勉強するほど失敗する!? 投資の意外な落とし穴
LIMO / 2018年1月20日 10時15分
勉強するほど失敗する!? 投資の意外な落とし穴
証券投資や投資信託で、運用がうまくいかず、こう考えている方はいませんか?
・証券会社や銀行の担当者が適切なアドバイスをくれない
・選んでいる投資信託がよくない
・証券投資に関する知識が十分でない
確かにそういう面はあるのかもしれません。しかし、書籍『投資信託でうまくいく人、いかない人』の著者で、投資家心理に詳しい白石定之さんは、「これらは本質的なものではありません。うまくいかない本当の理由は『一喜一憂』してしまう心理にあるのです」と話します。では、どうすればうまくいくのか。白石さんに解説してもらいました。
人間ならばあたりまえの感情
マーケットの動きに一喜一憂してしまうのは、人間であればごく自然なことです。増えれば嬉しい、減れば悲しい。当たり前のことでしょう。しかし、一喜一憂の度合いが強い人ほど、投資で失敗する人が多いのも事実です。
私は、一喜一憂の感情は、「欲」と「怖れ」から成っていると考えています。「欲」は資産が増えれば増えるほど出てきて、「もっともっと」とマーケットが高いところで買わせます。「怖れ」は資産が減れば減るほど出てきて、安いところで売らせる、もしくは慎重にさせます。
投資の鉄則は、「安いところで買って、高いところで売ればよい」ですが、「欲」と「怖れ」によって、結果的に人は「高いところで買って、安いところで売る」をしてしまいます。頭ではわかっていても、感情がそうなってしまう。自分の感情ではあるのですが、容易にコントロールできないのです。
高値で買い、安値で売ってしまう理由
このことを理解するには、一喜一憂の感情は、あなた自身ではなく、「あなたとは別の存在」だと捉えてみるとわかりやすいと思います。
自分とは別の存在である「一喜一憂くん」が、私たちの心の中にいとも簡単に入ってきて、マーケットが上昇すると、「ほら、楽しいでしょう。もっと楽しもうよ!」とささやいて私たちをワクワクさせ、高い局面でさらにお金を投じさせます。一方でマーケットが下落すると、「もうこんな怖いことはやめようよ」とささやいて私たちを怖がらせ、安い局面で売らせる。一喜一憂の感情とは、そのようなものなのです。
なぜビギナーズラックがあるのか
多くの投資家は、よく勉強し、情報収集をしています。うまくいかないときに「証券投資の知識がまだ十分じゃないからうまくいかないんだ。もっと勉強しなくては」と思い、本を読んだり、インターネットで情報収集したり、セミナーに参加したりして、一生懸命に知識を得ようとします。しかし、一見よさそうなこの点に「一喜一憂の罠」が潜んでいます。
初心者が投資を始めるタイミングはどういうときでしょうか。マーケットが下落している場面では、「投資をしていなくてよかった」と思うのが普通ですので、こうしたときに始める人は少ないでしょう。初心者は、株価が上がり、マーケットが上昇していく過程で始める場合が圧倒的に多いわけです。投資で往々にして「ビギナーズラック」があるのはそのためです。
しかし、マーケットは上下を繰り返しているので、いつかマーケットが下落して、「うまくいかないなぁ」という感覚を持つ時期がきます。そのときに、「もっと証券投資を知らなくては」と勉強を始めることが多いのです。
勉強熱心な人ほど失敗する!?
具体的には、新聞やテレビ、インターネットから「トランプ大統領の政策でアメリカの経済はどうなるのか」「今後の株価・為替の見通しは?」といった情報を収集し、今後、マーケットがどうなるのかの見通しを自分なりに考えていきます。
すると次第に、「今日はなぜ株が下がったのか?」「明日の為替はどうなるのか?」と、目先の状況に対して一喜一憂し始め、それによって資産が減っていきます。すると、「まだまだ勉強が足りないからだ」とさらに勉強していくのですが、今後の見通しを当てようとすればするほど、より一喜一憂してしまい、ますます資産を減らしてしまいます。勉強すること自体が悪いのではなく、「多くの人は、それが結果的に一喜一憂の感情につながってしまう」から問題なのです。
投資が手軽に始められるようになり、書籍やセミナーなど情報が得られる機会も増えている今、積極投資型で、勉強熱心な人は多いのではないでしょうか。しかし、そんな人たちこそ「一喜一憂」の罠にはまりがちなのは、こうした理由があります。
まとめにかえて
もちろん、若いころから投資に慣れ親しんで、多くの失敗から「一喜一憂の罠」やそれを乗り越える方法を学んだ人たちもいます。そうした投資家は、割安な銘柄を見極めて選別投資をすることで、長期できちんとパフォーマンスを出していますが、その域に達するのは容易ではありません。
さまざまな失敗をまさに「勉強代」だと思って、自ら証券投資するのも一つの方法ですが、特に定年後や定年間近になって新たに投資を始めた場合は、そもそも失敗する余裕がないことがほとんどでしょう。そうした方々は、「投資信託」を活用するという手もあります。
もちろん、投資信託もピンキリです。すべてがよいというわけではありません。私の著書の中でも、おすすめのものを含めてどういう視点で選ぶべきかを書いていますが、重要なのは、「投資の考え方・哲学」がきちんとあり、そこにご自身が納得・共鳴できるような投資信託を選ぶべきだということ。「勉強」するなら、今日の株・明日の為替の値動きではなく、ここを見極めることにこそ時間を割くべきです。そして納得したからには、「短期」で一喜一憂することなく、「長期」でのパフォーマンスを見ることが大事なのです。
(『投資信託でうまくいく人、いかない人』をもとに編集)
■ 白石 定之(しらいし・さだゆき)
中学3年のときから父の勧めで株式投資を始める。慶應義塾大学理工学部を卒業後、日立製作所、野村證券を経て独立。IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)として活動後、マネーブレイン株式会社を設立、代表取締役に就任。
(https://www.amazon.co.jp/gp/product/4295401153/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4295401153&linkCode=as2&tag=cmpubliscojp-22&linkId=caa55fcee0cc0473dd9b6c935d1030af)
『投資信託でうまくいく人、いかない人 「定年世代」が上質なセカンドライフをつくる方法(https://www.amazon.co.jp/gp/product/4295401153/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4295401153&linkCode=as2&tag=cmpubliscojp-22&linkId=c1419e582e5a1896da7a5d0878269194)』
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