J2優勝“翌シーズン”にJ1優勝争いのFC町田ゼルビア。黒田監督が「たった2年でトップチームに押し上げた」2つのこと
日刊SPA! / 2024年11月30日 8時52分
これに答えはありませんので、それぞれの戦力や力関係、試合状況をよく考察し志向していくことが大切だと思います。
水野:勝ったり負けたりを繰り返すような考え方よりも、負けないことに注力することで勝てるゲームを増やしていかれたのですね。
黒田:おっしゃる通りです。「勝つ」ではなく「負けない」というのは、一般的な組織でも大事な考え方だと思います。何より、「負けなかった」というマインドは、「自分たちがやってきたことが間違いではなかった」という裏付けになり、自信になります。「この方法が最適なんだ」と選手全員が思えれば、おのずと勝ちは見えてくるのです。
◆◆必要な時に必要なだけ。「栄養」となる言葉を与える
水野:もうひとつ、黒田監督のマネジメントの手腕は戦略や戦術などの「伝え方の上手さ」にあるといわれています。選手たちに声がけをする際、気を付けていらっしゃることはありますか?
黒田:自分の感覚では普通のことなんですが、さまざまなチームを経験してきた選手から「話がわかりやすい」「一番しっくりくる」と言ってくれているようです。もしかしたらそれは長年、教育者として伝わりやすい授業を探求し、サッカー部監督としてひたすら勝利を追求してきたからかもしれませんね。
気を付けていることといえば、話す「タイミング」と「伝え方」の2点です。特に若い世代は一方的な伝え方に対してアレルギー反応を示すので、絶対に押しつけのような伝え方はしません。
選手たちが納得できるタイミングがいつか、それを見計らうこと。そして、適切なタイミングに「必要な分だけ」伝えるようにしています。
水野:たとえるなら、釣りをする時、魚がお腹を空かせていない時間帯に釣りをしても意味がないというのと同じですね。
黒田:ええ、まさにそうです。魚がお腹を空かせていない、餌を欲しがっていない時に釣り糸を垂らしても、魚は食いつきません。
自己評価としては「長時間釣りをした」という自負はあるし、頑張ったという満足感はあるかもしれません。しかし現実は、魚は食いつきませんし、結果は一匹も釣れていないのです。
それでは意味がありませんよね。むしろ、魚が空腹のタイミングを見定め、その時間や状況に合わせて釣り糸を垂らすこと。そうすれば、短時間でも成果が得られます。
水野:タイミングは見計らえても、「必要な量だけ話す」というのが意外と難しいと感じます。このあたりはどうとらえていらっしゃるのでしょうか。
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