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【内田雅也の追球】ケロッとできるか。

スポニチアネックス / 2024年5月12日 8時1分

<D・神>3回、佐藤輝の打球は中前に落ち、適時打となる(投手・中川颯)(撮影・大森 寛明)

 ◇セ・リーグ 阪神9―11DeNA(2024年5月11日 横浜)

 敗戦後、帰りのバスに向かう阪神監督・岡田彰布に「明日以降に引きずらないことですね」と声をかけた。「へっ」と笑った。「明日、何ごともなかったかのようにプレーして……」には、また「へっ」と笑った。

 「当たり前のことを言うな」と顔に書かれていた。「そんななぐさめの言葉はいらんよ」とも書かれていた。

 9―2の大量7点リードを9―11と逆転されての敗戦だった。

 問題は横浜スタジアムに吹き荒れた強風だった。美しい青空の晴天だったが、春の嵐のように強い風が吹いた。いつものように、近くの山下公園や横浜港から吹く「ハマ風」ばかりでなく、風向きはしょっちゅう変わった。右に左に、打者有利の追い風が吹いていた。

 阪神は前半、近本光司の左前テキサス性二塁打(2回表)や佐藤輝明の中前ポテン適時打(3回表)など、風で目測を誤った相手拙守による幸運が相次いだ。

 神奈川県に強風注意報が発令されたのは中盤5回裏だった。この頃から風は阪神にそっぽを向いた。外野手の頭上を越える長打を浴びた。

 2点リードの8回裏には岩崎優が蝦名達夫に同点2ラン、筒香嘉智に決勝ソロを浴びて沈んだ。風にも乗った強烈な2発だった。必勝継投も風で吹き飛んでしまった。前半は風に笑い、後半は風に泣いたわけである。

 大げさに書けば、ペナントレースの流れをも左右するかもしれない負け方である。精神論で言えば、単なる1敗だととらえることができるかどうか。これもまたプロとして大切な資質だろう。

 こうした時、西本幸雄の言葉を思い出す。阪急、近鉄を球団創設初優勝に導いた闘将は「カエルの面(つら)に小便」と言った。「すると、カエルは何と鳴く?」と言う。「ケロッ」である。「ケロッとしておけ」というわけだ。

 あの苦虫をかみつぶしたような難しい顔をしている西本も内情はユーモアでチームを立ち直らせる術(すべ)を持っていた。

 岡田もこれまでよく、痛恨の敗戦の後「何を深刻な顔して落ち込んでるんや」と周囲に話していた。「そんな顔するな。雰囲気が暗くなる」と努めて明るく振る舞う。

 顔を洗って出直したい。きょう12日、何ごともなかったかのように、ケロッとして臨みたい。 =敬称略= (編集委員)

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