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6つの悪材料:弱い日経平均、年初来安値を更新。「陰の極」は近いのか?

トウシル / 2021年8月23日 7時49分

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6つの悪材料:弱い日経平均、年初来安値を更新。「陰の極」は近いのか?

※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
[動画で解説]陰の極、近い?悪材料集中で、日経平均は年初来安値
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悪材料集中

 先週(8月16~20日)の日経平均は1週間で963円下落して2万7,013円となり、年初来安値を更新。コロナ・デルタ型猛威で、好調だった世界景気に次々とほころびが見られるようになりました。世界景気の先行きを不安視させる材料が集中し、日経平均は外国人投資家によって売り込まれました。

日経平均週足:2020年1月6日~2021年8月20日

出所:楽天証券MSⅡより作成

 以下が、日経平均下落につながった6つの悪材料です。

【1】コロナ感染爆発で日本の景気回復が一段と遅れる見込み

 8月20・21日は1日当たりの新規感染者数が2万5,000人を超えました。感染爆発を受けて、緊急事態宣言の対象に7府県が追加、「まん延防止等重点措置」の対象も8県が追加されました。期間は9月12日までですが、さらに延長される可能性もあります。内需回復が一段と遅れる懸念が強まりました。

【2】トヨタが9月に4割減産

 トヨタ自動車は19日、9月の世界生産を4割減らすと発表しました。コロナ感染拡大で東南アジアでの部品生産が滞ることから、トヨタも減産せざると得なくなりました。自動車はすそ野の広い産業で、トヨタの減産は日本の製造業全体にネガティブな影響を及ぼすと懸念されます。

【3】中国景気減速

 16日に発表された中国の7月の景気指標は、想定以上の減速を示しました。小売売上高は前年同月比8.5%増(6月は同12.1%増から減速)、工業生産は前年同月比6.4%増(6月は同8.3%増)でした。コロナ変異株がネガティブな影響を及ぼし始めている可能性があります。

【4】米国景気にも減速懸念

 ワクチン接種が進み、景気が好調だった米国でも、デルタ型の感染急増で行動制限がかかる懸念が出ています。7月の小売売上高は前月比1.1%減で、経済成長がやや鈍化する懸念が出ています。

【5】年内に米国がテーパリング(金融緩和の縮小)を開始する見通し出る

 8月18日に公開された7月27~28日のFOMC(連邦公開市場委員会)の議事録要旨で、FOMCメンバーの多くが、年内にテーパリングが開始されると見通していることがわかりました。これを受けて、18日には米国株が一時大きく下がりました。ただし、コロナ再拡大が懸念される中で、テーパリング開始は時期尚早との見方もあり、FOMCメンバーの見方が割れていることも示されました。

 米国による金融緩和・引き締めは、世界の金融市場に大きな影響を及ぼします。世界中の金融取引でドルが使用されているからです。その意味で、米国の金融政策を決めるFOMCは、世界中の株式市場に影響を及ぼします。

【6】日米とも政治不安

 バイデン政権が米軍のアフガニスタンからの撤退を進めると、武装勢力タリバンが急速に勢力を拡大して首都カブールを制圧しました。アフガン撤退を急いだバイデン政権への批判が米国内で高まることで、バイデン政権の力が低下する可能性があります。そうなると、来年の中間選挙前に、米景気をもう一度盛り上げたいバイデン政権の景気対策が思うように実行できなくなるリスクもあります。

 日本では、自民党総裁と衆議院議員の任期が迫っており、総裁選挙・衆院選という2つの政治イベントが控えています。菅総裁の続投がない場合、強いリーダーシップを発揮できる新総裁が誕生するか予断を許しません。また、菅政権への支持率が低迷する中、衆院選で与党が敗北するリスクもあり、不透明感が高まっていることが日本株の上値を重くしています。

 ただし、こうして不透明材料が増える中、米国株は最高値圏で今のところ堅調です。

日経平均・NYダウ・ナスダック総合指数の動き比較:2020年末~2021年8月20日

出所:2020年末の値を100として指数化、QUICKより作成

 さまざまな悪材料が重なった複合ショックで日経平均は下がりましたが、米国株は高値圏で堅調です。最大の不安材料が、テーパリング開始ですが、コロナの感染再拡大で米景気減速の不安が出ることが、テーパリングの時期を遅らせるとの見方もあることによって、米国株は堅調を保っています。

テーパリングが世界の株式市場に与えた影響:2013~2014年の経験

 前回、テーパリングが話題になり、実際に実行されたのは2013~2014年でした。テーパリングに絡んで、3回世界株安が起こりました。以下をご覧ください。

日経平均とNYダウの動き比較:2012年末~2014年末

出所:2012年末の値を100として指数化

【1】2013年5月:バーナンキ・ショック

 当時、FRB(連邦準備制度理事会)議長だったバーナンキ氏が「将来、テーパリングが必要になる」と発言しただけで、世界中の株が急落して日経平均も売られました。この時、世界景気は好調で、バーナンキ氏の発言以外に日本にも世界にもとりたてて悪材料はありませんでした。米国の金融政策に世界中の投機資金がきわめて神経質になっていることがわかりました。

【2】2014年1月:テーパリング開始

 バーナンキ氏の後を引き継いでFRB議長になったイエレン氏が最初にやったのが、テーパリングの開始でした。この時も、世界的に株が下がりました。ただし、この時はさまざまな不安がミックスした複合ショックでしたが、根っこには米国がテーパリングを始めることへの不安がありました。

 当時株安材料となっていたのは、以下4点です。
(1)テーパリングショック(FRB議長就任前にハト派として知られていたイエレン氏が議長就任後すぐにテーパリングを開始したショック)
(2)新興国不安(ドル高余波で過重債務を抱えるアルゼンチンなど新興国通貨が急落)
(3)米景気不安(記録的寒波の影響で米景気が一時的に停滞)
(4)日本の消費税が2014年4月に5→8%へ引き上げられることへの不安

【3】2014年10月:テーパリング終了

 2014年1月に開始されたテーパリングは予定通り、10月で完了しました。これをもって、米国のQE3(量的緩和第3弾)は終了しました。この時も、世界的に株が下落。さまざまな不安が重なった複合ショックとなりました。

 当時不安材料となったのは、以下4点です。
(1)QE3終了への不安
(2)欧州景気停滞への不安
(3)原油価格急落への不安
(4)エボラ出血熱感染拡大への不安

 2013~2014年のテーパリングショックについて、以下3点のまとめが可能です。

【1】世界中の投機マネーは、米FRBの金融政策に過敏に反応する。テーパリングの話題には売りで反応。

【2】米国のテーパリングに絡む思惑で世界的に株が売られる時、日経平均はNYダウよりも大きく下がる傾向がある。外国人投資家から見て日本株は世界景気敏感株で、米国株はディフェンシブ株であるため。

【3】テーパリングが実施されても、金融緩和的状況はすぐには変わらず

 テーパリングは量的緩和の終了であって、金融引き締めの開始ではありません。したがって、テーパリングに絡むショック安が一巡した後、2014年は世界的に株が買い戻されました。

日本株は割安、長期的に買い場の判断を継続

 不安材料が増えていますが、1つ良い材料があります。日本株が下落して割安になったことです。私は日経平均3万円でも日本株は割安と判断しています。

 今は、さらに下がったところで日本株を買える好機と見ています。将来的に日経平均は史上最高値(1989年12月の3万8,915円)を更新していくと予想しています(その根拠は別の機会に書きます)。

 ただし、短期的には、まだ下値余地が残っているかもしれません。今が、陰の極(下落の最終局面)とは言い切れません。時間分散しながら、割安な日本株を少しずつ買い増ししていくことが、長期的な資産形成に寄与すると判断しています。

 なお、割安な高配当株への投資について、6月15日に日経BPから発売された以下の私の著書で詳しく解説しています。ご参照ください。

「NISAで利回り5%を稼ぐ、高配当投資術」

 

▼著者おすすめのバックナンバー
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(窪田 真之)

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