夫婦げんかは子供の心を刺す透明なナイフ。傷ついて無感動になった経験を振り返る
LIMO / 2019年10月2日 10時15分
夫婦げんかは子供の心を刺す透明なナイフ。傷ついて無感動になった経験を振り返る
親による虐待というと、体罰などの肉体的なものを思う方が多いことでしょう。肉体的な虐待が子供の心身に悪影響を与えるのは誰もが理解するところですが、どの家庭でも起きる夫婦げんかは心理的虐待と呼ばれ、子供の脳が委縮すると言われても、にわかに信じ難いと思います。
両親の言動による悪影響は、福井大学とハーバード大学によるアメリカ人を対象にした研究結果で明らかになっています。研究に携わった福井大学教授の友田明美氏は『子どもの脳を傷つける親たち』を出版し、2017年12月12日放映のNHKのクローズアップ現代+「夫婦げんかで子どもの脳が危ない!?」でも取り上げられています。
今回は、夫婦げんかが絶えない環境下で育った筆者の実体験をもとに、子供への悪影響を考えていきたいと思います。
毎日けんかが繰り広げられる不安定な環境
筆者の両親は、親戚の紹介によるお見合い結婚の夫婦です。当時としては珍しくもないお見合い結婚ですが、話を早々にまとめたい両家の思惑で有無を言わさず日取りが決まってしまいました。しかし、両親は趣味など何事においても考えが合いませんでした。
そのため、結婚してほんの数か月後に母は「もう無理」と実家へ帰ってきてしまったのです。「どうしても戻ってきてほしい」という父の願いに折れ、母は結婚生活を続けることに。しかし、合わない二人は子宝に恵まれたからといっても、構わずにけんかを繰り広げる毎日でした。
筆者の子供時代の夜は、いつも両親がけんかをしないような空気を作ることに全力を注いでいたのを覚えています。まるでサーカスのピエロのように、自分の感情を殺して場を盛り上げることに徹していたのです。それは物心ついた頃から反抗期を迎え、自我が爆発した中学1年あたりまで続きました。
今振り返ると、子供の精神面に良いことだとは到底思えません。それでも、当時の筆者は自分がピエロを演じることで家庭の平和が守られると信じていたのです。
「結婚しなければよかった」と子供の前で何度も言う母
子供に気を遣わせる両親と一緒に生活するととても疲れますが、それ以上に辛かったのは母が事あるごとに「結婚しなければよかった」と言ったことです。父と結婚して誕生した筆者には存在価値がないと遠まわしに言われている気がしてなりませんでした。
これは夫婦げんかをしているとよく出る言葉かもしれませんが、子供の心に大きな傷を与えます。筆者も、何度も涙を流しながら考え込みました。そして「母がここまで後悔する結婚って何なんだろう?」と、結婚そのものにネガティブなイメージを持ってしまったのです。
筆者は現在、結婚をし、家庭を持っています。しかし、恋愛や結婚に対して夢や希望を持たずに成長してきました。親の何気ない一言は、子供が結婚に対してどういった印象を持つのか左右します。そして親の不適切な言動は、子供の心を透明なナイフで何度も刺しているのと同じだと、経験上断言できます。
みんなの「感動する」に疑問を感じる冷めた少女時代
家では常にピエロ役として立ち振る舞っていた筆者は、オリンピックの演技や競技を見ても感動することができなくなりました。学校のクラスメイトが口々に「感動したよね」と言っていても、ピンときません。その場の雰囲気でうなづいたりしましたが、心の底から「感動した」という気持ちが湧いてこない理由を当時は分かりませんでした。
運動会や学芸会などのクラス一丸になるイベントでも、「みんなで頑張ろう」という気持ちが出てこないのです。また、卒業式で涙を流す同級生のことも理解できませんでした。
こうして何事もクールに捉え、徐々に素の感情を表に出さなくなりました。どんな場所でも笑いが起きるように、場の空気が凍り付かないように全力を注ぎました。それが生まれ持った性格だと信じていたのですが、夫となる男性との出会いによって幼少期からの環境のせいだと自覚するようになったのです。
結婚や家庭への考えを変えてくれた夫との出会い
長年、普段はクールな性格だけどお笑い担当と自己分析していましたが、付き合うようになる直前に夫から「感情の起伏が平坦」「無理して場を盛り上げようとしている」ことを指摘されて初めて自分自身の心の闇に気がつきました。
そこで、どこで間違ってしまったのか時計を巻き戻し、一人きりで考えていくうちに、幼少期まで遡ってしまったのです。両親の連夜のけんか、母の結婚への愚痴や父の悪口などを耳にして育ってきたことで、本音を言えず仮面を被っている人間になっていたことに気がつきました。
本格的に交際がスタートしてから、小さい頃の辛かった思い出を少しずつ吐露していきました。夫はただ黙って聞いてくれたり、「夫婦げんかはウチの親もしていたよ」と言ってくれましたが、彼の両親のけんかの内容を聞いていると他愛のないものでした。そして、他の家と比較したことで、どれだけ筆者の両親がけんかばかりしていたかを認識することもできたのです。
子供を通じて自分自身の傷を癒す日々
結婚をする前に、夫婦げんかを子供の前ですることの愚かしさと、その悪影響に気がついたのは幸運でした。そして、冒頭で紹介した友田教授の著書に偶然に出会い、両親の言動でダメージを受けていたと確信したのです。そうした自らの経験を活かし、子供の前で大きなけんかをすることなく、今まで結婚生活を過ごしてきました。
3人の子供の成長を見守っていると、親の顔色を気にしながら過ごしてきた子供時代を思い出す瞬間があります。そういう時は、筆者自身も童心に戻り、無邪気に遊んだり笑ったりして過去の傷を癒すようにしています。完全にトラウマは消え去りませんが、子育てを通じてもう一度幼少期をやり直している、そんな日々を送っています。
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