年齢を理由に諦める人も…ペットも高齢者も幸せに 犬の保護団体が広げる選択肢 変わる社会の取り組み
東海テレビ / 2025年1月11日 12時10分
ペットとともに老後を過ごしたいと望む高齢者は増えているが、健康上の理由や自分が死亡した後のことを考え、飼うことを諦めるのが一般的だった。しかし、ペットも一緒に住むことができる高齢者住宅や、高齢者でも保護犬のもらい手になることができる新しい取り組みもあり、選択肢が広がりつつある。
■年をとっても一緒に…ペットと暮らせるサ高住も
岐阜県岐阜市に2023年12月にオープンした、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)「えん岐阜PLUS」。入居者の部屋を訪ねると、賢そうな犬が出迎えてくれた。ここは「ペットと暮らせる“サ高住”」で、東海地方では初めてだという。
2024年5月に入居した佐藤延子さん(81)は、ここでシェットランドシープドッグの『シエル』と暮らしている。
子供のころから犬が家にいるのが当たり前という犬好きだが、これまでいた高山市の介護施設では寂しい思いをしてきた。
入居者の佐藤延子さん:
「サ高住っていう施設はほとんどが動物禁止している、今回東海地域で初めてペットと一緒に暮らせるという建物を造られたってのが新聞に広告が出ていましたので。かねて、そういうところを探してたもんですから、やっと昔の生活に戻ったような感じで、私としては非常に満足しております」
「えん岐阜PLUS」には広いドッグランもあり、入居する6人のうち、2人が愛犬と一緒に生活している。
単にペットの飼育ができるだけでなく、動物看護士が常駐し、住人が犬の面倒を見られなくなっても寿命を全うするまで代わって世話をする。
運営会社の斉藤伸宏社長はペットと暮らす“終のすみか”にニーズがあると考えたという。
「えん岐阜PLUS」運営会社の斉藤伸宏社長:
「全国の都道府県の中で東海3県は、ペットの飼育率って高いほうやったんですよ。一番この近辺で高いのは三重県、そして岐阜県、愛知県っていうことで、全て10位以内に入っておりましたから、高齢者が先にお亡くなりになられたり、ワンちゃん自体が高齢化なってくるっていうことあるから、そのあたりをずっとフォローできるような体制ということで安心感を持って過ごしていただくと」
10月に三重県松阪市から移ってきた大井美津子さん(82)は、雑種の「はるちゃん」と暮らしている。
はるちゃんはすでに15歳の“おばあちゃん”だが、大井さんにとっては子供のような存在だ。
入居者の大井美津子さん:
「私子供いやへんもんで、叩いたり怒ったりってそんなんやなくて『はるちゃん、はるちゃん』って育てたら優しい子になったんです。本当に出来る限り。大事に大事に育てとると、死んだときに悔いがないっていうか、だからはるちゃんにもできるだけのことをしたい」
■ペットを死ぬまで飼うことは動物愛護法でも“努力義務”に…諦める高齢者たち
少しでも長く愛するペットと一緒の生活を続けたいと思う人は少なくないが、ペットOKの施設はまだ少なく、まとまった費用も必要になる。名古屋で高齢の愛犬家に話を聞くと、ペットを飼い続けることに不安の声も聞かれた。
72歳女性:
「(愛犬は)6歳です。自分も健康で元気でこの子のために、最期まで一緒に寄り添って自分が看取ってあげたい」
78歳男性:
「やっぱり犬は好きですから、昔から犬はずっと飼っています。年齢が年齢ですのでもうちょっとこれ以上飼うのはやめようかなと思います」
63歳男性:
「この犬が亡くなったら、そのあとは人間の寿命がそんなにないもんですからね、ペットは飼えなくなるかと思いますけど」
ペットの犬や猫の平均寿命はおよそ15年といわれている。
動物愛護法でもペットが死ぬまで世話をすることが飼い主の努力義務とされていて、新たなペットを迎えること諦めるシニアも多く、実際に高齢のためペットを手放さざるを得ないケースもある。
■飼いたい人も飼えない…ペットの里親探しに「年齢の壁」
名古屋市守山区にある犬の保護団体「DOG DUCA」(ドッグデュッカ)に、5歳のミックス犬のレオがやってきた。飼い主の74歳の男性にすい臓がんが見つかり入院し、行き場をなくしたという。
飼い主の男性の娘:
「父は本当は飼いたいんですけど、いつ戻れるかわからないし、帰ったところでレオの体力に付き合ってあげられない。まだこれから10年、15年とレオの人生があるので、父のことも忘れないでほしいですけど」
この団体でもペットを保護するケースが急増している。そのうち約6~7割が高齢の飼い主が入院したり、施設への入所、飼い主の死亡や、置き去りになっていた例という。
また、保護したペットの新しい飼い主を探す活動をする団体は各地にあるが、里親探しでも「年齢」はネックとなっている。
ほとんどの自治体で高齢者への保護犬や猫の譲渡は認めておらず、多くの民間団体も万が一の時にペットを引き受ける「後見人」が必要などの条件をつけている。
「DOG DUCA」の高橋忍さん:
「保護したいという形で譲渡会に行かれても、やっぱり65歳以上だと断られてしまうというのが大半なんですね。保護できなければ、もう一度ペットショップで(子犬を)買ってしまうってことが起こってしまうんです。そうすると(先に飼い主が亡くなり)犬がどうしても残ってしまう」
■ペットも高齢者も幸せに…『シニアドッグサポーター制度』
もらい手が見つからない犬たちと、飼いたくても飼えない高齢者。高橋さんはどちらも幸せにしたいと、独自の取り組みを始めた。
2019年に始めた『シニアドッグサポーター制度』は、新しい飼い主が見つかりにくい10歳前後の犬を、所有権は「DOG DUCA」が持ったまま、犬の飼育経験があり、健康の問題がないシニアに預ける仕組みだ。
名古屋市天白区で1人暮らしの梅澤佐知子さん(75)は高齢のため、犬を飼うことを諦めていたという。
梅澤佐知子さん:
「前は(飼っていたのが)ビーグルで、その前が柴犬だった。(犬が)死ぬと悲しいじゃないですか。『こんな辛い思いはもう嫌だ』とか思うけど、やっぱりまた欲しくなっちゃう。でも自分の年齢を考えたら子犬を飼うなんてできない」
犬が大好きな梅澤さんが「DOG DUCA」の制度を使って5年前に迎えたのが、当時推定8歳だったトイプードルのミコだ。
梅澤さん:
「もう無理だと思っていたから。『DOG DUCA』が最後の砦だった。あそこしかないんですってね、『シニアサポーター制度』っていうのが」
「DOG DUCA」の高橋忍さん:
「高齢者が万が一飼えなくなった場合は、ここへもう一度戻していただきます。決して寂しい思いをもう1回するってことはありません。6年になりますけれども、約80頭の犬たちがシニアドッグサポーター制度で里親の元へ行っています」
ミコは梅澤さんの家にきて間もなく、治療法のない脳の病気が見つかったが、月に一度の通院と毎日の薬を飲みながら穏やかに暮らしている。
梅澤さん:
「私みたいな年寄りだと、生きがいがないといい加減になっちゃうじゃないですか。この子と一緒にいると、いろんな種類の犬とも仲良くなれるし、友達もランチしようかってことになるしね、すごい楽しい。かけがえのない、娘よりも大事かもしれない。ごめんねこんなこと言っちゃった」
高齢者とペットの関係について、東京都健康長寿医療センターがまとめた研究結果では、犬を飼っている高齢者は認知症の発症リスクが40%低くなるという。
人生100年を豊かにしてくれる“動物との絆”。高齢でペットを諦めるというこれまでの当たり前にも変化が生まれている。
2024年11月27日放送
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