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景気の波と企業業績。増益率はいつ最大になるのか?

LIMO / 2021年11月7日 19時45分

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景気の波と企業業績。増益率はいつ最大になるのか?

景気拡大は企業業績を改善するが、増益率は回復初期がもっとも高く、次第に低下していく、と筆者(塚崎公義)は考えています。

景気が良い時は企業が儲かるのが基本

景気が良い時は、物(財およびサービス、以下同様)が売れますから、企業が儲かるのが基本です。景気という統計はありませんが、景気が良い時には物がよく売れ、企業が儲かり、企業の生産量が増え、企業の雇用が増え、失業者が減るのが普通ですから。

不況期には企業は儲かりませんが、景気が回復してくると利益が増えてきます。景気のピークで利益は最大となり、その後は景気の後退に伴って利益は減っていくというのが普通です。

もっとも、景気のピーク付近が増益率が最も高いといったことではないですし、景気のピークやボトムと利益の最大最小とは多少タイミングがズレるかもしれませんので、注意が必要です。

増益率は景気の谷直後が最大に

景気のボトムでは、企業の利益は非常に小さいので、景気が回復を始めて利益が増え始めると、増益率は非常に大きなものになりやすいでしょう。割り算の分母が小さいわけですから。

加えて、増益額も結構大きいかもしれません。売り上げ増加が(材料費を除いて)そのまま利益の増加に貢献するからです。

不況期には、労働者がヒマにしているので、売り上げが増えて企業が増産しても労働者の尻を叩くだけで済みますし、設備稼働率も低いので増産しても稼働率を上げるだけで済みます。つまり、増産しても材料費以外は増えないのです。

以下で記すように、景気の谷付近では、借入金利等が減っていく場合もあり、それも高い増益率の一因となり得るわけですね。

景気の谷より前に収益が回復し始める場合も

景気が谷を迎える直前には、実は企業収益は回復を始めているかもしれません。売上の減少は緩やかになっているでしょうから、借入金利の減少等々により利益が増えることも考え得るからです。

景気の谷付近では、企業は設備投資をしませんから、減価償却によって発生するキャッシュフローは借金の返済に使われます。つまり、借金の残高が減っていくわけです。それは当然、支払い金利の減少に直結します。

金利水準も下がっていくかもしれません。一つは、過去の金利の高い時に借りた借金が返済し終わる可能性です。減価償却分だけ過去に借りた金利の高い借金を返していけば、残りは最近借りた金利の安い借金のウエイトが高まるはずです。

新規借入金利自体も、下がるかもしれません。景気のボトム付近では、追加的な金融緩和によって市場金利が下がる可能性もありますし、銀行間の貸出競争によって貸出金利が下がる可能性もありますから。

減価償却費も減るかもしれません。不況期には設備投資が行われないので、古い設備の減価償却が終わっていけば、その分だけ減価償却総額が減るからです。定率法が採用されていれば、それも毎期の減価償却が減っていく要因となるでしょう。

原材料費も、好況期に仕入れた高い原材料が使い終わり、不況期に仕入れた安い原材料を使うようになれば、減っていくかもしれません。

景気の山直前の増益率は小さい

景気の山が近づいてくる頃には、景気は絶好調と呼べる状況になるかもしれませんが、増益率は決して高くないと言えそうです。最大の要因は、前期の利益もそれなりに大きいため、増益率で見るとそれほど大きくならないということです。

増益額自体も、それほど増えないかもしれません。景気がピーク付近になると、原材料費は上がり、人件費も上がり、支払い金利も上がるでしょう。一方で、設備稼働率が上がってくると増産が難しく、割増賃金等を払って無理して増産すればコスト増になりますし、増産を諦めれば売り上げが増やせないからです。

以上、景気と企業収益について記してきました。景気と株価の関係については別の機会に詳述しますが、企業の増益率と人々の景況感にズレが生じることが株価にも影響するはずです。

期待していなかった時に大幅な増益決算が発表され、期待していた時の決算が小幅な増益にとどまるとすれば、投資家にとってサプライズとなるからです。

労働分配率は企業収益とほぼ逆相関

以下は余談ですが、景気が回復して売り上げが増えても、人件費はそれほど増えないので、労働分配率は下がります。これを「労働分配率が下がってしまった」などと否定的に捉える必要はありません。賃金総額が減っているわけではなく、割り算の分母である利益が増えただけですから。

反対に、景気が後退しても人件費はそれほど減らないので、労働分配率は上がります。これは喜べませんね。

労働分配率の長期的推移が上昇することが望ましいのか悲しむべきことなのかは、労働組合と企業との力関係などによるのでしょうが、短期的には景気の変動に大きく影響されるので、不用意に喜んだり悲しんだりしないように気をつけたいものです。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

<<筆者のこれまでの記事リスト(http://www.toushin-1.jp/search/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)>>

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