井上尚弥、消極的ライバルたちに嘆き「寂しい」 最強ゆえの功罪「フェザー級に上げるしか…」
THE ANSWER / 2024年9月5日 6時33分
■一夜明けて会見
ボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)は4日、4団体防衛から一夜明け、神奈川・横浜市内の所属ジムで会見した。前夜は東京・有明アリーナで元IBF世界同級王者TJ・ドヘニー(アイルランド)に7回0分16秒TKO勝ちしたが、相手の棄権で消化不良に。消極的な相手が目立つ現状を嘆いた。
強くなりすぎたゆえの功罪なのか。強打が売りと目されたドヘニーは前半から後ろ重心。対モンスターなら守勢に回るものだが、消極的と捉えられても仕方ないスタイルだった。井上が徐々に攻勢を強めた7回、左ボディーなどで連打を入れると、腰を押さえながらノロノロとダウン。TKOが決まり、まさかの幕切れとなった。
一夜明け、井上は「フィニッシュシーンは少し不完全燃焼のところもある」と吐露。攻めに出ない対戦相手が目立つことに「そういうスタイルになるのは仕方ない」と受け入れつつ、「そこを自分がどう倒すか(という見方に)しかならない。ただ日本に来て、高いファイトマネーを受け取って、倒されないで終わろうという考えであれば寂しいですよね。自分はやっていてつまらない」と漏らした。
本来ならどの相手も世界トップレベルのはずだが、井上を前にするとアンダードッグに映ってしまう。名勝負は強いライバルがいないと生まれない。ヒリヒリとしたボクシングの魅力を届けたくて汗を流してきたが、現状を嘆く。
「ボクシングは相手あってこそ盛り上がるかどうかのスポーツ。相手が塩(試合)に徹したらそりゃそうなりますよ」
昨年12月に倒したマーロン・タパレス(フィリピン)も後ろ重心を徹底。「ドヘニーはもっと来ると思った。タパレス戦を参考にしたんじゃないですか。明らかにタパレス戦はオフェンス面で(自分の)ミスが結構あって、それに比べてネリ戦はかみ合っていた。そうしたらタパレス戦を(参考に)チョイスするんじゃないですかね」と分析した。
会見では、この試合で行っていた新たな試みも説明した井上【写真:中戸川知世】
■「あと何ができるか。フェザー級に上げるしかないんですよ」
スーパーバンタム級でも対戦相手が減りつつある状況。海外からは早期のフェザー級転向を望む声がある。井上自身はこれまで通り慎重な姿勢を貫きつつ、今回は前日計量から過去最重量62.7キロまでリカバリー。先を見据えてのことだった。
「(フェザー級転向の)カウントダウンというほどではない。残りのキャリア的に逆算すると、この辺りなのかなとなんとなく(想像できる)。あと10年もできる競技じゃない。限られた中で逆算しないといけない。ドヘニーが10キロ以上戻すことにも理由があって。ドヘニーとはもともとスピード勝負はしないじゃないですか。だから、自分が8キロ増やして少しスピードが落ちても対応はできる。そういう計算で増やしました」
体に少しだけ重さを感じたリング。「出来は悪くないですよ。これが本当に名勝負と言われる試合、紙一重の試合になった時にその数百グラムが左右するくらいの感覚ですね」と新たな試みに意味を見出した。
陣営の大橋秀行会長は「前人未踏のことをやるのが井上尚弥の役目」と今後に期待。井上も「まだまだやれることがあればやりたい」としつつ、「やる以上はそういうものに挑戦していくかと言っても、あと何ができるかという話。フェザー級に上げるしかないんですよ」と複雑な想いを明かした。
「そこは慎重にいきたい。1年半、2年後のその時の体にならないと、どうなるかわからない。2年経ってもスーパーバンタム級でできるならやるし。今の逆算的にそう(フェザー級の体に)なればと計画を立てているだけ」
次戦は12月に都内でWBO&IBF1位サム・グッドマン(オーストラリア)が最有力。来年は米ラスベガス開催が計画され、指名挑戦権を持つ元WBA王者ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)が有力候補に挙がる。「どのみちどっちともやるんで心配しないでください! 次がアフマダリエフになろうが、グッドマンになろうが、いずれやるんで」。全員倒すことに変わりはない。(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)
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