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奨学金を滞納する人としない人、どのくらい年収が違う? 奨学金返還の実態

LIMO / 2021年8月27日 18時45分

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奨学金を滞納する人としない人、どのくらい年収が違う? 奨学金返還の実態

今では約半数の大学生・大学院生が利用する奨学金。代表的なものとして、独立行政法人 日本学生支援機構の奨学金制度があります。その奨学金には給付型と貸与型があり、給付型は返済不要ですが貸与型は卒業後に返済していかなければなりません。

日本学生支援機構が奨学金返還者に対して行った「令和元年度 奨学金の返還者に関する属性調査結果」によると、令和元年度末で奨学金の返還を3か月以上滞納している人(以下、延滞者)は約15万人、滞納していない人(以下、無延滞者)は約411万人です。

実は、この調査結果からは延滞者と無延滞者の間に違いが見られることがわかります。以下、どんな違いがあるのかを確認していきます。なお、回答者(延滞者2048人、無延滞者1458人)の性別・年齢別の比率は以下の通りです。

奨学生本人の性別比率

延滞者:男性51.6%、女性48.4%

無延滞者:男性47.7%、女性52.3%

奨学生本人の年齢比率

延滞者:20代以下16.9%、30代48.8%、40代22.7%、50代以上11.6%

無延滞者:20代以下46.4%、30代48.1%、40代4.7%、50代以上0.8%

奨学金の申込みと返還に関する概要

日本学生支援機構の奨学金申込みには、予約採用と在学採用の2種類があります。予約採用は大学・短期大学・高等専門学校・専修学校へ進学する前に申し込み、在学採用は大学等への進学後に申し込みをするもので、所定の申し込み資格や基準を満たしていることが必要です。

また、貸与型奨学金の返還は貸与が終了した月の翌月から数えて7カ月目から始まり、金融機関金融機関からの口座振替(引き落とし)によって行われます。たとえば3月に貸与が終了する場合、初回振替日は10月27日になります。

自分で申し込み手続きをしていないことが多い延滞者

ここからは、延滞者と無延滞者の違いについて見ていきます。まず、奨学金を申請する際に、誰が実際に申込手続き(書類作成や入力作業等)をしたのかと聞いたところ、「奨学生本人」が無延滞者で60.0%あるのに対し、延滞者では39.9%と約20ポイント低くなっています(図表1参照)。

また、「奨学生本人」と「本人と親等」と合わせた比率でも、無延滞者の86.6%に対して延滞者は63.7%。延滞者の場合は、申込手続きをする時点で奨学生本人が関わっていないケースが目立ちます。

逆に言えば、延滞者の3割程度は申込手続きを親(または祖父母等の家族、親戚)に任せていることになります。そのため、貸与型の奨学金制度についてよく理解せずに利用していたということも考えられるでしょう。

図表1:奨学金申請時の申込手続きを行った者

(/mwimgs/d/1/-/img_d16a21c94dc71ee2b665c49c5d36f7e237953.jpg)

拡大する(/mwimgs/d/1/-/img_d16a21c94dc71ee2b665c49c5d36f7e237953.jpg)

出所:「令和元年度 奨学金の返還者に関する属性調査結果」(日本学生支援機構)をもとに編集部作成

延滞者の2人に1人が返還義務を知らずに申込手続き

また、奨学生本人が奨学金に「返還義務があることを知った時期」を聞いたところ、「申込手続きを行う前」が無延滞者では89.4%であるのに対し、延滞者では50.3%でした。つまり、半数は返還しなければいけないお金だという認識がないまま申込手続きを行ったことになります。

貸与終了以降に返還義務を知った延滞者は合計16.3%で、そのうちの約半数の8.2%は「延滞督促後に知った」と回答していることからも、返還義務の認識が不十分だったことがうかがえます。

延滞者は非正規雇用・無職の割合が高い

奨学生本人の職業に関する質問では、以下のように延滞者は無延滞者に比べて非正規雇用や無職・休職中の割合が多く、このことも奨学金の返還に影響していると見られます(以下では、自営業/専業主夫・婦/その他は割愛)。

延滞者:「正社(職)員・従業員」40.7%、「非正規社(職)員・従業員」30.9%、「無職・失業中/休職中」14.6%

無延滞者:「正社(職)員・従業員」74.3%、「非正規社(職)員・従業員」13.9%、「無職・失業中/休職中」4.0%

延滞者の約半数は年収200万円以下

奨学生本人の年収については、「200万円以下」の比率が延滞者では約半数(47.1%)であるのに対し、無延滞者では20.0%と大きな開きがあります。

逆に「500万円超」は延滞者で6.2%、無延滞者は21.2%という結果で、前出の雇用形態がそのまま年収にも反映されていると見られます(図表2参照)。

図表2:延滞者と無延滞者の年収

(/mwimgs/4/d/-/img_4d972e9f9e148d8aad1a2f2d9e77c8fa60878.jpg)

拡大する(/mwimgs/4/d/-/img_4d972e9f9e148d8aad1a2f2d9e77c8fa60878.jpg)

出所:「令和元年度 奨学金の返還者に関する属性調査結果」(日本学生支援機構)をもとに編集部作成

また、調査時点で延滞している人に理由を聞いたところ、やはり最も多かったのは「本人の低所得」の62.7%で、次いで「奨学金の延滞額の増加」の42.6%になっています。

通常のローン同様、奨学金も返還期日を過ぎると延滞金が発生するため、ますます返還が困難になる悪循環に陥っていると言えるでしょう。

もしものときの「返還期限猶予制度」と「減額返還制度」

失業やケガ、病気、災害などの理由で返還ができなくなった場合には、返還期限の猶予または返還月額の減額といった救済制度もあります。

ところが、これら救済制度の認知度はというと、無延滞者の場合、奨学金の申請や採用時の資料、返還のてびき等の説明で「返還が始まる前に制度を知っていた」と回答した割合が高い一方、延滞者の場合は「延滞督促を受けて初めて制度を知った」という回答が多くなっています。

返還期限猶予制度:返還が始まる前の認知度
延滞者6.6%、無延滞者39.8%

減額返還制度:返還が始まる前の認知度
延滞者4.6%、無延滞者31.9%

おわりに

奨学金は、経済的な理由で進学や学びを諦めることがないように学費を支援する制度ですが、貸与型奨学金の場合は卒業後には返さなければならない、いわば借金です。そして、奨学金を利用して進学したとしても、順風満帆の将来が約束されているわけではありません。

奨学金の返還という負債を背負っても進学したいという確固とした意志がなければ、奨学金はかえって将来の足かせになってしまうこともありえます。保護者としても、奨学金の利用については子供とよく話し合うことが必要かもしれません。

参考資料

令和元年度 奨学金の返還者に関する属性調査結果(https://www.jasso.go.jp/statistics/shogakukin_henkan_zokusei/__icsFiles/afieldfile/2021/06/17/r1zokuseichosa_shosai.pdf)(独立行政法人 日本学生支援機構)

2020年度 返還のてびき(https://www.jasso.go.jp/shogakukin/henkan/houhou/flow/__icsFiles/afieldfile/2021/02/09/202010_r2henkantebiki_kani.pdf)

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