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経済力だけではない?!子どもの学力と運動能力との密接な関係。体育の重要性は増すか

LIMO / 2022年1月30日 20時15分

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経済力だけではない?!子どもの学力と運動能力との密接な関係。体育の重要性は増すか

経済力の差は学力格差に繋がるという見方はすでに一般化していますが、その対象を運動能力に置き換えるとイメージはガラリと変わります。運動能力というのは生まれ持った才能であるという考えが根強く、否それ以前に「それが当たり前」とみられているからです。

オリンピック選手やプロスポーツ選手のレベルとなると本人の素質と努力による賜物であり、一般人からすると到底叶わないレベルと認識されています。

しかし、実は子どもの運動能力も年収に関係すると言われたらどうでしょうか。俄かに信じられない人の方が多いでしょう。

画期的な年収と子どもの運動能力の関係性を見出す研究

筑波大学の清水紀宏教授を研究代表とする「子どもの体力・スポーツ格差に関する基礎的実証研究」は2016年から2018年に渡る調査研究であり、日本国内ではこれまでほとんど行われてこなった「子どもの運動能力と世帯年収の関連性」に着眼した研究です。

日本学術振興会の科学研究費助成事業として実施され、調査対象は岐阜県多治見市の公立幼稚園、保育園、公立小学校13校と公立中学校8校の合計38校園の園児と児童生徒そして保護者。

同じ岐阜県の恵那市で行われた「令和2年度  第1回恵那市スポーツ推進審議会」の資料の一つとして研究結果の概要が含まれていました。

それによると、「学力が低い子は運動能力も低い傾向がある。そして、その傾向は学年が上がると拡大していく」というものでした。学力と運動能力は関連性が乏しいと捉えられることが多いなかで、かなり衝撃的な結果となっています。

学校外でスポーツにお金をかけている世帯の子は学力と体力が向上し、そうではない世帯の子はどちらも伸び悩む。調査からは学校外でのスポーツの経験の差も勉強面にも影響を及ぼしている事実が浮かび上がってきました。

また、とくに母親がスポーツをしているかどうかや、親の地域社会との関わり方も運動能力の高低に連動しているとしています。この他にも低体力の子どもの家庭環境として、以下のことを指摘しています。

世帯収入が低く学校外の教育やスポーツへの投資が低い

子どもに対する学歴期待度が低い

子どものスポーツに対する期待が低く子どもとスポーツをしたり観戦する機会が少ない

全体的に「運動能力は天性のもの」とは言い切れない結果となりました

家計の苦しい世帯の子が走り回っている時代ではない

全国規模ではないにせよ、自治体の協力で行われた新しい視点での「格差」が問いかけるものは「経済力と学力」以上にインパクトがあります。

たしかに、現在の小学生は昭和的な「暇な子は公園などで思いっきり遊び元気いっぱいで、習い事や通塾で忙しい子は軟弱」というイメージが一掃されています。

子どものスポーツというとまず浮かんでくるのが野球やサッカーを代表とする小学校のスポーツ少年団や定番のスイミングです。それ以外にも、空手といった武術、陸上、ダンス、体操教室、はたまたロッククライミングなど一口に「スポーツの習い事」と言ってもひと昔前とは打って変わって多種多様なラインナップになっています。中には掛け持ちしている子もいるほどです。

どれを習ってもスポーツの習い事をするには月謝の支払いや道具も必要になりお金がかかります。休日に大会がある場合は送迎や車出しなど親の負担も軽くはなく、家計だけでなく時間の余裕もないと運動系の習い事を積極的にやらせられません。

かといって子どもが公園で遊びたくても遊び相手は習い事をしていない。結果として放課後は家で動画視聴やゲームをして過ごしてほとんど体を動かさないまま学年が上がっていきます。

放課後や休日に意識してスポーツをする機会を増やすにも、親の心がけや家計に左右されます。「子どもの体力・スポーツ格差に関する基礎的実証研究」を踏まえると「つけるべき体力をつける機会がないまま成長する子」と「小さい頃から指導者の元でスポーツを習い鍛えられている子」に分かれてしまっているのです。

体育の重要性は増していくか

学年が上がるにつれて体力差が拡大していくのは、中学での部活動の影響も忘れてはいけません。運動部はユニフォームといった道具そして遠征費なども発生するため、家計の苦しい子どもは入部するのを躊躇してしまいます。

学力と経済力との関係性ばかりに注目が集まりますが、運動能力と学力も非常に密接に関係している研究結果は大変興味深いものです。

今後、さらに調査対象が拡大していけば関連性がより見え、問題解消や格差を是正する糸口や対策が講じられることも期待できます。

学校外のスポーツはお金がかかりますが、成長期に体力をつけるメリットを広く伝える啓蒙活動は無駄ではないでしょう。体育や体力の重要性を子どもだけではなく保護者にも周知する取り組みが必要になってくるのではないでしょうか。

参考資料

科学研究費助成事業  研究成果報告書「子どもの体力・スポーツ格差に関する基礎的実証研究」(https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-16K13066/16K13066seika.pdf)

令和2年度  第1回恵那市スポーツ推進審議会 資料(https://www.city.ena.lg.jp/material/files/group/31/siryou6.pdf)

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