? スマホ触れるんでしょ?』と思ってしまいましたね。目がちゃんと使えて同じ状況になれるなら、5年隔離されてもいいくらいです」

 また、「先天的に目が見えないのか、後天的に目が使えなくなったのかの違いも大きい」と矢野さんは話す。

「そこにはまた、違った苦悩があると思います。しかも僕の場合は、症状が出だしてからまだ7年ほどですし、40歳を過ぎてからの発症だったので、健常者より耳や触覚が発達しているとか、そういうことはないです。いきなり真っ暗闇の中に放り込まれた、という印象が今も拭えないですね」

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください