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市場予測以上の米雇用統計を好感。「金」は安値更新。「原油」は続伸

トウシル / 2017年12月11日 12時0分

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市場予測以上の米雇用統計を好感。「金」は安値更新。「原油」は続伸

市場予測以上に米雇用統計は堅調。金は安値更新

 金相場は続落。安値を更新した。11月の米雇用統計は市場予想を上回る堅調な内容となり、米国経済の健全な成長が示され、米国株が上昇したが、金相場はそれまでに大きく下げていたことから下値は限定的だった。

 世界最大の金ETF(上場投資信託)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、12月1日の848.11トンから、8日には842.81トンに減少。リスク資産である米国株が高値圏で推移しており、投資家は安全資産である金から資金を移している可能性がある。

 COMEX(ニューヨーク商品取引所)金先物市場での大口投機筋のポジションは、12月5日時点で17万3,329枚の買い越しとなり、前週から5万1,088枚減少した。買いポジションが3万6,150枚減少する一方、売りポジションが1万4,938枚増加。5日の急落でポジションの調整が進んだことがうかがえる。また、それ以降も週末に掛けて急落していることから、さらにネット買いポジションが減少しているのだろう。

 金相場は当面は底値を探る展開が想定される。ここ5カ月間の取引レンジを下抜けたことで、先物市場で投機筋を中心とした市場参加者の売りが相場全体を押し下げている。9月以降のレンジの底値だった1,260ドルを下抜け、さらにテクニカル的に重要な水準として意識されやすい200日移動平均を7月以来で初めて下回ったことも、売りを誘っている。

 これまでは、過去最高値を更新している米国株の上昇の持続性に疑問を持つ投資家の買いが、金相場を支えてきた面がある。また、短期筋は上昇の持続性への期待から、先物市場で金を買っていたが、下げに転じたことで、積み上がった買いポジションを解消せざるを得ない状況にある。いわゆるポジション需給動向に金相場が左右されるパターンであり、この動きが当面続く可能性がある。しかし、この動きはあくまでポジション調整は主体であり、金相場を形成する上で本質的な動きとは言えないだろう。したがって、ポジション調整の売りが完了すれば、再び値を戻す可能性が高いといえる。

 また、繰り返すように、毎年11月から2月は金相場のパフォーマンスが最も高い時期に相当する。したがって、いずれかのタイミングで底打ちし、反発に向かうだろう。そのきっかけは実需の買いとなり、これまで中国やインドなどの実需筋は、金相場の水準が高かったことから、買いを手控えていた可能性がある。今回の下げで1,270ドルのサポートを割り込み、下げ始めていることから、押し目を買う動きがみられるものと思われる。彼らはこれまでも、安値圏で下値を支える重要な役割を果たしており、今回もそのような動きを見せるものと期待している。

 一方、今後株高基調がより鮮明になり、利上げ機運が高まれば、これまでのような上昇基調の継続が難しくなる可能性もある。その意味でも、12~13日開催のFOMC(米連邦公開市場委員会)への注目が高まるだろう。特に、9月の時点で年3回としていた2018年の利上げ回数への関心が高く、見通しに変化があるかを注視したい。当面は底値確認を待つことになるが、基本的なドル安基調は金相場を長期的に支えるものと考える。

 また、機関投資家や富裕層などによる株式投資のヘッジとしての金買い需要は根強いと思われ、下値は限られるだろう。最大で1,220ドル程度までの下げとなる可能性は残るものの、この水準まで下げる過程では押し目買いが入り、下げ止まるだろう。

 

非鉄は総じて軟調

 非鉄相場は総じて軟調。LME(ロンドン金属取引所)在庫は銅と鉛が増加した。

 アルミはほぼ横ばい、今のところ節目の2,000ドルで下げ止まっている。ここを維持できれば、反発に転じるだろう。さすがに下げ過ぎである。銅も辛うじて6,540ドルの重要なサポートで下げ止まっている。これで6,600ドルを超えると、再び上昇に向かいやすくなる。ニッケルは小幅反落したが、1万960ドル前後の重要なサポートに絡む動きとなっている。これを割り込まなければ、反発の可能性が残るだろう。

 亜鉛は小幅反発。3,050ドルのサポートを試したが、これを維持して反発した。3,100ドルを回復できれば、上昇に転じるだろう。鉛も反発。2,400ドルの重要なサポートを維持して反発しており、目先の底値を確認した可能性がある。これで2,460ドルを超えると上昇に向かいやすい。全般的な動きを見るかぎり、目先の底値を確認し、上昇に向かう素地ができつつあるように思われる。

 12~13日のFOMCと14日のECB(欧州中央銀行)定例理事会、さらに今週発表予定の中国の鉱工業生産と小売売上高に注目しておきたい。

 中国の11月の未加工銅輸入は前月比42.3%増の47万トンと、2016年12月以来の高水準となった。冬季の生産制限で海外産の需要が高まったもよう。前年比では23.7%増。1~11月の未加工の銅輸入は前年比5%減の424万トン。今年上半期の輸入が低水準だったことから、17年通年の輸入は前年を下回る見通しである。前年の輸入は494万トンと過去最高を記録している。11月の未加工アルミとアルミ製品の輸出は38万トンで、前月比8.6%増、前年比では横ばいだった。1~11月累計では前年比3.7%増の435万トンだった。

 一方、中国の11月のドル建て輸出は前年比12.3%増と、今年3月以来の大幅増となった。10月は6.9%増だった。電子機器やハイテク製品に対する力強い需要がけん引したもよう。輸入は17.7%増で、10月は17.2%増だった。政府が推し進める環境汚染対策により、原材料輸入は減少すると見込まれていた。しかし、コモディティ関連の輸入が堅調だった。製鋼所は生産を削減しているが、11月の鉄鉱石輸入は拡大した。11月の鉄鋼輸出は535万トンとなり、前月比で増加している。中国政府は債務リスクへの対応や工場からの汚染物質排出に対する取り締まりを強化しており、景気減速への懸念が強まっていたが、輸入は想定以上に堅調と考えられる。

 また、ロイターの試算では、11月の貿易収支は402億1,000万ドルの黒字で、10月は381億8,500万ドルの黒字だった。

 

中国の需要増を好感。原油は続伸

 原油は続伸。中国の需要増が好感され、さらにアフリカ最大の原油輸出国であるナイジェリアで石油労組がストライキを警告していることが支援材料だった。中国の10月の原油輸入量は日量901万バレルと、過去2番目の大きさだった。今年の中国の輸入量は、米国を抜いて世界首位になる見込みである。

 一方、市場全体ではOPEC(石油輸出国機構)とロシアなど非加盟産油国の減産延長が下支えしているものの、米国の産油量が1970年代以来の高水準に達していることが上値を押さえている。

 米国内の石油掘削リグ(装置)稼働数は前週比2基増の751基と、3週連続で増加している。これは9月以来の高水準となる。掘削活動は8〜10月に一時停滞したが、原油価格の上昇を受けて、石油掘削リグの稼働数は着実に増加している。石油価格の上昇に伴い、再び活発になった。しかし、先物市場でのヘッジが困難な状況にあることから、簡単には増産できない状況でもある。今後は産油量の伸びも鈍化し、これが原油相場の下値を支えるものと思われる。

(江守 哲)

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