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「降りろバカヤロー」停車中に中国人男性2人に囲まれてパニック急発進した被告人が“実刑判決”となったワケ

日刊SPA! / 2024年11月7日 8時52分

 さらに、Aは30代の中国人男性のCさんに対して、Aの車の右前方にCさんが立っている状況を認識しているのに、あえて発進して衝突させ、左ひざを打撲するなど全治1週間の傷を負わせた(傷害罪)。

◆誤想過剰防衛が成立しなかったワケ

 本当にAは、BさんとCさんから暴行・脅迫を加えられる危険が差し迫った状況だったのだろうか。両者食い違う主張について、江口和伸裁判長は判決で次のように認定した。

「(BさんとCさんは)車両の窓をノックし、ドアノブを引くなどしているものの、少なくとも強く叩くなどの行動はしていない。また、車両の窓は閉められ、ドアは施錠されていた。そうすると、(Bさんが)交通トラブルを起こした被告人に対し、ヒートアップして、怒鳴ったり大声を出したりしていたとしても、客観的に(BさんとCさんが)被告人に対して暴行・脅迫を加える危険が差し迫った状況にはなかったと認められる」

 Aは被告人質問で、Cさんが携帯電話で電話している相手が“ヤクザ仲間”だと勘違いし、「仲間が道具を持ってきて窓ガラスを割られて、連れ去られてしまうかもと思った」と弁解。

 しかし、江口和伸裁判長は「(Bさんが)ヒートアップして、怒鳴ったり大声を出したりしていたとしても、被告人が自ら110番通報をしたり、クラクションを鳴らすなど助けを求めることは容易だった」として、Aの弁解を退け、誤想過剰防衛は成立しないと結論づけた。

◆Cさんへの衝突も「暴行」と認定

 また、弁護側はCさんへの衝突について、Aが車を発進させようとした際に阻止するように、Cさんが突然飛び出してきたため回避はできないとして無罪主張をしていた。

 この点、判決では「被告人がハンドルを右に切るのとほぼ同時に、(Cさん)が進路上に進入してきた結果として、衝突したものと認められる」として、AがCさんに対して衝突させたことは認めがたいとされた。

 一方で、AはCさんが右前方で電話していることを把握していたことから、「(Cさんが)車両付近にいることを認識しながら、車両を発進させた」として、少なからず「暴行」の故意はあったと認定した。

◆裁判長は「強い非難に値する」と断罪

 そのうえで、江口和伸裁判長は、Aの犯行態様について「危険性が高く悪質なもの」と指摘。さらに、「犯行後も自ら警察に通報することなく、その場から走り去るなどしている点も含め、一連の行動から自己本位的な姿勢もうかがわれ、強い非難に値する」と断罪。示談が成立していることなどを考慮して、懲役5年(求刑:懲役7年)の実刑判決が言い渡された。

 偶然にも中国人同士に迫られた挙句に、犯行に及んだA。いずれにしても、Bさんをボンネット上から転落させてもなお、逃走したことは断じて許されないことだ。

文/学生傍聴人

【学生傍聴人】
2002年生まれ、都内某私立大に在籍中の現役学生。趣味は御神輿を担ぐこと。高校生の頃から裁判傍聴にハマり、傍聴歴6年、傍聴総数900件以上。有名事件から万引き事件、民事裁判など幅広く傍聴する雑食系マニア。その他、裁判記録の閲覧や行政文書の開示請求も行っている。

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