尚弥と実現!大橋会長、悲願東京D興行 ジム開設30年の節目に“集大成”4大世界戦
スポニチアネックス / 2024年5月7日 4時56分
◇プロボクシング4団体統一世界スーパーバンタム級タイトルマッチ 〇井上尚弥 TKO6回1分22秒 ルイス・ネリ●(2024年5月6日 東京ドーム)
タイソン戦、そして自身が初めて世界王者となってから34年。大橋ジムの大橋秀行会長(59)が東京ドームで日本初の4大世界戦を成功へ導いた。冬の時代を乗り越え、井上尚弥と出会い、ジム30周年の節目の年に実現したビッグマッチ。プロモーターとしての苦悩や“モンスター”への思いを明かした。
WBCのダイヤモンドベルトを井上尚から贈られた大橋会長は目を赤らめて万感の思いに浸った。94年のジム開設から30年。節目に大橋会長が歴史的な興行を実現させた。「34年前にタイソンを見て僕も東京ドームでやりたいと思った。リカルド・ロペスに雪辱した気持ちです。ありがとう!」。自身が王座陥落した34年前の試合を引き合いに、愛弟子の勝利に感謝した。
90年2月7日、東京ドームの目と鼻の先にある“聖地”後楽園ホールで、日本ジム所属ボクサー世界挑戦21連続失敗の不名誉な記録を止めたのが当時24歳の大橋会長だった。ストロー級(現ミニマム級)で世界王座を獲得した4日後、リングサイドで“世紀の番狂わせ”を目撃。「タイソンが凄い負け方をしたのを目の前で見た。後楽園ホールも凄い熱気だったが、東京ドームは比べものにならない雰囲気だった」。圧倒された一戦後、記者に囲まれると「防衛を重ねて必ず東京ドームで防衛戦をやります」と誓った。
2度目の防衛戦で敗れ夢はかなわなかったが、鬼塚勝也、辰吉丈一郎らが台頭。国内ボクシング人気が高まったのもつかの間、バブル崩壊の波にのみ込まれた。「ボクシング人気もがくっと落ちた。僕も92年に王者に返り咲いたけれど、2度目は金銭面でも全然違った。俺もバブルの被害者だよ(笑い)」。以降はK―1などの他団体に格闘技の主役を奪われた。ボクシング人気の再燃を願っていた12年、ジムに入門してきたのが井上尚だった。
「横浜高校の後輩に松坂大輔という“怪物”が現れて、うちにも“怪物”来ねえかな、と思っていたところに尚弥が来た。怪物を英語に言い換えてモンスターと言い出したのは僕。待ち望んだ選手が来たんだと喜んだ」
その井上尚とは不思議な縁を感じていた。「93年2月10日が僕の最後の試合。選手生命を終えたその2カ月後の4月10日に、尚弥が誕生した。それを知った時から運命的なつながりを感じていた」。現役時代に目標としていた世界3階級制覇やパウンド・フォー・パウンド(PFP)入りなど、全てを成し遂げた愛弟子。今回の興行を開催するにあたり、「失敗できないプレッシャーもあったし、毎日が勝負で、ドキドキの連続。夜中に突然目が覚めることもあった」というが、「尚弥は東京ドームで世界戦までやってのけた。夢を見させてもらっている感覚」と感謝する。
現役時代の師匠である元ヨネクラジム会長の米倉健司氏からの言葉を改めてかみしめている。「僕は米倉会長から“150年に1人の天才”と言われていた。今思うと、選手としてではなく“150年に1人の会長”、そういう意味だったと思っている」。一緒に歩んできた選手には、これからもずっとそばに寄りそうつもりだ。「尚弥にはこれからも自分のやりたいように道を切り開いていってほしい。それをいつまでも全力でサポートしたい」。東京ドームはゴールではない。会長としての夢はまだ続く。
◇大橋 秀行(おおはし・ひでゆき)1965年(昭40)3月8日生まれ、横浜市出身の59歳。中学からボクシングを始め、横浜高2年時に総体優勝。85年2月にヨネクラジムからプロデビューし、90年にWBC世界ストロー級(現ミニマム級)王座、92年にWBA世界同級王座を獲得。プロ通算戦績は24戦19勝(12KO)5敗。引退後の94年に大橋ジムを開設。愛称は「150年に1人の天才」。
≪90年は辰吉らが前座≫東京ドームでのボクシング興行は過去、88年と90年の2度しかなかった。90年の興行の前座には元WBC世界バンタム級王者・辰吉丈一郎ら日本人選手も出場。辰吉はその後、スターへの階段を上り、99年8月に大阪ドーム(現京セラドーム大阪)でWBC世界同級タイトルマッチを行った。ウィラポンに敗れ、王座から陥落したが、メインイベンターとして2万7000人の観客を集めた。
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