5分の充電で約160km走行を実現。StoreDotの超高速充電バッテリー、EVの航続距離・充電時間の課題克服へ
Techable / 2024年2月26日 12時0分
ITの進化により、世界各国でスマートフォンやEV車などバッテリーへの需要が高まるなか、イスラエルのスタートアップStoreDotは、バッテリー業界のゲームチェンジャーとして注目されている。
同社は充電式バッテリー技術への画期的なアプローチにより、さまざまな用途での超高速充電の技術を確立した。
StoreDotの技術のなかで有名なのが、超高速充電(XFC)バッテリーだ。この充電技術は、現時点でわずか5分の充電で約160km、フル充電で468kmの走行が可能で、同社の公式サイトで公表している走行距離は日々更新されている。
2023年9月には、StoreDotがスウェーデンの自動車メーカーVolvoとの複数年契約を締結し、同社の超高速充電バッテリーをVolvoの次世代EV向けに最適化すると発表した。
各分野に精通した3人の研究者が設立StoreDotはドロン・マイヤーズドルフ博士、サイモン・リッツィン教授、ギル・ローゼンマン教授の3人の研究者を中心に、2012年に設立された。
CEOのマイヤーズドルフ博士は、イスラエル工科大学で研究開発管理の理学士、情報システムの修士号、産業エンジニアリング管理の理学士を取得した人物。
これまでシリコンバレーのセキュリティソフトウェア会社の創設者兼CEOや、SanDisk SSD ビジネス ユニット(NASDAQ:SNDK)のシニアディレクターを務めた経歴を持つ。
マイヤーズドルフ博士が持つマーケティングや事業開発、テクノロジー管理のスキルと、リッツィン教授の電気通信分野での豊富な経験、ローゼンマン教授のナノテクノロジーと材料科学の知見が同社の最先端技術の基盤となっている。
短時間で充電可能&長寿命な電池技術StoreDotは、将来のモビリティの最大の問題である航続距離の不安を克服するためにナノテクノロジー、有機化合物、AIを組み合わせている。
シリコンを独自の低分子有機化合物と合成し、バッテリー充電時の体積膨張、エネルギー減衰の問題、卓越したレート能力の制限、安全性の向上など、変化に耐える強力な活性材料へと進化させた。
この技術の秘訣は分子組成とナノ粒子の統合にある。そして、厳密な機械学習とAIベースのデータサイエンスを活用した10年にわたる研究開発プロセスを経て、超高速充電バッテリーが生まれた。
この高速充電の技術は、従来の内燃エンジン車の燃料補給と同じ時間で電気自動車へ充電できるよう設計されている。現時点では5分の充電で約160kmの走行が可能だが、2026年には4分、2028年までに3分で約160kmの走行を実現できるよう、生産準備を進めているようだ。
そのほか、従来のリチウムイオンバッテリーの数分の一の時間でフル充電に達することが可能で、急速充電の際に起きる蓄電量のロスが少ないのも魅力だろう。
現在StoreDotはバッテリーのライフサイクルの延長や、既存のリチウムイオン生産設備を使用して製造できるような設計など、運用や製造インフラの面まで考慮し開発を続けている。
自動車業界や家電メーカーが続々投資StoreDotの技術を積極的に導入している主な顧客は、現在のバッテリー技術の限界を克服しようとしている電気自動車や家電製品のメーカーが中心だ。前述のVolvoを筆頭にMercedes-Benz、Volkswagen、BP、TDKなど名だたる企業がパートナーとして名を連ねており、自動車業界やエレクトロニクス業界の大手企業から多額の投資を獲得している。
効率的で急速充電が可能なバッテリーの需要は高まる一方であり、StoreDotの将来は明るいと予想される。同社はバッテリーの大量生産に向けて取り組んでおり、今後数年以内に商業生産を開始する予定だ。
参考・引用元:StoreDot 公式サイト
(文・HAYASAKA)
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