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「障害は個性ではない」。吃音を持つ開業医が伝えたい“あきらめずに悪あがきすること”の重要性

日刊SPA! / 2024年11月19日 8時52分

◆吃音が克服できなくても…

――最後に、同じように吃音を抱える人に伝えたいことを聞いた。

北村:吃音が克服できたなら、それは、すごくラッキーなことだと思いますし、すごくうらやましく思います。しかし、私のように吃音が克服できなかった場合には、吃音を受け入れるしかありません。そして、人以上に努力するしかないと思います。そのうえで、「この道しかない」と思うのではなく、おそらく、だめだったときに備えて、2番目、3番目の道も残しておく、ということ、そして、あきらめずに悪あがきすること、が重要だろうと思います。あきらめれば試合終了ということもありましょうが、悪あがきすれば、拾ってくれる神はいらっしゃると思います。大学卒業時の進路選択でも、教授がひろってくださいました。悪あがきして留学先も見つかり、2か所の拠点で働くことができました。ロンドン大学の肝臓研究所に所属していた際、ボスがアメリカで研究室を立ち上げるとのことで、一緒に立ち上げを手伝ってほしいという打診があり、海外での研究生活継続のチャンスでしたが、普通に歩いていた父が突然の窒息事故と、その後のリハビリ中、テレビ報道もされた経鼻栄養チューブ誤挿入という医療ミスで急逝し、残された母のことや、その後の人生を考え、海外での研究生活を断念し、帰国する道を選択しました。この際にも、医局や先輩のおかげで臨床復帰することができ、さらに、同級生のおかげで内科では経験できなかった手技や知識を身に着けることができ、開業を選択する自信につながりました。

大学病院やがん専門病院の健診センターで研鑽した技術、診断能力をもって、相応の設備・装置を備えれば、大学病院やがん専門病院に負けない健診を受けていただけるのではないか、と健診と外来を併設したクリニックを立ち上げました。見落とし、医療ミスのないよう、注意しながら、自分がこの病気なら、家族がこの病気ならと考えながら、日々診療にあたるよう心がけています。

◆障害は個性ではない

――当初は吃音があることで、職業の選択肢が少ないと感じていた北村氏。

北村:私は、吃音があるから、職業の選択肢が少ないと感じていました。弁護士やアナウンサー、教職、営業職など、話すことが多い職業になるのは難しいと思いました。慶應義塾大学で助教時代に、教授から学生の講義を頼まれたことがありました。ポリクリという実習で数人の学生に簡単な講義をすることは何度かあったのですが、教授の代理での学生の授業となると、ちょっと違ってきます。録音してスライドを流す方法、説明内容を事前にまとめて配布する方法も考えましたが、結局、お断りすることにしました。できると信じて振ってくださった教授のためにも、チャレンジするべきだったのかも知れませんが、度胸がありませんでした。留学する前や帰国した際には、某大学のスタッフポジションを準備していただいたこともあったのですが、これも辞退してしまいました。とにかく、他のドクターよりも努力しないと認めてもらえませんでしたが、正直、できることの限界も感じました。吃音は、日常の私生活だけでなく、社会生活でも、大きな壁となっています。『障害は個性だ』と言う人には、あなたがなってみなよと思います。吃音は、『個性』で片付くような簡単なものではありません。健常者より努力するしかない、と小さい頃から感じていました。私の場合、それがたまたま勉強でした。それぞれの人が、得意なことで武器を作るしかないと思っています。

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