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優秀な部下から転職を相談されたときの正しい対応

LIMO / 2018年5月6日 20時45分

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優秀な部下から転職を相談されたときの正しい対応

「人が集まる職場」のつくり方

新しい人を入れても入れても、元いた社員が辞めていく
そこまで大きな会社じゃないのに、休職者が数人いる
新卒1、2年目や、現場のリーダー層の離職が多い

 ただでさえ人手不足の時代に、こういった「人が逃げる」問題に悩まされている企業はとても多いだろう。

 こうした会社になってしまうのはなぜなのか? 数多の組織を見てきた「職場のメンタルヘルス・コミュニケーション対策」の第一人者であり、『人が集まる職場 人が逃げる職場』の著者・渡部卓氏に、その原因と対策を解説してもらった。

「成長感覚」を得られないと、人は逃げていく

「人が逃げる職場」には、さまざまな特徴が見られるものです。たとえば、「雑談がほとんどない」「朝イチや夕方の会議が多い」「いつも同じメンバーが残業している」……などなど、挙げだすとキリがありませんが、その根本にある問題を一言で表すと、「成長感覚」を得られないこと、と言えるでしょう。

 つまり、人が生き生きと働くためのモチベーションとなる「成長していく感覚」を職場が邪魔してしまい、それどころか「ここにいたら潰される!」というネガティブな感覚すら与えてしまっているのです。

 しかしこれは、裏を返せば、「人の成長をサポートしてくれる職場」をつくることができれば人が集まってくる、ということでもあります。

 現代は「就社」ではなく「就職」の時代といわれています。一つの会社で定年まで勤め上げることが当たり前ではなくなったいま、転職・副業・資格の取得・生涯学習などをキャリアメイクの必須事項と考える人が大半になってきました。社員のそのようなニーズを受け入れ、共感し、サポートしてくれる。そんな職場には当然、人が集まってくるでしょう。

部下の夢や目標に、どこまで踏み込むか

 会社でマネジャーの立場にいる方に一つ質問です。あなたは、自分の部下の将来の夢や目標、希望するキャリアプランを知っているでしょうか?

「いま勤めている企業での出世や収入アップが目標」という部下もいるでしょうし、中には「転職して就きたい職業や業界がある。その夢を叶えるためにひそかに準備している」という部下も当然いるでしょう。会社の中で具体的な転職時期を検討している人の比率は年々高まっているとの調査報告もあります。

 こうした部下のさまざまな夢や目標に対して、上司はどこまで踏み込むべきでしょうか。

部下から転職・独立を相談されたら?

 たとえば、「将来は独立して、フリーランスとして働きたい」という夢を持ち、仕事が終わってから、誰にも知られないように講座に通ったり、資格を取ったりしている部下がいたとします。

 その部下は、上司であるあなたのことを信頼していて、「独立するかどうか迷っている」と打ち明けてくれたとしたら、どうしますか?

 上司としては、転職・独立されるとせっかく育てた人材が抜けてしまうわけですし、部下の離職率が上がることは自分の評価にも響きかねません。当然、「辞めてもらっては困る」というのが本音でしょう。

「なぜ転職したいと思ったか」は重要

 かといって、「成功する人なんて一握りだ。やめとけ」「うちみたいに安定した会社で働いていたほうがいい」なんて脅し文句のように言うのはアウトです。それは、社員の成長にブレーキをかける行為だからです。

「成長感覚」を得る源は人それぞれ。一見、会社の仕事には関係ないようなことでさえ、毎日のモチベーションになっていることも数多くあります。そこにブレーキをかけてしまうことは、部下の心を折ったり、離職を早めたりする要因にもなりかねないのです。

 では、上司としてどう接したらよいのでしょうか?

 部下が転職・独立を考えていると知ったとき、上司としてはそれを後押しまでする必要はありません。その代わり、「転職したい」「独立したい」という気持ちや、そう思うに至った背景にはよく耳を傾け、むやみに否定せずにまず「共感を寄せること」が必要です。そこから「それなら社内でこんなキャリアプランもあるよ」と提案したり、部下が「この上司の元でなら成長できるんじゃないか」と信頼を深めてくれたりする場合も多々あります。

「残業しない上司」が徹夜で話を聞いてくれた

 ただ、もしその転職が部下にとって夢の実現・キャリアメイクにおける重要な分岐点なら、円満退社に向けたサポートをするのも上司の務めかもしれません。

 私自身、何度も転職を経験していますが、転職の意思を打ち明けたときの上司の対応のいくつかは、いまでも深い感謝の気持ちとともに思い出せるものです。

 たとえば、日ごろは絶対に残業をしなかった上司が、その晩はなんと徹夜してまで、私のキャリアへの思いをひたすら聞いてくれたことがあります。そんな上司のもとを去っていくのは寂しさもありましたが、「こうやって送り出してくれた上司の期待を裏切らないようにがんばろう」と決意したことで、より成長できたように思います。

「人が集まる職場」はどこが違うのか?

「人が集まる職場」は、社員が自分の将来や人生設計を考えることができ、上司を中心とした周囲の人々がそれを理解し、時にはサポートもするような職場です。

 しかし、ほとんどの社員は毎日の仕事をこなすだけで精一杯なのも事実。そこで、若いうちから社員が人生のことを考えられるような刺激を会社から与えていくのも、人材開発・組織開発において欠かせないプロセスでしょう。

 私の知っている社員定着率が非常に高い職場の1つに、終業後に自由参加の形で「キャリアアップ勉強会」「定年後の生き方セミナー」といった講習を会社で開催しているところがあります。人事部から「残業代はつかないけど、無料なので興味があれば参加してください」と社員に呼びかけたところ、予想以上に多くの社員が参加し、アンケートの結果も上々。それぞれ新たな知識や刺激を得られるだけでなく、グループワークを通し、部署や役職・上下関係にとらわれない自然な交流が生まれる機会になったとのことです。

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「成長する喜び」は自己肯定感に直結する

 このように、直接は業務と関係がないような自己啓発やライフバランスをサポートする取り組みが、間接的に仕事のモチベーションアップや職場コミュニケーションの改善につながる例は、近年、特に多く見られるようになりました。

 ちなみに、仕事やキャリアアップに関係ない趣味の活動などであっても、部下が何かに熱心に取り組んでいるのであれば、ぜひサポートしてあげてください。ヨガでも、楽器でも、英会話や旅行でも、その人が「成長する喜び」を感じられるものであれば何でもかまいません。

 私がこのように言うのはなぜでしょうか? 実は、こうした活動領域がある人は、ストレスの影響を受けにくく、満足感や自己肯定感を得やすい傾向があるからです。それは仕事へのモチベーションや、心身の不調の予防にもつながるのです。ささいなことであっても、部下が「成長感覚」を得ようと頑張っているのであれば、上司の方にはぜひそれを温かく見守る目線を持っていてほしいと思います。

 

■ 渡部卓(わたなべ・たかし)
産業カウンセラー、エグゼクティブ・コーチ。帝京平成大学現代ライフ学部教授、(株)ライフバランスマネジメント研究所代表。職場のメンタルヘルス・コミュニケーション対策の第一人者であり、講演・企業研修・コンサルティング・教育・メディア等における多数の実績を持つ。『明日に疲れを持ち越さない プロフェッショナルの仕事術』(クロスメディア・パブリッシング)ほか著書多数。

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