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中村敬斗と三笘薫の突破に見る、サッカーにおける「ブロックプレー」の有用性

日刊SPA! / 2024年11月15日 15時48分

フットサルはハンドボールと同じく縦40m×横20mのフロアコートで行われ、人数は5人対5人。サッカー同様足でボールを扱う球技だが、フットサルでは少なくとも10数年以上前から、流れの中でのブロックプレーが頻繁に使われている。世界トップレベルのブラジル、アルゼンチン、スペイン、ポルトガルといった国々のリーグはもちろん、日本国内のトップリーグであるFリーグにおいても、今では日常的にブロックプレーを見ることができる。

フットサルにおけるブロックプレーにも、ハンドボールなどの球技と同様にいくつかのパターンが存在する。最もシンプルなのは、中村と三笘の仕掛けのように、ドリブルする味方を援助するブロックだ。例えば、サイドから中央へドリブルで切り込んでシュートを狙う際などに、近くの味方がタイミングを合わせて相手マーカーの進行方向に入りブロック。ボール保持者がシュートを打てるスペースを作る。もちろん、中村と三笘のように縦突破をアシストするブロックも使われているほか、ブロックした選手がすぐに自ら前方のスペースに出ていく「ブロック&コンティニュー」と呼ばれる個人戦術も存在する。ブロックプレーに限らず、フットサルはこうした2人組、3人組の崩しのパターンが豊富だ。スペースが狭いこともあって、ハンドボールやバスケットボールといった他のインドア球技と似た戦術の進化を辿っており、局面次第で現代サッカーに取り入れられそうなものも多い。現に、2010年前後からサッカーでも広く知られるようになったポジショナルプレーの概念等も、フットサルではとうの昔から存在していた。

フットサルのボールはサッカーボールよりも弾みにくくできており、それ故にトラップやドリブル等のボールコントロールはサッカーボールよりも容易だ。ピッチも天然芝ではなくフロアのため、ボールがイレギュラーに弾むことも基本的にはない。必然的にボールを持った選手の顔が上がりやすくなるため、攻撃側がより緻密な戦術的連係を取ることが可能なのだ。そのあたりも、戦術の進化の早さに影響を与えていると考えられる。プレー環境や人数が異なる以上その全てがサッカーでも有効とは言い切れないが、これまでの流れを見る限り、フットサルで行われている戦術がサッカーでも出現する流れは、今後も続いていく可能性が高い。そういった発展性を考慮してか、鹿島アントラーズトップチームの鈴木隆二コーチ(元フットサル日本代表コーチ、元U-20フットサル日本代表監督)やヴィッセル神戸アカデミーの谷本俊介コーチ(元立川・府中アスレティックFC=現立川アスレティックFC=監督)のように、J1の強豪クラブの中でも、フットサル出身の指導者を現場に招聘する事例が出てきている。

サッカー日本代表の試合で、中村と三笘というタレントによって即興で行われたブロックプレーは、例えば10年後、再現性の高い戦術の1つとしてサッカーのピッチに浸透しているだろうか。そんなことをあれこれ想像しながら競技の進化を見届けていくのも、また一興である。

取材・文/福田 悠 撮影/藤田真郷

【福田悠】
フリーライターとして雑誌、Webメディアに寄稿。サッカー、フットサル、芸能を中心に執筆する傍ら、MC業もこなす。2020年からABEMA Fリーグ中継(フットサル)の実況も務め、毎シーズン50試合以上を担当。2022年からはJ3·SC相模原のスタジアムMCも務めている。自身もフットサルの現役競技者で、東京都フットサルリーグ1部DREAM futsal parkでゴレイロとしてプレー(@yu_fukuda1129)

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