栃木２遺体事件の〝兄貴分〟逮捕で新たな謎 「黒幕」はなぜズサンな実行役、指示役を選んだのか

被害者・宝島さんのお店があった〝宝島ロード〟の様子

栃木２遺体事件の〝兄貴分〟が逮捕された。

栃木・那須町の河川敷で１６日に焼けた夫婦の遺体が見つかった事件で、警視庁と栃木県警の合同捜査本部は２９日、死体損壊容疑で住所職業不詳の佐々木光容疑者（２８）を逮捕した。沖縄県で拘束した。同容疑で２１日に逮捕された平山綾拳容疑者（２５）への指示役とみられる。

逮捕容疑は平山容疑者らと共謀して１６日未明から朝にかけ、上野で居酒屋１４店舗を経営する宝島龍太郎さん（５５）と妻幸子さん（５６）の遺体に火を付けて損壊した疑い。

他に事件に関わっている者としては、実行役とみられる２人組がおり、捜査本部は行方を追っている。

平山容疑者は「兄貴分から遺体の処理を頼まれ、ガソリンや粘着テープなどを指示されて買った。名前は言えない」などと供述。捜査本部は佐々木容疑者を指示役とみており、防犯カメラなどから２人が１６日未明に東京都内で会ったことを確認している。また、平山容疑者は報酬として約１０００万円を受け取ったと話している。

佐々木容疑者が〝兄貴分〟だとすれば大きな進展だが、一方でまだ謎も残っている。

元警察関係者は「佐々木容疑者は遺体損壊を実行した平山容疑者、２人組への指示役であり、その上には殺害を決めた依頼主、つまり黒幕がいる可能性があります。黒幕は佐々木容疑者の上に別の指示役を挟んでいるかもしれません」と指摘する。

今回の事件は〝金払い〟がいいことが際立っている。遺体を運ぶ車とガソリンなどの調達役である平山容疑者の報酬が１０００万円だった。

「佐々木容疑者はその倍、２人組へもかなりの高額が渡るはずです。それ以外にも関わっている可能性があり、トータル報酬額が５０００万円となれば、相当大きな案件です。宝島さんと店がらみでトラブルになった人や元従業員などの個人的な恨みではなく、もっと大きな組織がらみの話でしょう」（同）

不可解なのは組織がらみかもしれないのに、現場の実行役たちがことごとくズサンだったことだ。

「遺体を隠すために遺棄するなら、２人組は河川敷に置くのではなく、山の中に埋めればよかった。揮発性の高いガソリンで火をつけたため、煙が上がって発覚が早まったのも奇妙です。平山容疑者が遺体運搬に自分の車を差し出したのも、平山容疑者と佐々木容疑者が防犯カメラだらけの都内の居酒屋で飲んだのもゆるすぎます。組織がらみならばもっと頭が切れる実行役に丸投げするはずです」と同関係者。

死体損壊罪は最高で懲役３年だが、計画的な複数の殺人罪は死刑もありうる。主犯となる黒幕がいるとすれば、なぜズサンな実行役、指示役を使ったのか。

同関係者は「黒幕は人間関係をたどられても、届かないと確信しているのかもしれません。実行役が逮捕され、ペラペラしゃべってもつながらないところにいる人物の可能性があります。実行能力で選んだのではなく、黒幕につながらないという点で人選した可能性があります」と話している。