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「心が折れる」という言葉を作ったのは神取忍だった。発言の背景には「怪我をさせたらダメ」という前提が

日刊SPA! / 2024年11月20日 8時52分

「心が折れる」という言葉を作ったのは神取忍だった。発言の背景には「怪我をさせたらダメ」という前提が

―[ヒット商品&サービス「はじまりの物語」]―

どんな物事にも始まりがある。そしてそこには、想像がつかない状況や苦労も。商品やサービスだけでなく、「言葉」にも始まりの瞬間はある。例えば「心が折れる」。今では当たり前に使われる言い回しだが、現在の意味で初めて使ったのは、女子プロレスラーで元参議院議員の神取忍氏だ。誕生にはどんな裏側があり、流行をどう見ていたのか。そして、生みの親が語る「心が折れない秘訣」とは?
◆「心が折れる」発言を振り返る

話は1987年までさかのぼる。格上であり因縁もあった相手ジャッキー佐藤に勝利を収めた後、ノンフィクション作家の井田真木子氏が行ったインタビュー内で、神取氏は「あの試合のとき、考えていたことは勝つことじゃないもん。相手の心を折ることだったもん」と述べている。

それまで「心変わりする」に近い意味で使われることが多かった「心が折れる」という言葉。だが、この時の神取氏の発言が、現在使われている「心の拠り所を失う」といった意味で始めて使われたとされる。

肉体をぶつけ合う競技であるプロレスにおいて、なぜ心を狙っていたのか。

「プロレスラーの大前提として相手に致命的な怪我をさせたらダメでしょ。そのなかでどうやって相手に勝つかとなると『心』を狙うことになるよね」

◆柔道で「心技体」を学んだ

格闘技における心の重要性を、身に染みて理解していたことに由来するのかもしれない。

「私は柔道からプロレスに来たんだけど、日本の武道では『心技体』と言われるよね。どんなに技が豊富で体が強くても、心が強くないといけない。それを柔道を通して学んで来たの。例えば、同じくらいのレベルの選手との対戦でも、心が弱いと負けてしまったり、逆に心を強く持てたときに勝つことができたという経験がたくさんあったからね」

では、心を「砕く」でも「壊す」でもなく「折る」と捉えたのには、どんな理由があるのか。

「格闘技をやっている人間の感覚的なものじゃないかな。『砕く』や『壊す』より『折る』のほうが『一本!』という感覚」

◆なぜ10数年経ってから流行したのか

この「心を折る」の発言があったのが1987年で、同インタビューの内容が掲載された井田真木子氏の『プロレス少女伝説』(かのう書房)が発売されたのが1990年。90年代前半、筆者はすでに物心がついていたが、「心が折れる」という言葉が一般化していたかというと、そうでもない。神取氏本人も同じ感覚のようだ。

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