アニメーション研究家・かねひさ和哉氏は「レトロブーム」をどう見るのか?【インタビュー後編】
東スポWEB / 2024年4月7日 19時41分
【昭和90年代の人々】昭和初期・中期のアニメーションを再現した動画で人気を集めるアニメーション愛好家、かねひさ和哉氏へのインタビュー。後編では「レトロブーム」に対する率直な感情、今後の制作活動・研究への展望についてもじっくり語ってもらった。
――現在のアニメーションと、かねひささんが愛好されている過去のアニメーションでは、明らかな違いがあるのか
かねひさ そうですね…。アニメーション以外の文化でもそうだとは思うのですが、年代ごとに明確な壁や溝があるとは思っていないんです。グラデーションと言いますか、黒と白の間に灰色を挟んでいくような形で流行や表現の特徴も変わっていくのかな、と感じていて。
――時代ごとに切り離せるものではない、と
かねひさ それこそ1930年代のディズニーやフライシャー(1920年代~1940年代を中心に活動した「ベティ・ブープ」「ポパイ」等で知られるスタジオ)の作品と、現代のディズニー映画を比べれば大きな違いがありますけど…。1960、70年代になれば映画のみならずテレビも普及して、宣伝のためのアニメも放映されていますし、現代に通ずる部分もしっかりあるんです。アニメーション全体が徐々に今まで変化しているということであって、それまでの流れを断絶するように刷新されているということではありませんから。
――一方で現在は「昭和」「平成」のように時代を区切り、かなりカジュアルな形で過去の文化を楽しむ人が増えている印象です。この風潮をどのように感じられていますか?
かねひさ この流れに関して、最初はかなり複雑な気持ちではありました。正直自分で動画を作るようになる前は、「レトロ」というカルチャー自体にも懐疑的で…。
――それでは、心境の変化があったということですか?
かねひさ そうですね、動画投稿をするようになったことは自分の中では大きくて。おそらくものまね芸人の方とかも同じ感覚を持っていらっしゃると思いますけど、過去のコンテンツを意識してすごく再現性を高めたとしても、結局それの〝模造品〟になってしまう危険性が常にあるんです。であれば、過去のアニメーションには良いところも悪いところもあるわけだし、現代の価値観に合わせて再構築するということには意味があるのかな、と。過去の表現を現代に即して楽しむための懐古カルチャーはあってしかるべきだなと思えるようになりました。
――発信者としての気づきもあったのですね
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