流行りのESG投信は”いい投資信託”か、それとも”ダメな投資信託”か?

LIMO / 2020年7月25日 20時0分

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流行りのESG投信は”いい投資信託”か、それとも”ダメな投資信託”か?

ESGという言葉をご存知ですか? ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の英単語の頭文字を組み合わせた造語です。

ESGという言葉自体はかれこれ7〜8年前から投資テーマとしてポツポツ出ていましたが、当時は大化けすることはありませんでした。それが、最近のSDGs(Sustainable Development Goals/SDGs=持続可能な開発目標)と、何となく意味や語感が似ていることから、バズワードとして息を吹き返してきたと筆者は感じています。

環境(E)に優しく、社会的に(S)重要、かつ先進的な企業統治(G)を進めるのは、企業であれば当然です。ところが、わざわざESGなる言葉が先行するのは、実際達成できないスローガンだからなのですね。一方、国連が推進するSDGsは、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標とのことです。

抽象的過ぎて何をするのか不明な点が多いのですが、コロナショックでトーンダウンしているのは否めません。それどころではないのが世界各国の実態でしょう。SDGsのカラーホイール・バッジを付けている政治家やビジネスマン諸氏、最近あまり見ませんね。

金融機関にとっては売れる投資信託が”いい投資信託”

さて、若干沈んだSDGsですが、ESGはここに来て投資信託ビジネスでは旬なテーマになっています。

内外株価がピークを打った後、コロナショックで個人向け金融商品が売れない中、「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし) 愛称:未来の世界(ESG)」という投資信託が、3800億円以上の資金を集め、7月20日に新規設定されました。

新規設定の投資信託がこれだけの資金を集めたのは20年ぶりなのですが、たった2社の販売会社(みずほ銀行、みずほ証券)のみでの募集でした。いかに現場にプレッシャーがかかっていたかがわかるというものです(新規設定というのは、新しい投資信託が発売されて運用開始になったという意味の金融用語です)。

一方、運用成果はこれからのお楽しみです。新規設定ファンドですから、どの企業の株式に投資するかは予め開示されているわけではありません。この投資信託の投資信託説明書によれば、「主としてわが国および新興国を含む世界の金融商品取引所上場株式(上場予定を含みます。) に実質的に投資を行います。」とされています。

要するに、世界の株式に投資するのですが、どの銘柄に投資するかは現時点では未定ということですね。この投資信託を購入した投資家は、当然このことを理解していると思います。

ただし、何に投資するかわからないものに投資するのなら、それは”さすが富裕層”というべき人たちでしょう。投資は余裕資金で最後は目をつぶって行うべし、というのを地で行っています。もっとも、販売会社である金融機関はこの投資信託を売るだけですから、投資リスクは一切負いません。

結局、販売会社にとって、こうした設定時に大きな資金を集められる大型ファンドが”いい投資信託”で、いくら運用成績が優れていても売れない投資信託は”ダメ”な投資信託なのです。

設定時の純資産総額が9割以上減るのが投資信託の実態

さて、さしもの”いい投資信託”でも、いつかは寿命を迎えます。図表1はかつての売れ筋投資信託が新規設定時に募集した金額と、現在の純資産総額の比較です。本来は設定時当初と現在の残存口数を比べたいところですが、資産規模のバロメーターとして純資産総額で比較してみます。

図表1:トップ売れ筋投資信託の設定時及び現在の純資産総額比較

(/mwimgs/7/d/-/img_7d7c393cb9ce23fb34dd06cda4fc9cfd121317.jpg)

拡大する(/mwimgs/7/d/-/img_7d7c393cb9ce23fb34dd06cda4fc9cfd121317.jpg)

出所:各種データより筆者作成(2020年7月20日現在)

かなりショッキングなデータですが、設定当時の募集金額が1兆円に迫ろうかといった投資信託でさえ、運用環境が悪化して解約を受け続けると、年々資産を減らしてしまうのです。

驚くべきは純資産総額の減少率です。巨大な大ヒット投資信託でさえ、平均すると運用期間中に9割以上の資産を減らし、年平均3割近くの資産減少に見舞われているのが実態です。

純資産総額が減る理由は、(1)解約、あるいは(2)運用損のどちらか、または両方です。経験上、純資産総額が9割以上減少した投資信託が、息を吹き返して再び大ヒットになることはありません。また、純資産総額の多寡に関わらず、いったん売れなくなった投資信託もほぼ復活することはありません。

なぜなら、設定当時は運用会社も販売会社も、流行りのテーマを掲げた投資信託(主としてアクティブ投信)のマーケティングや営業活動に目一杯尽力するわけです。今、同じリソースをかけるのであれば、当然ながら“旬”で“目新しい”テーマの投資信託にお金をかけた方が、結果的に販売額が上がります。もちろん、旬や目新しさは作り出していくのですが。

というわけで、新発の投資信託が売れなくなった後には、また新しいテーマを掲げた投資信託が出てきます。前述の投資信託は約4千億円の資金を1カ月程度の募集期間で集めました。この数字は対面でのセールス活動でないと達成できません。営業日数20日間として、いわゆるノルマである目標販売金額は、1日あたり200億円といったところですね。

流行っているのではなく、流行らせている!?

最後にまとめると、タイトルの「流行りのESG投信は”いい投資信託”か、それとも”ダメな投資信託”か?」に対する答えは、運用会社・販売会社にとっては間違いなく”いい投資信託”です。ノーリスクで販売手数料(上限3%・税抜)と信託報酬(年間1.68%・税抜)合計で初年度180億円弱程度の収益(年間平残3800億円とする)が見込めるからです。

では、投資家にとってはどうでしょう。筆者ならこう考えます。当該コスト以上(初年度4.68%)のリターンとなれば”いい投資信託”、それ以下であれば”ダメな投資信託”です。そういう観点では、ESGというテーマにこだわる必要はないのです。

もっとも、金融機関から声がかかり投資信託の勧誘をされるのは、ごく一部の富裕層。多くの賢明な方々は、もっともっと効率的に運用できる方法で、着実に資産形成されていると信じています。

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