筆者が実践する「保険としてのプットオプション買い」の手法を紹介
トウシル / 2012年3月22日 0時0分
筆者が実践する「保険としてのプットオプション買い」の手法を紹介
まずはオプション取引口座を開設しよう
第123回のコラムにて、「2008年10月の世界的な株価暴落や、2011年3月の大震災のような突発的な大事件・大事故への備えとして、プットオプションをお守り代わりに少量買っておけばさらに万全です。」と述べました。この点につき「具体的にどのようにすればよいのか」という問い合わせがありましたので、今回は筆者が実践しているプットオプションの買いの手法についてご紹介したいと思います。
オプション取引を行ったことがないという方は、まずは「先物・オプション取引口座」を開設する必要があります。先物取引やオプション取引は、取引内容によっては非常にハイリスクな取引にもなり得ますが、ここでご紹介する「プットオプションの買い」は、損失がオプションの購入金額に限定されるものであり、ハイリスクなものではありませんのでご安心ください。
オプション取引についての基本的な知識については、第76回および第77回コラムもあわせてご覧下さい。
「掛け捨ての保険」であることを意識してできるだけ低コストで
ここでのプットオプションの買いは、万が一に備えた掛け捨ての保険としての位置づけです。したがって、できるだけコストをかけずにかつ効果を得ることができるような買い方が必要です。
例えば、先週末(3月16日)時点での、4月限月のプットオプションの価格は以下のようでした。
権利行使価格 | 現在値 |
---|---|
10,000円 | 165円 |
9,750円 | 85円 |
9,500円 | 44円 |
9,250円 | 23円 |
9,000円 | 15円 |
8,750円 | 10円 |
8,500円 | 6円 |
8,250円 | 5円 |
8,000円 | 4円 |
筆者ならば、ここで権利行使価格8,750円~8,500円のプットオプションを買います。あまり価格が高いプットオプションを買ってしまうと、コストばかりかさんでしまうため逆効果です。プットオプションの買いは、戦略的に利益を求めるような売買手法を駆使しない限り、大部分は買ったプットオプションの価値がゼロになって終わります。株価大暴落がない限り価値がゼロになるものを万が一の保険として買うのですから、価格が10円前後の安いものを買うようにしています。価格が安くても、株価の短期的な急落が起これば、10円のものが100倍の1,000円くらいにはなりますからこれで十分です。
そして、買う際は直近限月(3月に買うのであれば4月限月)のものを買うようにし、毎月買い直すようにします。
現物株500万円~1,000万円につきプットオプション1枚でとりあえずは十分
また、買う数量ですが、あくまでも株価急落時に被る現物株の損失の一部をヘッジするという意味からすれば、現物株500万円~1,000万円に対してプットオプション1枚(1枚=オプション価格の1,000倍)程度で十分ではないかと思います。万が一の備えとはいえ、あまりプットオプションを買いすぎるのもコスト面から考えれば効率的ではありません。
そして、あくまでも保有する現物株に対するヘッジですから、保有する現物株自体がほとんどないような場合はヘッジとしてのプットオプション買いも不要となります。
大局的な下落相場では、保有株は極力減らしているはずですのでプットオプションの必要性も薄れます。プットオプションが威力を発揮するのは、大局的な上昇相場のため現物株を大量に保有して強気で攻めている局面です。このようなときに突如として起こるかもしれない急落への備えとしてプットオプションが必要となるのです。
利食いはどうするか?
プットオプションを買った場合、これを利食いするタイミングが非常に難しい問題です。そもそもプットオプションを買った目的が、突然の株価大暴落による持ち株の値下がり損をカバーするためのものですから、オプションの価格が買値の2倍、3倍になった程度で利食いしてしまうのはどうかと思います。
どの程度になったら利食うかは非常に難しいところなのですが、筆者の感覚としては、株価下落に終わりが見えず、株式を保有すること自体がいやになり、底知れぬ恐怖感を感じるような状態になって始めて利食いすればよいと思います。そのときには、大雑把にいってプットオプションの価格が買値の50倍以上に値上がりしている感覚です。10円で1枚(1枚=1,000単位なので10,000円)買ったものが500円に上昇したら利食いを検討する、といったイメージでしょうか。
なお、株価急落時は、株価が乱高下するのに伴ってオプションの価格も大きく変動します。次の日には価格が3分の1、5分の1に急落してしまうことも珍しくありません。そのため、決してベストタイミングで利食いしてやろうなどとは思わず、当初の目的(例えば現物株の値下がり損の半分をカバーできる程度の利益を得られる)が達成できる水準にあるならばすぐに利食いしてしまうこと、そして利食いの後にさらにオプションの価格が値上がりしても気にしないことが重要です。
プットオプションの買いはあくまでも対処不能な突発的株価暴落に対する備え
繰り返しになりますが、プットオプションの買いは、上昇トレンドを維持していた株価が何の前触れもなく突然大暴落したときに対する備えです。
例えばすでに株価が中期的・長期的な下降トレンドに転じていてダラダラと下げ続けており、そこから株価下落が加速して大暴落になったような場合であれば、株価が下降トレンドに転じた時点(大暴落となるよりかなり前の時点)で利食い売りや損切りをするなど、適切な対応をとることができます。
また、株価が急落せずにダラダラと下げているときは、プットオプションもあまり大きく値上がりすることはありません。そのため、プットオプションの利益で現物株の損失をカバーすることは難しいでしょう。
プットオプションを買ってさえいれば、持ち株の値下がりによる損失を100%カバーできるかといえば、残念ながらそうではありません。あくまでも重要なのは下降トレンドでは持ち株を減らすなどといったポジション管理や、損切りを適切なタイミングで確実に実行することであり、そうした対応ができないような突発的な株価下落に対応するための手段としてプットオプションの買いを活用する、と理解してください。
(足立 武志)
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