TJ手術2度、両膝の靭帯負傷…ドジャース37歳投手から日本の球児へ「競技を愛するなら頑張るんだ」
THE ANSWER / 2024年4月28日 9時13分
■ドジャースのダニエル・ハドソン
米大リーグ・ドジャースは25日(日本時間26日)まで、敵地でナショナルズとの3連戦を行った。中継ぎ右腕ダニエル・ハドソン投手は2試合に登板。ともに1イニングを投げて2ホールドを記録し、ドジャースの連勝に貢献した。キャリアで何度も大怪我に見舞われた37歳。それでもマウンドに立ち続ける理由を聞いた。(取材・文=THE ANSWER編集部・土屋 一平)
◇ ◇ ◇
「この年齢になれば、日によって体調は変わるね」
シューズが几帳面に揃えられた背番号41のロッカー。身長191センチの大男がウォーミングアップの準備を進めていた。右膝には黒いサポーター。声をかけると、快く取材に応じてくれた。自己紹介し、握手した右手は大きく、分厚い。苦労と経験がぎっしりと詰まっていた。
23日(同24日)、ナショナルズとの3連戦初戦。ハドソンは、2021年まで所属した古巣の本拠地で口元を緩めた。「移籍してからここに帰ってくるのは3度目なんだけど、見慣れた場所で見慣れた顔に会うのはいつだっていいものだよ」。負傷者の多いドジャース投手陣。今季12試合に登板し、防御率3.00で1勝1敗、6ホールド、1セーブを記録したベテランの存在は心強い。
平均95マイル(約155キロ)を超える直球を軸に、年齢を感じさせない投球を続ける。メジャー15年目。そのキャリアは、決して順風満帆とはいかなかった。
2008年にドラフト5巡目でホワイトソックスに入団。翌年メジャーデビューを果たした。10年にダイヤモンドバックスにトレード。翌年は先発として16勝を挙げた。しかし、12年に右肘を負傷。トミー・ジョン(TJ)手術を受けた。復帰を目指した翌シーズンは、リハビリ中に再び右肘を負傷。2年連続でTJ手術を強いられた。
「正確には覚えていないけど、『これはマズい』と思ったのは覚えている。どれほどの負傷かはわからなかったけど、(痛みを感じたのが)1度目の負傷箇所にとても近かった。たくさんの選手が完治する前に再び負傷する、といろんな人から聞いていたんだ。ポジティブにいようと努めていたけど、酷い怪我だとはすぐにわかったね」
投手生命が危ぶまれる大怪我を乗り越え、14年にリリーフ投手として復帰。その後、パイレーツ、ドジャース、ブルージェイズを経て19年にナショナルズに移籍した。この年、救援の柱として躍動。アストロズとのワールドシリーズ第7戦では9回に登板し、胴上げ投手になった。キャリア最高の歓喜の瞬間。オフには2年総額1100万ドル(約17億円)で契約延長した。
“MLB最大の名誉”を手にしたハドソン。しかし、その後に待っていたのは、また苦難だった。
■マウンドに立ち続ける理由とは
パドレスを経て22年シーズン前にドジャースに移籍。25試合で防御率2.22をマークしたものの、試合中に左膝前十字靭帯を断裂した。翌年復帰したが、3試合目に今度は右膝靭帯を損傷。早々とシーズンを終え、両膝に不安を抱えた36歳でフリーエージェントとなった。
「2度目のTJ手術から膝の靭帯断裂まで10年間くらいあった。その分、体も老いているわけで、リハビリでも25歳の時のように体は反応してくれなかった。痛みが残っていた中で無理に出場したことで、逆の膝も傷めてしまったんだ」
今季はマイナー契約でドジャースに復帰。春季キャンプの好パフォーマンスで開幕ロースター入りを掴んだ。なぜ、過酷なリハビリと向き合い、復帰ができたのか。
「競争が好きだし、野球が好きなんだ」
淀みなく、シンプルな答えが返ってきた。しかし、引退後も人生は続く。年齢を重ねれば、古傷は日常生活に支障をきたす場合もある。それでも、マウンドに立ち続けるハドソンの目標は「またワールドシリーズを制覇すること」。強い決意の裏には、ドジャースへの恩返しの気持ちがあった。
「怪我がありながらも、この球団は僕と家族に良くしてくれた。復帰を決断した時もチャンスをくれたから、それに報いたいんだ。健康なシーズンを過ごしてプレーオフに進出し、ワールドシリーズ制覇が究極の目標だね」
しっかりとこちらの目を見つめ、落ち着いた口調で明かしてくれた。酸いも甘いも、自らの身をもって体験してきた野球人生。今、怪我に悩む日本の球児たちへ、こんなアドバイスを送ってくれた。
「怪我しても続けたいほどその競技を愛しているのであれば、頑張り抜くことだ。怪我を克服した先で振り返ると、苦労した時間に感謝することもできると思うよ」
こんなに説得力のある言葉はない。取材の感謝を伝えると、椅子に座りながらシューズの靴紐を締めた。ドジャーブルーの帽子を被った不屈の中継ぎ右腕。大谷翔平も夢見るワールドシリーズ制覇へ、この日も颯爽とグラウンドへと向かって行った。(THE ANSWER編集部・土屋 一平 / Ippei Tsuchiya)
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