ジュニアNISAの仕組みと最適運用法を考える
トウシル / 2016年1月8日 0時0分
ジュニアNISAの仕組みと最適運用法を考える
ジュニアNISAの特徴
2016年からスタートした、「ジュニアNISA(少額投資非課税制度)の概要と活用方法を考えてみよう。
まず、子供一人当たり年間80万円・期間5年、即ち一人当たり最大400万円の投資枠が使用できて、枠内での株式・株式投信などの収益への課税が免除される。運用の管理は原則として親権者が行う。
大きな特徴として、ジュニアNISAでは、子供が18歳になるまで資金を引き出せない。5年終了後はNISAと同様のロールオーバーが出来るが、2023年の制度終了後(おそらく恒久化されるだろうが)にもロールオーバー用の「継続管理勘定」で子供が20歳になるまで非課税運用を継続できる。
ただし、NISAと同様、資産を売却すると節税枠は復活しない。また、使用する金融機関は一度選んだら変更できない。
現時点では、NISAよりも流動性が小さく、長期投資をより強く意識した運用の仕組みだと言える。一言で言うなら、「子供のための運用のタイムカプセル」のようなイメージだ。例えば、投資信託の受益証券を丈夫な容器に入れて庭に埋め、子供が18歳になったらこの容器を開けて換金する。さて、幾らになっているだろうか、という趣の運用だ。
400万円プラス運用益というジュニアNISAの資金枠は、子供の学費におおむねちょうど良いだろう。一般的には、子供一人の大学卒業までの教育費に、全て国公立の学校に通った場合で1千万円、私立だと2千万円かかると言われている。お金に余裕がある親御さん(あるいは祖父母の方)は、フルに利用することを考えておくことが有利だろう。リスク水準が違うので単純には比べられないが、ジュニアNISAがあれば、生命保険会社の学資保険を使うことはますます非合理的だと申し上げておく。
なお、ジュニアNISAで運用した資金の使途は、学費でなくても全く構わない。むしろ、そのお金を元手に、ビジネスを始めてみようという、経済的に活気のある青少年に多く育って欲しい、と個人的には思う。
さて、本連載では、これまで、確定拠出年金も、NISAも、運用する本人の幾つかの前提条件とそれぞれの制度の性質を考えると、「ベストな運用」はほぼ一意的に論理と計算で決めることができると説明してきた。
ジュニアNISAでは、どうしたらいいのだろうか。
前提条件別の運用選択肢
ジュニアNISAにあっても、「運用者のポートフォリオ全体を最適化し、その中の適当な部分をそれぞれの口座(確定拠出年金やNISAなど)に割り当てる」のが最適だという、おおもとのロジックは変わらない。
ただし、ジュニアNISAの場合、
- ジュニアNISAの資金をどこまで「親のポートフォリオ」の一部と見なすべきかが曖昧だということと、
- ジュニアNISAがNISAよりも更に非流動的な運用口座であること、などの前提条件があり、加えて、
- 子供に対する情報・教育効果、
も少し考えたい。
子供の18歳以降の子供の教育費・養育費を親が相当程度以上負担するケースでは、ジュニアNISAの資産は、事実上親の資産の一部であると考えていいだろう。18歳以降も子供の面倒を見ていて、教育費や養育費にジュニアNISAの資産が足りなければ、親が不足分を負担するのだからそうなる。
この場合、親の運用資産全体の中の一部としてジュニアNISAの運用枠を利用することになる。確定拠出年金、親自身のNISAなどを超えてなお余りある運用資産をお持ちの親御さんの場合、NISAに準ずる運用でいいだろう。但し、NISAよりも更に非流動的なので、運用対象は広い範囲をカバーするインデックスファンドのETFにほぼ決まるはずだ。
(A案)「TOPIX連動型ETF40%+外国株(先進国中心)インデックスファンド」、あるいは(B案)「グローバル株式のETF」(現状では海外上場のもの)が適切な選択になる公算が大きい。
もちろん、全体のバランスは、課税口座での運用や、スイッチングが可能な確定拠出年金の運用の変更で調節する。
また、子供が小さくて、非常に長期に亘る運用が想定される場合、ジュニアNISA内ではリバランスが出来ない仕組みなので、(B案)ないしは、(C案)「株式比率の高いグローバル・バランスファンド」(手数料の安いものを選びたい)が候補に入る。
ジュニアNISAの使い方として、「お前の将来の資金として80万円ずつ5年間、400万円投資してやる。将来、学費でも何でも、好きなものに使え。その代わり、足りない分は、アルバイトでも何でもやって、自分で何とかしろ」といった、自立促進型(?)の使い方もできる。
この場合、ジュニアNISAの資産は実質的に子供のものという色彩が濃くなるので、節税メリットを最大限に生かすためとはいえ、株式100%は、子供にとって少しリスク感が過大に思えるかも知れない。この場合も、(C案)あるいは、(D案)「アセットクラスが分散されたインデックスファンド(ETF)」が浮上する。
また、ジュニアNISAの資産への関心を通じて、子供に投資教育をするアイデアもあり得る。この場合、(E案)「日本株ETF+米国株ETF+欧州株ETF+新興国株ETF」といった、国・地域別の株式インデックスに連動するファンドを見繕って、「将来、君が使う資金だ。よく見ておけ」と渡す手がある。また、この場合、(A案)も日本株が独立しているので、ある程度目的にかなう。
最大公約数的には(A案)なのかと思うが、個人的には(B案)も使い勝手が良さそうに思える。
ところで、ジュニアNISAに関して、(A案)〜(E案)の選択以上に重要なことがある。それは、ジュニアNISAは金融機関の変更が出来ないので、間違っても銀行にジュニアNISA口座を開かないことだ。
銀行ではETFが利用できない。インターネット取引専用のノーロードのインデックスファンドなどを使えば「損害」を年間1万数千円程度(400万円に対して)に抑えることが出来るが、意思決定として「明らかな損」なので、避けるべきだと強調しておく。
(山崎 元)
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