ソニーがKADOKAWAの筆頭株主として狙う「IP強化」とは? 投資家が注目すべき3つのポイント
日刊SPA! / 2024年12月27日 8時52分
第三のポイントは、「非中核事業の扱いとリスクマネジメント」です。KADOKAWAは出版・映像・ゲーム・アニメといったメディア関連以外にも、ドワンゴとの統合による教育事業(N高、S高)や、ニコニコ動画など独自色の強いサービスを有しています。もしもソニーグループに加わった場合、これら非中核的な事業の整理や再編が行われる可能性があります。
なぜなら、ソニーはグループ全体の収益性やシナジーを重視するため、シナジー効果の薄い事業には容赦なくメスを入れることが予想されるからです。また、KADOKAWA側が過去に経験したサイバー攻撃による情報流出事件などのリスク管理も求められるでしょう。仮にソニーの買収によりKADOKAWAの上場廃止(非上場化)が実現した場合、一般株主にとっては買収時点での株式売却や、上場廃止後の対応が課題として残っています。
今後、非上場子会社となったKADOKAWAが、どの程度独立性を保ちながらクリエイティビティを発揮できるのかは不透明です。経営の自由度が低下する可能性はある一方、豊富な資本とグローバルネットワークを活用してIPをさらなる高みへ引き上げるチャンスでもあります。
投資家としては、こうした買収後の事業整理とリスク対応に関するシナリオも頭に入れておく必要があるでしょう。
◆「知的財産(IP)を制する者が市場を制す」時代へ
世界的に知的財産(IP)の価値は上昇の一途をたどっています。ディズニーがマーベルやルーカスフィルムを傘下に収め、ユニバーサルやワーナーも有力IPを囲い込んでいます。NetflixやAmazon Prime Videoなどの配信大手は自社オリジナルIPの量産に注力することで、グローバルな視聴者に絶えずアピールし続けているのです。
その中でソニーはゲームや音楽分野では確固たる地位を築いてきたものの、原作IPの発掘や育成においてはさらなる強化余地がありました。KADOKAWAは国内有数のIP源泉として、次々と新たなコンテンツを生み出しています。ソニーとKADOKAWAが組み合わされば、新たな和製IPがグローバル市場で花開く可能性が高まります。
もちろん、買収成立までには価格交渉や規制当局の承認、ドワンゴや教育事業との関係整理など、解決すべき課題が多く残されています。また、買収報道後のKADOKAWAの株価急騰は期待先行の面もあり、今後の続報や正式発表によって相場が揺れ動く可能性は十分あります。しかし、長期的な観点に立てば、ソニーがIP強化を通じて世界市場での存在感を増し、日本のコンテンツ産業がさらなる成長段階へ移行する契機となるかもしれません。
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