銀行員が語る「親の借金3000万円、でもお金が寄ってきた人」の特徴

LIMO / 2021年2月27日 19時5分

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銀行員が語る「親の借金3000万円、でもお金が寄ってきた人」の特徴

世界中でワクチン接種が始まっているとはいえ、新型コロナウイルスの収束はまだまだ先になりそうです。その影響で休廃業や倒産に追い込まれた店舗や事業所もあり、「自分のせいではないのに、なぜ自分がこんな目に…」とやり場のない怒りや不安、苦悩を抱えている人も少なくないでしょう。

私は勤続30年の銀行員生活を通して、それこそ数え切れないくらいさまざまな人を見てきました。その中で今回は、自分のせいではない逆境にもめげず、夢をつかみ取った男性のお話を紹介していきたいと思います。

父が亡くなり、残った借金返済は50年!

その人は、地域のスーパーマーケットで雇われ店長さんをしていた30代男性、ここではAさんとしましょう。Aさんは、自営業をしていたお父さんが多額の借金を残したまま亡くなり、その借金を引き継いで、少しずつ返済していました。

前任から交代して担当になった私は、同年代で家族構成も同じAさんに親近感を持ちました。好感を持ったのは、そうした理由以外に、彼の前向きな姿勢があったからです。

借金の保証人はお母さんだったそうで、保証人ではないAさんには必ずしも返済の義務があったわけではありません。そのままお母さんに返済してもらうという選択肢もあったのです。

しかしAさんは、自分で借金を返していくことに決めました。

残された借金は3000万円。Aさんにも自分の家庭があります。子供も小さく大変なはずなのに、店長としての給料から、毎月借金返済に回していました。毎月5万円の返済で、単純な割算ではあと50年もかかってしまう計算でした。

借金は夢を実現するためのエネルギー源

ちなみにAさんは一人っ子だったので、どちらにせよお母さんが借金を返済できないまま亡くなれば、借金が自分のもとに来てしまいます。

とはいえ、自分から進んで借金を引き受けたのは、Aさんには大きな夢があり、借金を返していくことが自分のエネルギー源になると、プラス思考に考えたそうです。

母親に借金返済をさせず、自分の家族も守っていくのは大変なことですが、彼はその困難な道を選びました。そんなAさんを突き動かしたのは「いつか自分の店を持つ」という大きな夢でした。

チャンスが巡ってきたが融資審査が問題に

銀行員が、一人のお客様と付き合えるのは長くても3年くらいです。私がAさんと会ったときは、まさに彼が大きな転機を迎えるタイミングでした。

Aさんに、大手チェーン店のフランチャイズで店を持つチャンスが巡ってきたのです。フランチャイズで土地も借地ではありましたが、なんといっても立派な自分の店です。

店舗の建設資金や運転資金が必要になり、Aさんから私が新規融資の相談を受けました。Aさんの真面目な人となりや、これまでの経緯を聞いていた私は「力になりたい!」と思いました。

一般的に銀行などの金融機関は、すでに個人で大きな借金を抱えている人に融資はできません。Aさんの独立に向けた融資審査も困難を極めました。

なんとかしたいと私は考えても、もちろん仕事上できることに限界はあります。また、特定の人にだけ肩入れすることもできないのですが、可能な限り力を注ぎました。

そして公的融資なども含めて、やっと開業する資金を準備できることになりました。

高いハードルも熱意と計画で乗り越えた

こうして、融資が実現するまでには紆余曲折がありましたが、この高いハードルを乗り越えたのは、Aさんの熱意と計画性があったからです。

たとえば計画性を示す話として、Aさんは自分の子供には絶対借金を残さないと決め、当時はほとんど加入する人がいなかった事業資金融資専用の信用生命保険に加入しました。

保険料はかなり割高なのですが、親が死んで借金を子供に背負わす連鎖を断ち切りたかったのでしょう。

マイナススタートでも、前を向いて走ったから

そして独立開業を成しえたのは、なんといってもAさんの熱意と、逆境でも前を向き続けた姿勢でした。

銀行員として私がしてあげられたのは、ごくわずかです。しかし、Aさんの熱意が私をも突き動かしました。彼を後押ししたいという銀行員が現れなければ、そのわずかな力さえ得られず夢は実現しなかったかもしれません。

開業後、プライベートでこっそりAさんのお店に行きました。元気で働くAさんを見て帰ろうとしたところ、向こうから気付いて声をかけていただきました。

「いろいろ大変ですけど、頑張っていますよ!」そう言ったAさんの晴れやかな顔が今も忘れられません。

その後、私は転勤しましたが、後任の銀行担当者から聞いた話によると、父親の残した借金は予定より早くあと数年で返済できる見通しのようです。また事業も順調で2店舗目の開業計画もあり、銀行もその融資に前向きだと聞き、安心しました。

人生には、その人自身の責任ではないものの、突如として不運や困難に見舞われることがあります。それ自体は責められることではないのですが、マイナスをマイナスのままにあきらめてしまっては、残念ながらお金やチャンスはさらに逃げていってしまうのかもしれません。

一方、逆境に立たされても、前向きな姿勢を持ち続けていれば、人もお金もその人の周りに寄ってくる…そんなことをAさんの生き方から感じたのでした。

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