「感情的な会議」に足りない5つのこと
LIMO / 2018年2月9日 20時40分
「感情的な会議」に足りない5つのこと
ビジネスシーンでは、会議など、話し合いや議論の場が多くあります。しかし、「感情のぶつけ合い」で終わってしまって、具体的な結論が出なかったことなども多々あるのではないでしょうか。
ここでは、『問題解決のためのロジカルシンキング』の著者、生方正也さんが、感情的にならず、ロジカルに議論を進めるための方法を解説します。
ロジカルに議論を進めるメリット
「3人寄れば文殊の知恵」ということわざがあるように、もともと、議論は複数の人が話し合って、ひとりでは出てこないような結論や、ひとりで考えるよりも優れた意見を出すためのものです。その議論をロジカルに進めることには、次のようなメリットがあります。
・議論の目的や根拠となる事実をベースにしているので、感情的な対立が起こらない
・全員で結論を出すので納得感が高まり、感情的なしこりが残らない
では、ロジカルで生産的な議論をするための4つのポイントをご紹介しましょう。
ポイント1 「目的」を共有する
議論が迷走してしまう最も大きな原因は、「議論の目的が人によって違うこと」です。まず、メンバーの間で「どんな目的で議論を行うのか」を共有しておくことが欠かせません。
ここで注意したいのが、「議論の目的は、議論が始まったときに一度共有すればよいものではない」ということです。議論をしているうちに、だんだん目的と関係のない話にそれたり、自分の関心のあることについてだけ話しがちになったりしてしまうことはありませんか? 議論の間、目的をずっと意識し続けていないと、こうなってしまいます。
「もう一度、確認しておきますが……」といった感じで、折にふれて「議論の目的は何か」を振り返り、メンバー全員が目的を共有できている状態が続くように心がけましょう。
ポイント2 「役割分担」をする
2番目のポイントは、メンバーの役割分担です。適切な役割分担ができれば、メンバーの考え方や知識をフルに活用することができ、混乱も防ぐことができます。具体的な役割は、次の3つです。
1.議論の流れを整理し、メンバーの意見を引き出しながら結論を導き出す「ファシリテーター役」
2.議論に必要な情報を必要なタイミングで提示する「情報提供者」
3.議論で出てきた結論をチェックし必要に応じて反論する「チェック役」
これらは議論をする前に厳密に決めるものではありませんし、ひとりをどれか1つの役割に固定するというものでもありません。議論の途中で役割が入れ替わることもあります。大事なのは、「議論の場で、常にこの3つの役割を果たすメンバーがいる」ということです。
ある主張に追随するだけの会議にはチェック役がいませんし、批判大会のような話し合いでは情報提供者がいません。また、迷走する議論ではファシリテーター役がいないことになります。メンバーがこれらの役割をバランスよく果たすことで、はじめて建設的に議論が進められるのです。
ポイント3 「対立と合意」のメリハリ
3番目のポイントとしては、「合意できている部分」と「そうでない部分」を整理し、共有することです。
合意している部分と対立している部分がはっきりしない場合、一度合意した部分を蒸し返して同じ議論を繰り返すということが起こりがちです。
合意している部分は確認程度で済ませ、対立している点を重点的に話し合うことで、時間の短縮や混乱の防止につなげることができます。
ポイント4 意見を「主張」「前提」「根拠」に分ける
ある意見に印象論で感想を言い合うのではなく、意見を分解してその妥当性をチェックしていくのが、ロジカルな議論です。分解の仕方としては、次の3つに分けるのが適切です。
・主張=結局その意見で何を言おうとしているのか?
・前提=その主張の前提となっている考え方は何か?
・根拠=その主張はどんな裏づけがあるのか?
議論の対象となる意見を分解したら、まず前提や根拠について、それぞれが適切かどうかを議論していきます。最初から主張について議論を始めてしまうと、印象をもとにした意見のぶつかり合いで終わってしまうからです。
前提や根拠についての議論の仕方はそれぞれ異なります。前提を議論する場合、「妥当な前提か、議論の目的に沿っているか?」という観点で議論していきます。一方、根拠に対する議論をする場合には、「事例として適切か、信頼性は高いか?」という観点でチェックしていきます。
ポイント5 共通の「思考基盤」を持っておく
議論というのは、誰かひとりに頼って意見を出すものではありません。全員がそれぞれの考えを持ち寄り、優れた結論をつくり出そうとすることです。そのためには、メンバー全員が同じような思考基盤を持って議論することがどうしても必要になります。
その基盤となるのが、実やデータをもとに筋道立てて結論を導き出す「ロジカルシンキング」です。全員が同じ情報を持ち、ロジカルに考えることで、納得できる結論に至る可能性が高くなります。
まとめ
最後に、ここまでの話を簡単にまとめてみました。
1.議論の「目的」をメンバー間で共有し、議論の途中でも再確認する
2.常に「ファシリテーター」「情報提供者」「チェック役」という役割を、誰かが果たしている状況にする
3.「合意している部分」と「そうでない部分」をはっきりさせ、そうでない部分に議論を集中する
4.意見を「主張」「前提」「根拠」に分けて、まずは前提や根拠について議論する
5.ものごとを筋道立てて考える「ロジカルシンキング」が議論の基盤になる
以上で紹介したようなポイントに気をつけて、ストレスのない、生産的な議論をしていきましょう。
(『問題解決のためのロジカルシンキング』をもとに編集)
■ 生方 正也(うぶかた・まさや)
HRデザインスタジオ代表。東京大学文学部卒業。日産自動車、ウイリアム・エム・マーサー(現マーサージャパン)、グロービスを経て独立。人材開発・組織変革に関するコンサルティングや、ロジカルシンキング・仮説思考などの指導・著作活動を行っている。
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